浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

The book of the year 2014

2014-12-31 21:57:01 | 
勝手に毎年恒例、ブック・オブ・ザ・イヤー。一応、2006年からやってます。ちなみに去年のブック・オブ・ザ・イヤーは「色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年」でした。去年なんだね、ずいぶん前な感じがするけど。

さて、今年、僕が読んだ本の中で個人的ランキング。あくまで「今年読んだ」なので今年発売された本じゃなくても入っている場合がある。

今年はねー、もうほんとに「フィクション」を読まなかった。別に読みたくないわけじゃないんだけどなかなか「お」と思う本が少なくてね。個人的に「ヨクナイナ」とは思っているんだけど仕方がない。フィクション要素は映画で取っているというところもあるのかも知れない。

あと、あくまで僕の話だけど(僕の話じゃない話があるのか)、ずいぶんと電子書籍で読むようになった。特にマンガ。サライネスの「セケンノハテマデ」だとか「手塚治虫物語」「刻刻」なんかはAmazonKindleで読んだ。「電子書籍なんてさー」とかブツブツ言ってたけどやっぱりかさばらないので便利なんだもの。

さて、今年のランクイン作品から。



村上春樹の短編集ですからね、そりゃ入りますよ。



今年のマンガ部門ナンバーワン。2巻でサクッと終わるので大変オススメ。微笑ましくて、切なくて、恐ろしくて哀しくて。いいマンガです。おなじ作者の「うきわ」も入れたいけどこちらはまだ連載中なので後ほどということにします。



内田樹はとにかくたくさん本を出すのでどんどん読んでる。



個人的には町山智浩映画解説アーカイブというサイトを立ち上げたのが今年の大きな個人的ワークです。



映画も大変おもしろかったけどこの原作も良かった。主人公の身の振り方がこちらのほうが現実的だよね、現実なんだから当たり前なんだけどもちろん。


さて、今年のThe Book Of The Yearは!!








「ピクサー流 想像するちから」


今年はこれです。アニメーション映画製作会社、ピクサーを立ち上げた著者がその歴史をまとめた本。

数年前から「なぜピクサーはこんなにすごいのか?」ということが関心事でした。だってね、すごいじゃないですか。まず初作品が「トイ・ストーリー」なんだけど、これね、今では当たり前になっていますけど世界初のフルCGアニメなんですよ。つまり「トイ・ストーリー」以前にはそんなもの無かったんです。それ以降も「ファインディング・ニモ」「モンスターズ・インク」「カールじいさん」「トイ・ストーリー3」と名作揃い。
更にはディズニーとの株式交換。これは一見、ピクサーがディズニーの軍門に下ったように見えるけど実はそうじゃない。この株式交換の結果、ピクサーの設立者エド・キャットムル(著者)はディズニーアニメーションの社長になり、ピクサーの製作責任者ジョン・ラセターは同じくチーフ・クリエイティブ・オフィサーになった。
つまり、それ以降のディズニー・アニメ、例えば「塔の上のラプンツエル」「アナと雪の女王」なんかはある意味、ピクサーのマインドが入った映画だと言える。
それだけの会社だけど、元々は単なるILM(ルーカスの作った映画制作会社)の一部門だった。ここにスティーブ・ジョブスが出資した。その会社がどう育ってきたのか、という話。ベンチャー企業の成長事例としても読めるけど、一番僕が興味深かったのは「好ましい企業文化をどう醸成するか」という話。企業経営の本として参考になる点が多々あります。そして何と言っても「ジョブスすげー!」と思いますね。

何より、少し泣きそうになったエピソードがジョブスが生前「もし生まれ変わったらピクサーで映画の監督をやりたい」と言っていたこと。これは泣けるなぁ。そして、観たかったなぁ、ジョブスの作ったピクサー映画。

ということで想いが溢れてまとまりませんが、この本が今年の一番です。


さて、今年も終わります。毎年毎年同じことを思ってますが、いや~今年もいろいろあった。いろいろと皆さんありがとうございました。

良いお年をどうぞお迎え下さい。

来年も、理力があなたと共にあるように。
(May the force be with you.)

完全ネタバレ「愛の渦」レビュー

2014-12-22 14:54:13 | DVD、映画
映画「愛の渦」を見ました。



で、その感想を書いたんだけど、先に言っときます。今回、すごく真面目に書いてます。

「上映時間中服を着てるのは16分だけ」とか「いかがわしいパーティーに集まった8人の男女」とかそういうキャッチコピーの映画なんで眉をひそめる方もいらっしゃるかもしれないけど、僕は本当に真面目に語りたいんです。

まぁ、暇があったら読んでやって下さい。

完全ネタバレ『愛の渦』レビュー



ちなみに、「愛の渦」と「恋の渦」ってあります。元は同じ劇作家が作ってる。僕は「恋の渦」は未見です。

寿町アカデミー賞2014

2014-12-17 14:51:15 | DVD、映画
いやいやほんとに今年ももう終わりますね~。毎年言ってますが11月終わりから年末の時の過ぎるのの早さたるや。。

年末になると忘れちゃうのでここで今年観た映画の個人的総括をしておきます。

今年もたくさんの映画を観ました。やっぱりねー、最近、映画館で映画を観る、という体験は楽しいな、と思うんだよね。ついつい観に行ってしまう。楽天ポイントがたまっているのでポイント使うと安く観られるし。

ちょっと今年観た映画をつらつらと。

面白かったな―、という点ではもうナンバーワンはなんと言っても「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」ですね。

これは本当に面白かったし楽しかった。映画の楽しさってこういうことだよな、と改めて思った。続編も十分楽しみです。

個人的アカデミー賞としてこの作品には作品賞、音楽賞、並んで歩くのカッコイイで賞、主人公がジョセフ・ジョースターっぽいで賞を進呈したい。

興奮したのはなんと言っても「GODZILLA ゴジラ」、これは映画館で観てよかったな。こういうのはもうお祭りだからさー、映画館で観ないと。

以外と拾いモノだったのが「ミリオンダラー・アーム」。インドでメジャーリーグを広めるために(もちろん金のためではあるんだけど)、インド人初のメジャーリーガーを発掘しようと四苦八苦するエージェントの話。すごく暖かい結末でいい映画でしたよ。

あと印象に残っているのは「ウルフ・オブ・ウォールストリート」「ローン・サバイバー」「キック・アス ジャスティス・フォーエバー」「アナと雪の女王」「インターステラー」「ゴーン・ガール」

ちなみに「アカデミー一番真似してみたいで賞」は「ウルフ・オブ・ウォールストリート」です。マシュー・マコノヒーの胸叩きながら歌ってた歌とディカプリオが車に乗り込むシーンね。

そうそう邦画では「青天の霹靂」も大変良かった。大泉洋と劇団ひとりが舞台で掛け合いやってるシーンだけで2時間観られるよ。

ここでちょっと今の映画界から僕が感じる印象を書いておきますね。

なんと言っても僕が感じたのは今年の映画に流れる「女性のLet it go」感。もちろん「アナと雪の女王」のテーマではあるんだけど、とにかく「女性がしがらみを取り払って自由になる」というテーマをすごく感じた。邦画だけど「紙の月」もある意味そういう映画だった。すごくアホみたいな感想になってしまうけど、こういう映画がたくさん作られ、特にアナ雪なんかがヒットするということはずいぶん女性は抑圧感を感じているということだろうなぁ。昔のアメリカ映画がほとんど「権威的な父を倒す話」だったのとは非常に対照的ですね。

一方で特徴的なのがやっぱりアメコミ映画。アメコミ映画については前にたっぷり書いたけど、今年は更にゴジラもあったので怪獣映画もあったということ。

つまり「女性がLet it goする話」と「アメコミヒーローや怪獣がドッカンドッカンする話」が特徴だった年というわけでうーむむと考えずにはおられませんね。そういえば「キック・アス2」はヒット・ガールがある意味Let it goするし、キック・アス自身はスーパーヒーローで、2つ合わせた話だったんですね。

女性が今までのしがらみを脱ぎ捨てて「Let it go」と歌う脇で男性がアメコミ・ヒーローとか怪獣観てキャッキャしている絵が浮かぶんだよなぁ。

この現代日本社会における男性と女性については最近、たまにふと考える。ちょっとこれは今度ちゃんと書きます。

来年からはマーベル・シネマティック・ユニバースがどどどんと公開されます。とりあえず来年は「アベンジャーズ2/エイジ・オブ・ウルトロン」がありますからね、楽しみです。

火の鳥

2014-12-11 16:41:30 | 
手塚治虫の「火の鳥」は全巻持っている。小学生の頃、図書室に置いてあって読んだ覚えがあるし、僕らの世代だと「鳳凰編」がアニメ映画にもなったよね。

大人になってから角川文庫版で出たので古本屋で見つけるとついつい買ってしまって結局、全巻揃ってしまった。

何年かに一度、ふと思い出して読み返すとやっぱり全巻読んでしまう。

すごい漫画だなぁと思いますね。

どんだけすごいかと言うと、2巻目の「未来編」は西暦3404年に始まります。そこで一度、地球上の生物全部が滅びて50億年くらい経ってまた生命が誕生する、という話なんです。それをなんとただ1巻でやってるのよ。すごいねぇ。今の時代だったらこれだけで50巻くらいになってしまうと思う。

更にこのラストシーンで1巻目の黎明編の冒頭につながるようになってるの。

つまり、1巻目である「黎明編」は2巻の「未来編」の後に読んでも先に読んでもいいし、なんなら最終巻である「太陽編」の後に「未来編」を読んでもいい。この時間軸の感じは本当に素晴らしい。

それで最近、アプリで「週刊手塚治虫」というのがあって、毎週少しずつ手塚治虫の漫画が無料配信される。ブラックジャックの1話とかね。そこで「火の鳥望郷篇」の1編は配信されてたんだけど、読んでて「あれ?」と思った。もちろん望郷篇は好きだし何度も読んでる、単行本も持ってるんだけど「こんなキャラクターいたっけ?」と思った。
著者 : 手塚治虫
朝日新聞出版
発売日 : 2009-07-21


そのキャラクターというのはノルヴァという宇宙人。雌雄同体の宇宙人。話の筋も少しだけ違っていて不思議に思ったのでつい望郷編を電子書籍で購入してしまった。

調べてみると望郷篇は雑誌掲載版、朝日ソノラマ版・講談社版、角川書店版で加筆修正が多々ある話らしい。へーそうなんだ。何度も読んだ「望郷篇」だけど違うキャラクターが一人出てくるだけで結構味わいが違くて楽しめた。ノルヴァがいたほうが更に輪廻転生な感じが強く出てきていていいですね。ズダーバンが死ぬ理由もなるほど、と思うし。

しかしさぁ、こんな漫画思いつく手塚治虫ってほんとすごいよね。全体的な流れもすごいし細部もそれぞれすごい。望郷篇の無生物の惑星とか改めて読んでも「怖いな」と思います。

もうこれ日本人の課題図書でしょ。

メインどころは大体好き(太陽編、宇宙編、望郷篇、鳳凰編、、)だし、短編~中編と言える回も好きです。中でもすごいなぁと思うのは「羽衣編」ね。これは全コマすべて舞台劇のような形で書かれている。つまり固定カメラのような印象。すごいよねぇ、なんでこんなの思いつくんだろう?

予想の楽しさ

2014-12-01 23:43:45 | 日記
「どんなことであれ予想しておいたほうが面白い」という信条です。

今回飲みながら予想したのは「今回の選挙のサプライズ候補は誰か?」という件。

僕自身は、とりあえず議席が取れればいいと知名度だけの候補者が出てくる今の選挙の風潮は好きではない。そんなのまさにポピュリズムだもんね。

でも、もし僕がいまどこかの党の幹部だったらとりあえず有名な人に声かけると思うんだよね。

例えばさ、絶対あり得ないけど、ビートたけしに声かけてもし本人が出てくれればそれだけで一議席確保じゃん。とりあえず声かけるなぁ。

声かけられた方も、
「このままいっても仕事無くなるだろうしなぁ、いま知名度のある時に議員になったほうが食いっぱぐれないかもな」
と思うかも知れない。

この双方の思惑が一致するとサプライズ候補になると思うんだよね。

それで話してて「それ、あるかもーー!!」と思ったのが例のほら、子だくさんのダディ。

あると思うなぁ。

たぶんそろそろ世間からは忘れられるだろうけどまだ知名度はある。

公約に「少子化対策」を掲げてさ。

あると思うなぁ。

(念のため言いますけどあの人に議員になってほしいとか思ってるわけじゃないですからね。ある意味、こういうことで立候補者が決まる現代社会を憂いているんです)

身体にいいわけない(続き)

2014-12-01 17:24:41 | 日記
1年ほど前に「日本型政治の中で普通の人がバリバリやっていればそりゃあ身体壊すでしょう」という話をした。

「身体にいいわけない」

で、じゃあ「それでもバリバリやってて身体壊さない人、むしろバリバリやればやるほど顔色がよくなっていくような人ってのはどういう人か?」という話。

ぱっと思いつくのは小泉元首相。

あの人の人柄、政治家としての実力、あの人が首相として行った功罪については僕は言及を差し控えるけども(そもそも僕そんなに政治知識ないしね)少なくともあの人が首相中にぜんぜん顔色が悪くならなかった稀有な人だと思う。なんだかすごく元気そうだったし今でも元気そう。

なぜあの人が元気なのか?ということについて考えたいんだけど、本論の前についでにちょっと言っておきたいことがある。

非常に言いづらいことだけど、あの人が元気な理由って「シングル」だからってこともあるんじゃないかなと思っている。

国のトップで配偶者がいない、って人ってそんなに多くないんじゃないだろうか。

国のトップとしていろいろ面倒なことをやりつつ、更に家に帰れば配偶者といろいろやらなきゃいけない、ってのは結構大変なことだろうと思う。いや、もちろんそれがダメなことだとは思ってませんよ。多くの人間はそうやって一番近くにいる「他者」と話し合い、時には喧嘩して、お互いに思いやり合い、それでお互いに人間として成長していくんでしょう。それはとても有意義な貴重なことだと思う。

でも、それが小泉さんの場合は無かった。これはある意味では気楽なことだったんじゃないだろうか。


で、それはそれとします。

僕は思うんだけど、彼の元気さの理由って「思考のシンプルさ」によるものなんじゃないかと思う。「いいか/わるいか」「賛成か/反対か」「決めるのは/今でしょ!」みたいなね。

様々な問題を「イエス/ノー」の問題に集約して「さぁあなたはどっち?今決めて」とプレゼンテーションする能力に関してはそりゃ天下一品だよね。

首相在任中に小泉さんがやった一番大きなことって「郵政民営化」だったわけだけど、あの時には「すべての問題は郵政民営化賛成か反対かだ」みたいな主張だったよね。いま考えると「そんなわけないだろう」と思うけどね。あの時は日本中があの「イエス/ノー」に巻き込まれていた。

「いや、経済問題もあるし日米関係もあるし、失業率もあるんだけど、、、」「そんなことは聴いていないんだ、まずは郵政民営化にイエスかノーかを答えたまえ」「え?郵政民営化?なんで?」「なんでかじゃないんだ、イエスかノーか、いま答えたまえ」「えーっとえーっとノーではないかなぁ、よくわかんないけど」「そうか、じゃあ私に意見に賛成ということだね、あとは任せておきなさい」みたいな感じで。論理としてはまったくよく分からないんだけど。

で、特筆すべきは小泉さん自身がそういうシンプルな思考、ということだよね。決して「なんだか面倒くさいことがあるけどそれを全部簡単な二元論にしてみんなの目をくらやましてやる、ククク」と思っているわけではない。少なくともそうは見えない。本当に「大丈夫、本当に郵政民営化さえできればすべて解決するんだ」と信じていた。(少なくともそう見えた)

人間のストレスというのは「問題がこんがらがっててあっちを立てればこっちが立たず」という時に発生することがあるけど、そもそも小泉さんには「これさえ立てればいい」と思ってるんだからそりゃあんまりストレスはないよね。

更に言えばそういうシンプルな人には人は集まる。そりゃそうだ。「こういう方法もあるけどそれにはこういうデメリットが、でもこっちはこういうデメリットが、だからむにゃむにゃ」と喋ってる人ってそりゃ正直なのかも知れないけど人気は出ない。「大丈夫!これさえ実現すればすべて解決するんです!」というほうが分かりやすいもんね。

小泉さんのそういう考えややり方をどうこういうつもりはないし、そこまでの知識は僕はないけど、なんとなく「きな臭いなぁ」と思うのはその人気とシンプルな二元論を利用する人たちがいるってこと。とりあえずそういうパーソナリティの人を立てておいて目をくらませている間裏でこそこそっとやるというね。

シンプルな話の結論を人から求められた時は(もちろんそれが正しいこともあるだろう)、ちょっと一旦、立ち止まって「え?これってそんなにシンプルなのかな?」と考えたほうがいいんじゃないかなーと思います。それがなかなか難しいことなんだろうけども。


また選挙があるらしいですが、皆さん、あんまりご無理なさらないほうがいいですよ。「選挙」という映画観てたら「こんなの普通の人間がやったら確実に身体壊すだろうなぁ」と思うもの。

時間や労働内容的にタフだ、という意味ではないんです。以外とそういうのはまだ健康な身体があれば乗り切れるもんです。

身体に悪そうだなぁと思うのは、普通はしない格好をして、大声で「お願いします!」と聴いてもいない通行人に声を上げ続けること。これは身体に悪いですよ~。

こんな選挙システム、早くやめましょうね。