浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

2018年に映画を観て僕が考えたこと

2019-01-08 18:27:28 | DVD、映画
今年もどうぞよろしくお願いします。

さて、前回、2018年に僕が映画館で観た映画のうち、特に僕が心に残ったいくつかの作品を書きました。

そうやって並べてみると、やっぱりある程度のテーマが浮かび上がってくるなぁと感じたのでその話をします。

2017年の映画を総括して、僕は「戦う女性と逃げる男の映画が多かった」という話をした。→Wonder women & Runaway guys./驚くべき女性たちと逃げ出す男たち。


ちなみに!「バトル・オブ・セクシーズ」は日本公開が2018年だったけど、本来、アメリカで公開されたのは2017年。なので「驚くべき女性たち」の一群に入れるべき作品だと思う。

続けます。

不思議なもので、映画(すべての芸術がそうだろうけど)というものは、集合的無意識というか、意図せずとも同じようなテーマが重なることがある。もちろんすべての芸術が、時代を写す鏡なのだからそういうこともあるだろうし、二匹目のドジョウ的に「これがあたったんだからそれと似たようなの作ろう」と後を追うところもあるだろう。

僕が2018年の映画を観て、感じた大きなテーマはやはり「多様性」、もっというと「Inclusion(内包)」だった。

世の中には、例えば人種、例えば性的指向、例えば国籍、様々な人がいる。誰一人として、他人とまったく同じ、という人などいない。だからこそ、すべての人が尊く、誰であれ他人をその出自によって攻撃することは許されることではない。

そういうメッセージを、2018年の多くの映画から僕は感じた。

例えば、「シェイプ・オブ・ウォーター」。主人公は発話障害を持つ女性。(声を奪われた女性、というモチーフがまた象徴的だ)そしてその女性が恋に落ちるのが「アマゾンから来た半魚人」、彼女の友人はゲイの初老の男性、、と非常に多様な人々が出てきていた。

「グレイテスト・ショーマン」でも様々な人々(場合によっては身体に障害を持つ人も)を集めてサーカスをやる、という話だった。

「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」はアメリカの高校におけるスクールカーストを描いており、フットボール部のスターもクラスの人気者もオタクっぽい男の子、女の子もそれぞれ事情を抱えているんだよ、という話だった。

「スリー・ビルボード」もそうだった。人にはそれぞれ事情がある。

そして、僕が洋画部門ベスト1に選んだ「ボヘミアン・ラプソディ」もそう。世の中の爪弾き者だったフレディが自らの居場所を獲得する話だった。

多様な人々を内包する素晴らしい社会、世界。これこそが2018年の映画が訴えていたメッセージだ、と僕は思う。

映画からはちょっと離れるけど、僕が2018年に読んだ本のうち、もっとも素晴らしいものである本の一つ、「日本のクラフトビールのすべて」(マーク・メリ/著)の序文を、少し長めに引用したい。2018年、僕はこの文を、事あるごとに思い起こしていた。

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最後に、私の正直な思いを加えたい。クラフトビールの世界はこの全地球に広がった、本当に素晴らしいものだと思う。

特に安倍政権になってから、日本ではナショナリズムが急速に高まり、日本社会がより排他的になったことに対して、クラフトビール界はその逆の方向を取った。

日本のブルワーがアメリカ、ヨーロッパの各国に出張して、海外のブルワーとコラボなどを行い、逆に海外のブルワーが来日して同じことをする、いわゆるコラボレーション企画が多くなった。日本のビアコンテストには海外のビアジャッジも多く参加するようになった。海外でビール旅行をする日本人も多い。日本でのビール仕込みをしている、またはブルワリーやビアバーを経営している外国人も増えた。そしてもちろん、私のようにビア・ライティングをしている者もいる。

やはりビールに限らず、多様性は良いものだ。こんなことにも平和を感じる。ずっとこの方向で進もうではないか。
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本当にそう思う。

クラフトビールと同じくらい、映画もこの全地球に広がった素晴らしいものの一つだと思う。


やっぱり、多様性は良いものだ、僕もそう思う。本当にそう思う。

多様であるだけで、涙が出そうになるくらい幸せを感じる。ずっとこの方向で進もうよ、映画も、ビールも、そして世界も。

寿町アカデミー賞2018

2019-01-01 23:45:19 | DVD、映画
年末ですね。

今年は特にいろんなところに行きいろんなものを食べ、いろんなものを飲んだ。特にビールが多かったかな。ポートランドに行った、ってこともあるしね。

映画もたくさん見ました。特に年末はTOHOシネマズの1ヶ月フリーパス(観放題券)があったので。

※TOHOシネマズのフリーパスについて説明しておくと、まず年会費300円でシネマイレージカードというのがもらえる。これがあると映画1回見ると1ポイントたまって6ポイントあれば無料で1回見られる。更に観た映画の上映時間で1分1マイルがたまる。つまり120分の映画を観たら120マイル貯まる、ということ。これが1,000マイル貯まるとポップコーンかドリンクSがもらえる。更に6,000マイル貯まると1ヶ月観放題のフリーパスがもらえる、ということ。マイルの有効期限は3年かな?つまり、1本120分だとすると3年間で50本観れば1ヶ月フリーパスになると考えると便利です。(何に?)

さて。

Twitterなんかでは自分のベスト10の発表なんかしてたりするけど、順位付けが難しいところもあるので順不同で「面白かったよな」と思う映画を羅列します。ただし、最後に「僕の個人的2018年ベスト1!」は書きます。そして、あくまで、今年僕が映画館で観た映画限定です。

関係無いけどさ、家で映画を観なくなったなー。特に「今まで観たこと無い、あるいは劇場公開を見逃した映画」を観ない。大好きで何回も観てるしブルーレイ持ってる映画は観るけど。「この世界の片隅に」とか「桐島、」とか「シェフ」とか「LOGAN」とかね。AmazonプライムとNetflix契約しているので観ようと思えばリモコンのボタンひとつで観られるけどなんとなく。。Netflixでテラスハウスばっかり観てるもんなー。。



【勝手にふるえてろ】

松岡茉優初主演作。これは面白かったなー。はっきり言ってしまって「自意識」というのは他者から観れば「く◯ってる」ようにしか見えない、ということだと感じた。コメディエンヌとしての松岡茉優の真骨頂だった。

【スリービルボード】

「シェイプ・オブ・ウォーター」とアカデミー作品賞を争ったけど、僕としてはそんなに大きな作品じゃない(ダメな作品という意味じゃないよ)と思っている。小さな町の小さな出来事だと思うんだけどそれによって大きな問題を描いているとは思う。そしてそれ以上に、この作品でアカデミー主演女優賞に輝いたフランシス・マクドーマンドのスピーチは、今年を象徴するものだったんじゅないかと思っている。これについては最後に書く。


【グレイテスト・ショーマン】

いろいろ批判もある作品だけど、僕は楽しみました。ミュージカルはいいね。関係無いけど、この作品を映画館で観た時、突然、劇場の音声が出なくなった。なんかそういう演出なのかな?と一瞬思ったけど劇場の不具合。なかなかそういうのに遭遇したこと無いので驚いた。

【シェイプ・オブ・ウォーター】

ブログで書いたけど、ほんとにこの作品がアカデミー作品賞を取ったことは嬉しかった。とっても大切な、登場人物すべてが愛おしい映画だった。作中では「悪役」であるストリックランドですら、「なぜこのようなことしか出来ないのか…」と同情する。これも今年を象徴する映画だった、最後に書きます。

【ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル】

子ども向けお気楽ムービーに見えるかもしれないけどまったく馬鹿に出来ませんよ。僕は字幕版と吹替版で観ました。どちらもお好みで選べばいいと思いますがただ一点だけ、ジャック・ブラックの演技だけは僕は吹替版のほうがいいと思う。この作中、ジャック・ブラックは「外見がおっさん、中身がキャピキャピ(古い)の女子高生」という役をやっている。つまり、外見はジャック・ブラックなんだけど話し方は女子高生、ということ。この面白さが吹き替えではとってもよくわかった。もちろん英語ネイティブの方ならば英語で観てもわかるんだろうけどちょっと字幕でこのニュアンスはなかなか伝わってこないんじゃないかな。

話としても良く出来ていた。ドウェイン・ジョンソンのコメディっぷりも良かったしカレン・ギランも素晴らしかった。

そして、軽いテイストに見えるけど中身、つまり伝えようとするメッセージは大変に重厚で素晴らしかったと思う。現代版「ブレックファストクラブ」とも言われているけどそのとおりだと思う。

【港町】

想田和弘監督による観察映画。牛窓という小さな港町に関するドキュメンタリー映画なんだけど突然、偶然によるある登場人物の独白はまるで世界が根底から崩れるような衝撃を受けた。

【フロリダ・プロジェクト】

たまにこの映画のことを考えると「ああ、ムーニー(この映画の主人公の少女)は元気かな」と切なくなる。このひどい、それでもたまに虹や花火はきれいな、世の中で、元気でやっていけているだろうか、まぁ彼女だったら大丈夫か、と思う。管理人ボビー役ウィレム・デフォーがとにかくとんでもなく名演だった。

【孤狼の血】

平成の「仁義なき戦い」と言ってもいいだろうヤクザ映画だった。これはドッピオさんに話したんだけど、登場人物のほとんどが第一印象と中身が違う、というところが素晴らしかった。一人だけ、江口洋介だけは筋を通し続けたね。近年の江口洋介でいうとベスト名演なんじゃないかなー。続編をぜひ楽しみにしたいところです。

【バトル・オブ・ザ・セクシーズ】

これについてはしっかり書いた。→「映画「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」雑感」

この映画は「ワンダーウーマン」「ドリーム」であり、「ロッキー」でもあり、そして「ブロークバック・マウンテン」でもある、という僕の感想は改めて考えても「そうだよな」と思う。

【バーバラと心の巨人】

まったく話題になっていないけど僕にとっては本当に心に残る、愛おしい作品。この作品についてはいつかちゃんと書きたい。誰しも必ず、倒さなければいけない「巨人」に出会う、という話だった。


では。2018年の僕のベストについて。


邦画部門ベスト1!!!

「カメラを止めるな!」!!

洋画部門ベスト1!!

「ボヘミアン・ラプソディ」!!

こういう感じです。ちょっとこれらのランキングについて、またこれらのランキング映画を観て僕が思ったことについて、はまた別途書きます。