出たってよ。
「また桐島の話か」とか「いつまでひっぱるのよ」と思う方もいらっしゃるでしょう。僕だって思う。何回も何回も、いつまで桐島の話をするのか。ほんとどうしようもないね。
でもね言わせてください。
このDVDはイイです!
もちろん映画の本編がいいというのはもう言うまでもない。僕が言いたいのはそこじゃない。
とにかく僕にとっての「桐島」という映画の好きなポイントの一つ「真面目に作ってる」ということがDVDになっても踏襲されています。
まず本編ディスクをプレーヤーに入れて10秒で「わかってんなー」と思ったね。
なぜか。
あのね、プレーヤーに入れてプレイボタン押したら2、3秒、製作会社のロゴが出て、すぐ黒バックに「金曜日」と出るの。つまりすぐ本編が始まるんですよ。これが素晴らしい! 最近、こういうDVDが本当に少ない。
だいたい予告編が何本か入っているでしょう。言っとくけど予告編に文句付けるつもりはない。予告編はつまり広告なんだから広告を入れることで今の価格で買えているということもあるのだから仕方ない。
僕がとにかく「いらねーなー」というのは余計な映像。例えばDVD版ダークナイトでは最初にバットマンが飛ぶ映像、そしてスタートボタンを押すとジョーカーが「Here we go」というシーンが入ってた。ブルーレイ版の007シリーズはだいたいCGの起動画面みたいのが入ってる。これが無駄に長いんだ。しかも早送りとスキップが出来ない。
あのね、僕は聞きたい。これ作った人はほんとにこの映像をかっこいいと思ってんの? こちとらDVD買ったからには何回も見るのよ。こんなどうでもいい映像、何度も見たくない。100歩譲ってダークナイトの場合は本編の映像なんだからかっこ悪くは無いよ。でもそういうのは本編の流れで観たい。ほんとなに考えてるの? サービスのつもり? お願いだから止めてほしい。
というのが桐島は無くて良い。
気持ちとしてはDVDを入れた瞬間に、桐島の世界がすぐ始まるくらいのイメージ。玄関開けたら二分でご飯、ディスク入れたら5秒で金曜日。これは素晴らしいね~。
付いているブックレットも結構厚い。内容はパンフレットとかぶっている部分もあるのでパンフレット持っている人(僕はもちろん持ってマース)には物足りないかもしれないけど、持っていない人に取っては読み込み甲斐のあるものだと思う。
あと、エンディングの歌「陽はまたのぼる」、歌がいいのはもちろんなんだけど、通常のシングルとはアレンジが違うのね。映画版はギターのみ。もちろんシングル盤もいい(シンバルがジャンジャーン、というところが好き)んだけど、このシンプルな感じはこれで趣が深い。あとじっくりエンドロール見て気づいたけど、画面に『主題歌:「陽はまたのぼる」高橋優』って文字がちょうど真ん中に来るときに、歌も「陽はまたのぼるさ」となるのね。このタイミングもうなに? 神!
そして!!! そしてなんと言っても特典ディスクですよ。いろいろ入ってますよー。
まず良いのがメイキング。桐島世界の人々の裏側が見られて非常によい。メイキングを見てると本編見たくなるし、本編見てるとメイキングが見たくなるという永久運動。
これ見てる色々わかるよ。
まず、この映画の監督ってすごく細かく指示しているのね。「ビンタされた瞬間はほとんど表情無しで。『はぁ?』のとこは表情つけていいから」とか。すごーく「真面目」に作ってる感じがするよ。目線の一つ一つとかすごく細かく指示してる。
あとゾンビのシーンは監督が「これは革命だから!ここがダメなら全部ダメになっちゃう。本気で行って」とか言っている。そうだよなーあそこは革命だよなー。革命だから僕はあそこで泣くんだよ。
更に主要キャストのクランクアップの映像なんかいいよー、青春だよー。女子なんてみんな泣いてるの、リサとサナなんか抱き合っちゃってさー。あ、沢島は泣いてなかった。さすが部長。
ちょっと沢島の話させてください。
沢島はねー、僕はもう抱きしめてあげたい。いや、もちろん現実的に抱きしめるわけじゃありませんよ、女子高生にそういうことをしたらいろいろ問題がありそうだし。そうではなくて「大丈夫、そのままでいいんだ」と全肯定してあげたい。前田も抱きしめてあげたいけど、彼の場合は武ちゃんという親友がいるから大丈夫だと思うんだよね。でも沢島には後輩しかいない。だから僕が「そのままでいいんだよ」と言ってあげたい。ええ、我ながら頭おかしいと思う。でもね後輩が沢島に『演奏してる部長見たら好きになる男子いっぱいいると思いますよ』というのは後輩なりに「先輩はそのままでいいと思います」と言っている、つまり「抱きしめている」んだと思う。後輩だからストレートに言えないのだろうけど。
沢島の話終わり。とにかくメイキングがイイです。
期待していたエチュード(アドリブの寸劇)は面白かったけど、期待していたほどじゃなかった。ちょっと短くてねー、2、3分しかないんだもの。2時間くらいやっててほしかったです。
あとオーディオコメンタリーもいい。男子(前田、武ちゃん、久保、風助、日野、竜汰)がスタジオに集まって最後の火曜日を見ながらだらだら喋ってるの。撮影裏話も聞けるし。風助は制服がちょっと大きいんだけど、それはあえてなんだって。「お母さんが『これから大きくなるだろうから』と入学のときに大きめの制服を買ってくれた」という設定。なるほどねー。とにかく彼らがキャッキャ言ってる感じがとにかく仲良さそうでいいよ。願わくばキャプテンがいてほしかった。
そしてこれだけは言わせてほしい。特典映像の中で観るべきはとにかく「フェイクインタビュー」です!! 桐島本編を楽しんだ人はぜったいに楽しめる。かけてもいい、2ペソくらい。いや、ほんとにこれは素晴らしい。
何かと言うとね、「現代の高校生に本音を聞く」という嘘のテレビ番組のていで桐島のメインキャストにインタビューしているの。つまり神木隆之介くんに「前田」になってもらって、前田に「部活はやってますか?」「いま打ち込んでいるものは?」「友達は多い方ですか?」「好きな人はいますか?」とインタビューをしている。もちろん単独インタビューという形ね。
僕は10分そこらのこの動画だけで二回ほど泣きそうになった。
(これがアドリブなのか台本があるのかは分からない。でも僕はアドリブなんだろうと思って観た。よってアドリブという前提で話を進めます)
それぞれ(前田、リュウタ、ヒロキ、友弘、かすみ、みか、りさ、さな)の「ああ、この人ならこう言うだろうなー」というのが素晴らしい。本当にすごいんですよ。
特にリュウタとサナ。
サナの「ああ、こいつめんどくせーなー」感たるやすごいですよ。端的に言ってしまうとね「一言多い」んだよね。「うるせーよ(笑)」と言いたくなる。
リュウタは結構「ちゃんと考えてる風な」ことを言う。「こんな時代なんで好きな仕事につけるとは限らないですよね」とか。でも一切この人の心の言葉に思えないんだよなー。そこが本格的にチャラい、言葉が軽い。
関係ないけど、僕はこのリュウタというキャラクターを「親が商売やっているのでは?」と想像していた。今回、「好きな食べ物は?」という質問に「焼き鳥ですね、せせりとか」と答えていたので「親は焼き鳥屋」と予想しています。
とにかくもうこの二人はリュウタとサナにしか見えない。これをアドリブでやっているのだからすごいっす。この二人は役者さんとしてすごいねー。あ、もちろん神木隆之介は別格。
あとちょっと泣きそうになったのがミカが「好きな人はいますか?」と聞かれたときの答え。しばらく考えた後に「いません」といい笑顔で答えるんだよねー。対照的なのが沢島の返答。しばらく考えた後に「います」と答えて、照れたような笑顔になる。この二人の『沈黙の後に「いません/います」と答えてそして笑顔』と対照的な感じはいいねー。
そして、なんといっても竜汰とカスミ。「好きな人はいますか?」と聞かれたこの二人の返答がすごすぎるね。これはぜひ現物ご覧ください。
ヒロキは言葉としては薄っぺらいつまらないことしか言ってない。そこがヒロキっぽい。褒めてるんですよ、ヒロキはヒロキでこうでなくちゃいけないと思う。すべてを持っているのに、何にも熱中できない、未来にワクワク出来ない感じがヒロキっぽい。
一点だけ言うと前田には「好きな人いますか?」という質問はしてほしくなかったなー。神木君も聞かれたら答えるしかなくて答えているんだけどそれは間違っているわけではないけど、前田の口から聞かないほうがモヤモヤしててよかったと思う。ああ、あと願わくばキャプテンのインタビューも聞きたかった。
とにかく桐島本編を楽しんだ人は特典付きDVDを買って損ないと思います。もうぜひ!
ああ、最後に付け加えるとすると「君よ拭け、僕の熱い涙を」と「生徒会・オブ・ザ・デッド」はそれぞれ1分だけでもいいから入れてほしかったね。むちゃなお願いしていることは重々承知で。まぁ入っていないとこが「見たかったよなー」と思わせていいのかも知れないけど。
このディスクの一番の楽しみ方はウチで酒のみながら何人かで鑑賞会することだと思う。
「ごめん、キャプテンのとこ巻き戻していい?」
「前田!ダメだ!その教室のドアを開けるな!」
「ほら、やっぱここでミサンガ隠してるじゃん」
「ここのカスミの目線がモヤモヤするよねー」
「ごめん、キャプテンのとこ巻き戻していい?」
「こいつら全員、食い殺せ!」
「さーてメイキングもっかい観るか―」
とか言いながら。
ほんとすごい作品ですよ。
で、僕もしばらく経ってから気づいたんだけど、実はケースのジャケットの裏側に、、、もう!ニクイね! ほんと買った方がいいよ。