浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

こいよりすきなもの

2010-07-20 22:45:07 | 食べ物
札幌の暮らしが長かったし出張の関係でいろいろ行くんでいろいろおいしいものは食べてきた。決して高い物を食べてる、ってことは無いけど、ほら、手頃な値段で旨いもの探すのは僕の(数少ない)特技のひとつだし。

それでも、どこで食べても「いや、これは実家のほうが旨いな」と思うものがいくつかある。

まず一つは米。母親の実家がお米を作ってるので子供の頃からずっとこの米を食べてきた。茨城ってあんまり知られてないけど米どころなんだよね。僕が食べ慣れてるってこともあるかも知れないけどとにかく実家の米は旨い。

それから餅。これはいろんな人に食べていただいているのでご理解いただけると思うけど。とにかく旨いんですわ。

あとは秋刀魚と鰯。実家の近くに千葉の銚子という有名な漁港があって。ほら、昔社会科で習いませんでした?そのあたりは寒流と暖流が交わる潮目というところで魚がおいしい、とかさ。

最後に鰻。

実家のすぐ近くに利根川って川があるんで結構、川魚も旨いんだよね、うちの実家のほうは。鯉だの鮒だの(こいっこだーのー♪ふなっこだーのー♪)も採れるんだけど僕はあんまり好きじゃない。結構、お祝いの席とかで出たりするんだけどやっぱちょっと泥臭いしね。

つーことでやっぱ鯉より鰻ですよ。

昔、子供の頃って夏、母親が料理が面倒になると川沿いのいつもの鰻屋さんに行って買ってきてそれで晩ご飯、ってことが多かった。なんで僕の中では鰻ってあんまり高級なものじゃなくて時には「え~~また鰻~?」って思うこともあるくらい普通の食べ物だった。鰻って結構高めな食べ物だ、ってことを知ったのは大人になってからだと思う。

母親が鰻を買いに行くのは子供の頃から結構好きで、ちょこちょこついて行った。

いつもの鰻屋さんに行って「鰻四尾ね」とか母親が注文すると、鰻屋さんが「あいよー」みたいな感じで生きてる鰻をさばいてくれる。

このさばきかたを見てるのが子供心に楽しかったんです。

ぬるぬるした鰻をまな板において、慣れた手つきで鰻の頭に錐みたいなものを「どすん」と刺して、それを出刃包丁ですーっと裂いて。。。
飽きもせずずっと見てた。母親はこんなの見てられないので別のところで買い物を済ませて終わった頃にまた鰻を取りに来る。

さばいた鰻を白焼きにしてもらって、それを持って帰る。

家ではグリルでもう一度あっためる程度に焼き直してタレをかけてうな丼。母親としては手間の無い夕食。

とにかくさ、このタレが旨いんだよね。

子供の頃、僕の妹二人は鰻があんまり好きじゃなかったんで、父母と僕はうな丼、妹はタレのみ丼とか食べてた。

不思議な物でこのタレだけだとあんまりおいしくない。やっぱり焼いた鰻を一回このタレに漬けて、鰻の脂が混じったタレが最高に旨いね。

大人になってお酒を飲むようになってから鰻は白焼きも好きになった。

僕はたぶん世界でも10本の指に入るくらいのワサビ好きで、お寿司屋さんでも締めはワサビ巻きをお願いするくらいだけど、とにかく鰻の白焼きとワサビは合う。どんなお刺身だってそりゃワサビはおいしいんだけどなんたってワサビを楽しむには鰻の白焼きですよ。

熱々の鰻の白焼きにワサビをたっぷりつけてキンキンに冷えた日本酒でやっつける、なんてこれは確実に夏の楽しみの一つだよね。

浅草でそれを楽しむなら鳥小(という店)だよなぁ。ここはとにかく安いし旨い。冬の鳥すきもいいんだけど夏に行けばやっぱりここで鰻の白焼きだな。こういうところで鰻食べるとやっぱり鰻って高級料理じゃないんじゃない?と思ってしまう。

ということで夏になるとやっぱり鰻が食べたくなって実家から送ってもらう。

まずは白焼きで。

ちなみに右にあるのは岩手の親戚からいただいた塩ウニ。これまた冷酒と死ぬほど合う。

そしてうな丼。

ありがたいことにタレもたっぷりある。

うちの近所のその鰻屋さん特製のタレ。

鰻の白焼き(と、塩ウニ)をあてに冷酒をぎゃんぎゃん飲んで、〆にうな丼をわっさわっさ食べてると「ああ、夏だな-」と思えて、夏もまぁいいじゃん、暑いけど、と思えるね。