ついこないだ夏が終わって半ズボンをしまったと思ったらあっという間に年が終わるねー。ほんとに9、10、11、12月ってのはあっという間。
個人的 The book of the year 2013ということで今年僕が読んだ本のベスト1を。本に順位をつけることなんて何の意味もないじゃないかと思うところもあるけど、まぁ何となくね。あくまで「僕が今年読んだ本」なので今年出た本とは限りません。
まずはランクイン作品から。
京都東映撮影所を追ったドキュメント。ほんとに映画が好きで、中には映画撮影所にしか居場所が無くて、ここで毎日映画を作っていた人たちの話。「今だったら絶対問題になるよなー」と思うことがバシバシ起こってる。
これ読んで知ったんだけど、僕は映画「探偵はBARにいる」が好きなんだけど、この作品の監督は東映の流れをくんでいるらしい。
パッと見つけて(たぶん鹿児島の本屋さんだった)「こりゃ面白い!」と思った漫画。倦怠期っぽいカップルを男性と女性の視点から書いているというのは面白いよなぁ。
これぞ僕が読みたい伊坂幸太郎でした。何気ない普通の人のセリフが何か重大な人生の指針のように感じさせるというのはやっぱりうまい。
落語家、立川談志最後の日々を看取った娘さんの日記。もしこれが大落語家とその娘の話ではなく、普通の父娘の話だったとしても僕は泣いていたと思う。それくらいこの著者の文章が巧い。名文だと思う。ふと、父の思い出を語りながらただ最後「月がきれいだった」と切り替えるところがある。これが非常に巧い。くどくどと語らないところが非常に小説的だと思う。
今年、一番読んだ漫画はこれかも知れない。「止界」という時が止まった世界に入れる人々のSFサスペンス漫画。これ面白いよー。町山智浩が語る「悪役論」というのがあって、物語の中で単に「善役と悪役」という構図だとあまり面白くならない。作者の本当の欲望が悪に投影されているとその悪役は魅力的になる。たとえばジョジョのDIOにしてもそれは単なる悪ではなく作者の「強くなりたい、永遠の命が欲しい」という欲望が投影されており、それを、それでも作者の善性の象徴である主人公が倒すのでカタルシスになるのだと思う。そういう点でこの漫画の「佐河」は明らかに作者の本当の欲望の象徴だと思う。
止まっている時の中で、佐河と塩見の一瞬の判断は名シーンだった。
この作品は本当にダラダラ続けないでしっかりと結末をつけてほしい。9巻くらいで終わるのが理想だなあ。
いやもうほんとに待ってましたよ。荒木飛呂彦の短編集。「六壁坂」を未読だったので読めて本当にうれしい。しかしさぁ、こんな話思いつくなんて確実に頭おかしいよね(褒めてます) 「密漁海岸」がほろっとするくらいいい話だったなぁ。杜王町に住む人々には本当に幸せになってほしい。
ああ、これについてはちゃんと書かないといけないな。ここでさっと語れる本じゃない。「攻殻機動隊」「パトレイバーシリーズ」の映画監督、押井守の本。この人の映画は僕はあまり観ていない。「パトレイバーシリーズ」くらい。でもこの人の本と言うのは断然面白い。この人が語るテーマは常に「勝敗論」、と言っても「人に勝つ」とか「金持ちになる」っていう勝利じゃない。おそらくだけどこの人のいう勝利は「自分の好きなことをいかに好きなようにやるか」ということ。
この本は毎回、一つの映画を取り上げてそれぞれにおける「勝利」を語っている。特に面白いのが「上からはめちゃくちゃな目標を言われ、条件は悪い、部下もいうこと聞かない」という映画が多いということ。「マネーボール」「プライベート・ライアン」「パトレイバー2」など。中間管理職の人にとっては参考になる話が多いと思う。
もともとこの本は「勝つために観る映画」というタイトルでWebで連載されていた。でもそのまま収録されているわけじゃないから書籍版を買う意味はあると思いますよ。
Web版では最初のほうに取り上げられた「ロンゲスト・ヤード」が書籍版では最後に来ているというのに著者の意図を感じる。おそらく、伝えたいことはこの映画に入っているんだろう。
内田樹の本は今年「見たら買う」という状態で結構読んだ。元々、合気道を始めたのはこの人の本を読んだというのも理由の一つ。それなりに真面目に合気道をしているけどやればやるほど「ああ、こういうののために自分は合気道をやっているのね」と気づくことがある。
さて、僕にとってのThe book of the year 2013は、、
・
・
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「色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年」
個人的ランキングですから、どうかご勘弁を。「村上春樹だったらなんでもいい」ってわけでは決してないんだよ。この小説は本当に良かったの、僕にとって。僕は村上春樹の長編の中で『国境の南、太陽の西』がベスト3に入るくらい好き、という非常に変わった人間なわけだけど。今回のこの小説は『国境の南、太陽の西』と同じような感じがしたんだよなぁ。
『1Q84』は2009年のThe Book of the yearにしたんだけど、僕は『1Q84』よりこちらのほうが好きかも知れない。
何故なんだろうなぁ。分からないけど好きなんですよ。「世界中でたった一人の僕のためだけにこの小説は書かれたんじゃないか」と思ったもの。
好きなんです、とにかく。しつこいね(笑)
さて、今年も終わる。
年末になると「七味五悦三会」という言葉を思い出す。江戸時代の言葉らしいんだけど、「1年の間に七回くらいは美味しいものを食べ、五回くらいは楽しいこと(悦)があって、三人くらい良い出会いがあるといいものですなぁ」という意味だそうです。当時の人は年末にこの言葉を思い出し、今年そういうことがあったかどうかを考えたとさ。
指折り数えてみると両手で数えきれないくらい美味しいものは食べた。五回どころじゃなく楽しいこともあった。だってバーベキューを4回もやったからね、今年は。素敵な出会いもあった。残念ながら別れもあった。でも出会いも別れも無いよりは何かがあったほうがいい。
「かぐや姫の物語」の物語を観てそう思ったよ。せっかくこの世に生を受けて、愛を受けて育ったけども思い通りにならないことばかり。「こんなはずじゃなかった」「ここは自分が本当に居たい場所じゃない」と思いつつ日々を過ごして最後にはお迎えが来て無に帰す。どんなに泣き叫んでもそれを拒むことは出来ない。じゃあそんな人生に意味があるのか? でも、何もないよりはあった方がいい。
そういうことです。
今年もお世話になりました。とにかく皆さん、ありがとうございました。大層面白かったです。
来年も理力があなたと共にあるように。
(May the force be with you.)
個人的 The book of the year 2013ということで今年僕が読んだ本のベスト1を。本に順位をつけることなんて何の意味もないじゃないかと思うところもあるけど、まぁ何となくね。あくまで「僕が今年読んだ本」なので今年出た本とは限りません。
まずはランクイン作品から。
京都東映撮影所を追ったドキュメント。ほんとに映画が好きで、中には映画撮影所にしか居場所が無くて、ここで毎日映画を作っていた人たちの話。「今だったら絶対問題になるよなー」と思うことがバシバシ起こってる。
これ読んで知ったんだけど、僕は映画「探偵はBARにいる」が好きなんだけど、この作品の監督は東映の流れをくんでいるらしい。
パッと見つけて(たぶん鹿児島の本屋さんだった)「こりゃ面白い!」と思った漫画。倦怠期っぽいカップルを男性と女性の視点から書いているというのは面白いよなぁ。
これぞ僕が読みたい伊坂幸太郎でした。何気ない普通の人のセリフが何か重大な人生の指針のように感じさせるというのはやっぱりうまい。
落語家、立川談志最後の日々を看取った娘さんの日記。もしこれが大落語家とその娘の話ではなく、普通の父娘の話だったとしても僕は泣いていたと思う。それくらいこの著者の文章が巧い。名文だと思う。ふと、父の思い出を語りながらただ最後「月がきれいだった」と切り替えるところがある。これが非常に巧い。くどくどと語らないところが非常に小説的だと思う。
今年、一番読んだ漫画はこれかも知れない。「止界」という時が止まった世界に入れる人々のSFサスペンス漫画。これ面白いよー。町山智浩が語る「悪役論」というのがあって、物語の中で単に「善役と悪役」という構図だとあまり面白くならない。作者の本当の欲望が悪に投影されているとその悪役は魅力的になる。たとえばジョジョのDIOにしてもそれは単なる悪ではなく作者の「強くなりたい、永遠の命が欲しい」という欲望が投影されており、それを、それでも作者の善性の象徴である主人公が倒すのでカタルシスになるのだと思う。そういう点でこの漫画の「佐河」は明らかに作者の本当の欲望の象徴だと思う。
止まっている時の中で、佐河と塩見の一瞬の判断は名シーンだった。
この作品は本当にダラダラ続けないでしっかりと結末をつけてほしい。9巻くらいで終わるのが理想だなあ。
いやもうほんとに待ってましたよ。荒木飛呂彦の短編集。「六壁坂」を未読だったので読めて本当にうれしい。しかしさぁ、こんな話思いつくなんて確実に頭おかしいよね(褒めてます) 「密漁海岸」がほろっとするくらいいい話だったなぁ。杜王町に住む人々には本当に幸せになってほしい。
ああ、これについてはちゃんと書かないといけないな。ここでさっと語れる本じゃない。「攻殻機動隊」「パトレイバーシリーズ」の映画監督、押井守の本。この人の映画は僕はあまり観ていない。「パトレイバーシリーズ」くらい。でもこの人の本と言うのは断然面白い。この人が語るテーマは常に「勝敗論」、と言っても「人に勝つ」とか「金持ちになる」っていう勝利じゃない。おそらくだけどこの人のいう勝利は「自分の好きなことをいかに好きなようにやるか」ということ。
この本は毎回、一つの映画を取り上げてそれぞれにおける「勝利」を語っている。特に面白いのが「上からはめちゃくちゃな目標を言われ、条件は悪い、部下もいうこと聞かない」という映画が多いということ。「マネーボール」「プライベート・ライアン」「パトレイバー2」など。中間管理職の人にとっては参考になる話が多いと思う。
もともとこの本は「勝つために観る映画」というタイトルでWebで連載されていた。でもそのまま収録されているわけじゃないから書籍版を買う意味はあると思いますよ。
Web版では最初のほうに取り上げられた「ロンゲスト・ヤード」が書籍版では最後に来ているというのに著者の意図を感じる。おそらく、伝えたいことはこの映画に入っているんだろう。
内田樹の本は今年「見たら買う」という状態で結構読んだ。元々、合気道を始めたのはこの人の本を読んだというのも理由の一つ。それなりに真面目に合気道をしているけどやればやるほど「ああ、こういうののために自分は合気道をやっているのね」と気づくことがある。
さて、僕にとってのThe book of the year 2013は、、
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「色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年」
個人的ランキングですから、どうかご勘弁を。「村上春樹だったらなんでもいい」ってわけでは決してないんだよ。この小説は本当に良かったの、僕にとって。僕は村上春樹の長編の中で『国境の南、太陽の西』がベスト3に入るくらい好き、という非常に変わった人間なわけだけど。今回のこの小説は『国境の南、太陽の西』と同じような感じがしたんだよなぁ。
『1Q84』は2009年のThe Book of the yearにしたんだけど、僕は『1Q84』よりこちらのほうが好きかも知れない。
何故なんだろうなぁ。分からないけど好きなんですよ。「世界中でたった一人の僕のためだけにこの小説は書かれたんじゃないか」と思ったもの。
好きなんです、とにかく。しつこいね(笑)
さて、今年も終わる。
年末になると「七味五悦三会」という言葉を思い出す。江戸時代の言葉らしいんだけど、「1年の間に七回くらいは美味しいものを食べ、五回くらいは楽しいこと(悦)があって、三人くらい良い出会いがあるといいものですなぁ」という意味だそうです。当時の人は年末にこの言葉を思い出し、今年そういうことがあったかどうかを考えたとさ。
指折り数えてみると両手で数えきれないくらい美味しいものは食べた。五回どころじゃなく楽しいこともあった。だってバーベキューを4回もやったからね、今年は。素敵な出会いもあった。残念ながら別れもあった。でも出会いも別れも無いよりは何かがあったほうがいい。
「かぐや姫の物語」の物語を観てそう思ったよ。せっかくこの世に生を受けて、愛を受けて育ったけども思い通りにならないことばかり。「こんなはずじゃなかった」「ここは自分が本当に居たい場所じゃない」と思いつつ日々を過ごして最後にはお迎えが来て無に帰す。どんなに泣き叫んでもそれを拒むことは出来ない。じゃあそんな人生に意味があるのか? でも、何もないよりはあった方がいい。
そういうことです。
今年もお世話になりました。とにかく皆さん、ありがとうございました。大層面白かったです。
来年も理力があなたと共にあるように。
(May the force be with you.)