浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

文具話・序章

2011-06-30 23:38:08 | 日記
僕と直接面識のある方のうち多くの方はご存知だと思いますが僕は文具が好きです。

文具に限らず「便利なテクノロジー」というのが好きなんだよね。ちょっとしたものでも「うわ!これ便利ー♪」と思っちゃうし。

いま僕の鞄の中に入っている文具がどれくらい便利なのか、ということについてまとめて書こうと思っていたんだけど話し出すと止まらないのでまず序章として簡単に書いときます。

まず大元というか文具一式を入れているペンケース。


これです。

これがねー、便利なんです。何でかと言うと開くと自立するから。


こうね。

つまり出張行ってホテルのデスクとか新幹線の中とかで仕事するときこれがペン立てになるの。あー便利♪とりあえずこれとパソコンと手帳さえ持っていれば大体の仕事は出来ます。ハサミとかカッターが入ってないのが不便なんだけどね。そういうのって飛行機乗るとき引っかかるからあきらめてます。

ほいでその中に入ってるので一番新しい文具がこれ。


はい、これなーんだ。ぱっと見、USBドライブみたいな薄さでしょ。ペンケースの中に入れてもあまりスペースを取らない。

正解はステープラー、つまりホチキス。


なんだかんだでホチキス使うからね。ホチキスをペンケースに入れるとかなりスペース取るのでこれ見つけたときには「これだ!」と思ったの。

こういうのに囲まれてると仕事楽しいよん。

何度目かの夏

2011-06-25 16:24:46 | 食べ物
もう夏ですなぁ、暑い。

夏の楽しみというといろいろあるけど一つは浅草のワインバー。ちょっと今日はさわやかなワインなんかを飲みたいなぁと思うときに行きます。

ここは酒屋さんが直営でやっていて地下にワインセラーがあります。そこでお好きなワインを選んで上のレストランで飲むことも出来る。って僕はワインよく知らないからやったこと無いんだけどね。店に入って店員さんに「えーっとこういう季節に飲みやすい白ワインをボトルで」みたいな適当な頼み方しかしたことない。

この季節、まず一本目に飲むのがランブルスコ・ロッソ、という赤のスパークリング。これがね~赤ワインの甘さと炭酸のさわやかで超美味しい。真夏の昼間はキリッと冷えた白ワインを飲みたいけど真夏の夜にはこれがぴったりです。夏になるたび何度も言っているけどぜひお試しください。

パンとチーズや生ハムなんかで最高です。

さんざんっぱらワインを頂き、帰りには同じ通りにある冷やし坦々麺。

何でか夏になるとここの冷やし坦々麺が食べたくなる。

暑い日が続くけど悪いことばっかりじゃないよね。

コミュニケーションはストレートに

2011-06-23 18:19:39 | 仕事
あくまで仕事上での話なんですが。

先日、こういう話がありました。

後輩がお客さんのところに行ったけどただウチの会社の話をだーっとして帰ってきた。帰社後、話を聞いてもお客さんの情報を何も聞いていない。「なんで?」と聞くと「名刺交換した直後からすごく時間が無い感じだったんで…」とのこと。

こういう人たまに、いや、よくいます。

で、だいたいこういう人に「あのさ、『時間無さそうだなー』と感じたときに『大変失礼ですが、もしかして次のご予定などあってお急ぎですか?』とか聞いたの?」って質問すると大体聞いてないんだよなー。

こういうの僕、すごく無駄だと思うんです。

「あ、忙しそうだな、早く話の結論つけないと…」って勝手にこっちが考えてるけど、実は単に「せっかち」な人で時間はたっぷりある、ってことだってあるでしょう。

もちろん本当に時間が無くて「そうなんだよ、急に予定が詰まっちゃってあと10分しか時間ないんだよ」って場合もあるかも知れない。

だからもし「あれ?なんか急いでそうだな?もしかして今日時間無いのかな?」って感じたら聞いちゃえばいいだけの話なんだよ。

前者だったら気にせず話を聞いたり、話したりすればいいし、もし後者だったらさ「そうですか、ではまた日を改めましょうか?」ってのもありだと思う。

昔、上司に「コミュニケーションはストレートに」って教わった。

たとえばお客さんと話していてどうも相手が喧嘩腰だとする。この時にはもうストレートに「大変申し訳ございません、何か私が失礼なことしましたでしょうか?」と聞け、とね。それで「そうだよ、あなたがあのとき…」と言ってくれてそれでこちらに非があれば謝ればいいだけの話。

もちろんこちらに対して怒っているんだけど、聞いても「いや、別に」と言ったときでも「あ、怒ってないんですね」と言えばいい、というわけじゃない。そこはそこで「口では怒ってないって言っているけどやっぱり何か気にかかってることがあるんだろうな」とちゃんと捉えて自分の行動を振り返ることは大事よ。

あとあくまで仕事上で、ですから。友達関係や恋人関係はまた別ね。

僕は東京ポッド許可局を応援しています。

2011-06-20 19:18:09 | 
昨日、トークライブに行ってきました。

何でもやっぱり生で見るといいね、と言う話は今度別にしたいと思ってます。

行ってきたのは「東京ポッド許可局」というポッドキャストで放送している番組のイベント。



東京ポッド許可局と言うのはマキタスポーツ、プチ鹿島、サンキュータツオ、という3人の芸人がいろんなこと(えーっとM-1とかビートたけしとかアイスとかキャベツとか…)について3人で話している、という音声だけの番組。

これがねー、面白いんだわ。

キャッチコピーは「屁理屈とはスポーツである」。

いいおっさんたち(だいたい30代後半から40歳)3人がジュースについて「あれ旨い!」だの、お笑いについて「手数の時代に入っている」だのを話し合っているのなんて、聞いてるこっちもずいぶん物好きだなぁと思うところはあるけども。

ぜひ騙されたと思ってポッドキャストを登録してみるか、iTunesとかもって無くてもパソコンでも聞けるので聞いてみてください。

(一番下に余計なおせっかいですが、現時点で聞けるデータのうちお勧めを書いておきます。)


ここからちょっと大仰な話になるけども、僕はこの東京ポッド許可局を応援しています。

なぜか、というとまず、コンテンツとして内容が非常に面白いから。聞いていて笑うし、「なるほどなぁ」と膝を打つところも多い。落語なんて僕はそんなに詳しくは無いけどそれでも「小朝論」という回で、三遊亭円朝という大落語家についての詳しい話なんかは非常に参考になった。

そしてこれが基本的には無料で聞ける、というのがすばらしい。システムとしては毎週日曜にネットを通じて配信されてそれをダウンロード、あるいは視聴するのは無料。配信後、数週間でネット上の掲載は終わり過去のものを聞きたければ5回分まとめて300円で購入できる、という仕組み。だからPodcastに登録して自動的にダウンロードされるようにしておけば基本的に無料。

こんなすばらしい話はないね。


そしてここからが僕が言うことじゃないけど今後のメディア論的視点からの応援理由。

僕はこれが新しい芸人の「売れる形」になって欲しいと思っています。

登場する3人とも現時点では失礼ながら決して世間的に有名、という人ではない。ダウンタウン、ナインティナイン、ブラマヨ、オードリーとか今テレビを付ければ見られる人とは比べ物にならないくらい知名度はない、大変失礼だけれども。

でもね、僕は思うんだけどテレビにいつも出ている人たちしか見たり聞いたり出来ない、という状態ってすごく淋しい。

出来れば面白い人も(そりゃもちろん面白くない人も)たくさんいて、そんな中で楽しめたほうがいい。

もちろんテレビだけが「世間」ではなくてテレビに出ていないけど面白い人は現時点ではたくさんいるだろう。僕が知らない面白い人、そして僕の知らないところで人気がある人だってまだまだたくさんいるんだろうと思う。だけどこれだけネットが発達した現代においてもその人たちを知ることが出来ない人、知っているけど触れるチャンスが無い人だってたくさんいる。たとえば地方に住んでいたりするとね。

あくまで素人意見だけど今のテレビはもうガチガチで、人気のある人(というか「人気があると思われている人」)しか出てこない。

そんな中、自分たちを面白いとちゃんと自信を持っているけど出るチャンスが無い人ってたくさんいるんだと思う。(その人たちがかけたチャンスがM-1であったと思うんだけど)

そしてそこにも入れない人がいて、残念ながらそういう人たちは今までどれだけコアなファンを得ていても残念ながら消えていくしかなかった。ファンがどれだけコアでも絶対数が少なければ商売にならない。

そんな状況をこの人たち、東京ポッド許可局は打破しようとしていると思う。

お金なんてほとんどかけずに3人で集まって1個のICレコーダーの前で話している。それをこれまたお金をかけずにPodcastとして配信する。ただそれだけ。それでもその話が面白ければ人は集まってくる。なんとまぁいまPodcast登録者数20万人ですって。

その20万人のうち何人がちゃんと聞いているかは誰にも分からないけど、場合によってはゴールデンタイムでも視聴率1%を切ってしまう現在においてもテレビよりもそれは大きな影響力なんじゃないだろうか。

僕はこういうパターンがどんどん出てくればいいと思っています。

こういう「話」の形だと二番煎じになってしまうけど、たとえば楽器を使わずめちゃくちゃすごいオリジナル曲を演奏できるよ、って人がいたとする。今までだったらこの人は単なるもの珍しい人で、うまく行ってもちょっとしたバラエティに出て終わり、ってくらいだろう。CD売ろうにもお金がかかるからそんなに作ってくれる人なんていない。自主制作しても限度がある。

でもこのパターンを踏襲すれば、まずはPodcast配信をする。いい物であれば聴取者が増える。その中で欲しい、という人にのみオリジナル音源をネット販売する、ということが可能かも知れない。直接的に販売出来なくてもそれが知名度を上げる要因になり、何かしらのチャンスが生まれることだってあるかも知れない。

Ustreamだって今は玉石混合だけどその中からきちっとお金を稼いでいく人が現れればもっともっと発展するだろう。

結果、テレビの視聴率が下がってテレビがつまらなくなってもそれは時代の流れだもの、仕方が無い。(ただあえて僕は言っときたいけど僕は典型的にテレビっ子でテレビとともに育ってきた人間だから「そーんなにテレビは弱くないだろ」と思っているけどね。お金無いならないでどうにかするよ、たぶんテレビは。)


この「東京ポッド許可局」も現時点では大きく儲かっている、というわけではない。(イベントでも本人たちがしきりに言っていた) でも僕はこういう人たちこそちゃんと儲かって欲しいと思う。ウハウハ、ってほどでなくても少なくとも本人たちがやりたいこと(つまりこの番組)を続けられる程度に。そうすれば何より聞いている僕が楽しめるもの。

なんとこの東京ポッド許可局、8月28日に日比谷公会堂で2,000人集めるイベントを行う。(→大東京ポッド許可局

先日見てきたイベントはこの大イベントのオフレコトークもあった。聴いていると一言で「2,000人集める」と言ってもこれは大勝負なんだなぁということがよく分かる。スポンサーのいるイベントではないからイベント費用は本人たちが出している。現時点で2,000人の動員力のある人たちでは無い。もし不運が続けばお客さんが入らず大赤字ってこともありうるだろう。

この「行けるのか行けないのか」というドキドキ感がたまらない。本人たちが言っていた「僕ら失敗している余裕がある年齢でもないし、後戻りが出来る年齢でもないんです!」はかなりグッと来たなぁ。僕自身、この人たちとほぼ同世代、と言っていい世代だからこの気持ちはよく分かる。

僕は決してお笑いに関して先物買いをする人間ではない。たとえばお笑い番組を細かくチェックして「あ、この芸人がこれから来そうだな」なんてことをやる人間ではない。だから数年後に「あいつらは俺がずっと前から目をつけてたんだよ」と言いたくて応援しているわけじゃない。

ただ上記のような理由で、必ずこの人たちは脚光を浴びるはずだと思うし、ぜひ浴びて欲しいと願っている。そうすれば世界はもっと面白くなるはず。

というわけで僕は東京ポッド許可局を応援しています。


気になる方は本も出てますからぜひ手に取ってみてください。買うのが躊躇われるならお貸しします。
東京ポッド許可局 ~文系芸人が行間を、裏を、未来を読む~東京ポッド許可局 ~文系芸人が行間を、裏を、未来を読む~


【オマケ:2011年6月21日時点で聞ける東京ポッド許可局お勧め回】

上記でも書いたけど東京ポッド許可局のコンテンツは大体10~30分くらいの音声コンテンツ。形式としては3人(許可局員、という形式)がtだただしゃべっているだけ。プラスたまに謎の局長と言う人が入ってくる時もある。

テーマはかなりばらばら。

毎週日曜日更新、公開期間(つまり無料で聞ける期間)は数週間。ただPodcastに登録(あるいは自分でダウンロード)してパソコンに保存しておけばずっと聴ける。

どの回も面白いけど人によって好みがあると思うので(僕は全部好きだけど)お勧め回を余計なお世話ですが書いときます。

※このページ(→東京ポッド許可局)行って下にスクロールや「次のページ」とか行ってみてください。各回にあるリモコンマークの再生ボタンを押せばすぐ聴けるし、「DL」というところを押せばダウンロードできます。

【第180回“大好きなファーストフード”論 】

3人がただただ自分の好きな食べ物について語り合う、という許可局のお家芸的回。この人たちの特長はただ単に「あれ旨いよね」というだけに終わらず、なぜそれが旨いのか、その旨さは自分に取ってどういう意味があるのか、という屁理屈をひたすらこねくり回す点。それがよく分かる回。

【緊急特番“ラジオ”論】

TBSラジオ60周年記念番組に出たときの回。ラジオについて語っています。このときのマキタ局員の「しゃべりたかったんだよ!」という心の叫びは白眉。なぜか途中、インスタントラーメンの話に脱線していくのもすばらしい。

【第184回“この志ん朝がヤバい! 傑作三席”論】

許可局員の一人サンキュータツオ氏は落語に造詣が深い。そのタツオ局員が平成の名人古今亭志ん朝の魅力を余すところ無く語った回。「落語大嫌い!」という人でなければ必ず「へーちょっと志ん朝って聞いてみようかな」と思うはず。そうやって自分の触れたことの無かったものに触れてみる、ということって人生おいて幸せなことだと僕は思うんだよね。
もしこれで落語に興味を持ったら是非、東京ポッド許可局の「小朝論」そして「小朝論~その後~」の小朝シリーズを聞いていただきたい。どれだけ落語の世界が興味深いかを必ずご理解頂けるはず。

ナポリタンとアホスープ

2011-06-13 21:30:13 | 食べ物
一人暮らしで多少自炊好きの男性は必ずパスタを作ったことがあると思う。だよね?

パスタって凝らなければ簡単で美味しいし。

もちろん僕もそう。

中学生の頃に村上春樹の「スパゲティの年に」って短編読んでから一人暮らしじゃなくても作ってた。

結構いろいろ凝ってきましたよ。

ミートソースを自作することはもちろん、カルボナーラは生クリームを使わない正統派の「ローマ風カルボナーラ」まで作った。卵黄とパルメジャーノレッジャーノでソースを作るの、濃厚で美味しい。

でもね、最近、一周してしまって何の変哲もないナポリタンを「旨い旨い」と食べてます。

具はベーコンとタマネギとピーマン。ケチャップである意味下品に味付けしてね。そういや「きのう何食べた?」って漫画でも出てた。

気持ちとしてはベーコンじゃなくてウィンナーの薄切りがいいし、マッシュルームの薄切りも入れたいところ。

とにかくナポリタンって改めて食べると美味しいんだよね。

で、これだけだとさすがに炭水化物多めになってしまうので同時に野菜スープを作ってます。

心の中で「アホみたいに野菜たっぷりのスープ」、略してアホスープと呼んでるスープ。

鍋でにんにく薄切りをオリーブオイルであっためてキャベツを切ったもの、その他適当な野菜を炒め、水を入れてコンソメで味を付けたスープ。コンソメの量さえ間違えなければ間違いなく美味しい。ちなみにニンニクのことをスペイン語で「アホ」って言うらしいのでアホスープはそれもかかってます。

なんだか「洋食食べてるなぁ」って感じがするんだよね。

未公開映画祭レビュー

2011-06-11 23:11:15 | DVD、映画
前に書いたと思うけど、東京MXテレビで「松嶋×町山 未公開映画を観るテレビ」というをやってた。

映画評論家町山智浩が日本では公開されないアメリカのドキュメンタリー映画を持ってきてテレビ放送するもの。

なかなかマニアックなラインナップばかりで普通に生きていると知らない世界(まぁ知る必要もあんまり無かったりするけど)が垣間見られて面白かった。

昨年末にそれらの映画を期間限定でネット放送してて(それが「未公開映画祭」)、1万円払うと全作品見放題だったので見てみた。

まとめて感想書こうと思ってて忘れてたので今書きます。いくつかの作品はたぶんDVDが発売されてると思います。ご興味ある人はどうぞ。

観るのが面倒な人はこの番組の本も出てますんで。
町山 智浩,松嶋 尚美
集英社
発売日:2010-11-16


「ザカリーに捧ぐ」

ザカリーに捧ぐ : 松嶋×町山 未公開映画を観るTV [DVD]ザカリーに捧ぐ : 松嶋×町山 未公開映画を観るTV [DVD]

誰からも愛されたアンドリューという男が殺された。残されたのは彼の一人息子ザカリー。

友人であった映画監督はアンドリューがどういう人だったのか、ということをいろいろな人にインタビューする旅に出た。それをまとめザカリーが大人になった時に「君のお父さんはこんなにすばらしい人だったんだよ」と見せてあげるために。

映画の前半はアンドリューの友人たちのインタビューが続く。人々は口をそろえて「彼は素晴らしい友人だった」と言う。しかしインタビューを受けながらみな必ず途中で泣き出す。「なんであんないいヤツが殺されなければいけないんだ…アンドリューを殺した女を絶対に許さない」

アンドリューを殺した女、というのはザカリーの母。つまりアンドリューは交際相手に殺された。

そしてアンドリューが死んだとき、交際相手はザカリーを妊娠していた。

そして物語は思いもよらない方向に転がり始める。。。

これは予備知識一切無しで観た方がいいすよ。

「カシム・ザ・ドリーム」

これはちゃんと書いたんでこちらをご覧ください。(これ→カシム・ザ・ドリーム

今、思い返してもすばらしい映画だったと思う。

「マッド・ムービーズ~オーストラリア映画大暴走~」


70~80年代にオーストラリアは国策として映画制作に力を入れた。つまりがんがん映画を作って海外に売り外貨を獲得するため。この国策によりいろんな映画が作られた。もちろん真っ当な芸術モノも作られたけど主に作られたのは「すぐに売れる」映画、つまり解りやすい映画、簡単に言ってしまえばエロ、ホラー、アクション。

その時代、映画を作っていた人々のインタビューとその映画のシーン、そして案内役がクエンティン・タランティーノ、という無駄にバカ豪華な映画。

これはね~おもしろかったよー。80年代くらいのオーストラリア映画の名シーンが出てくる。

たとえば車の爆発シーン。カメラの脇すれすれを爆風で吹き飛んだ車のドアがヒュンヒュン飛んで行く。「このシーンはすごいですね!どうやって撮ったんですか?」と監督にインタビューすると「ただやっただけ」

猛スピードで突っ込んでくるバイクの運転手に横っ飛びでカンフーキックするシーン。「すごいな~ワイヤーで吊ってるのかな?」と思うんだけど、これも「ただやっただけ」

ヘリコプターから海への飛び降りも、道路脇の通行人へ猛スピードでトラックが突っ込んでくのもぜーんぶ「ただやっただけ」 突っ込んで車にひかれた一般人にはビールを奢ってあげて「どーもすいませーん」で終わり。「次からもっと早くよけろよ」だって。

みんなして「いやー事故がなくて良かったよ」って笑ってるの。

その他、アクションシーンはパンチもキックも全部ホントに当ててる。火だるまになるシーンはホントに火をつけてる。銃撃シーンは実弾撃ってる!!

「マッドマックス」のあるシーンで、バイクを運転していた人が転び、道路を滑り倒れたところに後ろからバイクの車体が突っ込んでくるシーンがある。明らかにバイカーの首に当たっていて「ごきっ」となってる。公開時、すべての人が「これは死んでるだろ…」と思ったらしい。

で、それについて監督にインタビューする。

「いや、みんなそういうんだけど大丈夫だったんだよ!あれは」

あれは?(笑)

こんな映画がバンバン作られているのにスタントマンはオーストラリアに一人しかいなかった。だからすべてのスタントシーンを一人でやってる。

いまだったら絶対こんな映画作れないよね。

非常に不謹慎な映画ばっかりなんだけどやっぱりね迫力がある、だってリアルなんだもの。

そしてそれを作っていた人たち。多くはただ金が欲しかっただけでスタートしたわけだけどやっぱり作ってるうちに映画への情熱が生まれていることがよく解る。最後には「なんか映画好きな人が本気で映画作ってたいい時代だったんだな~」と少しだけホロリと出来ます。

「ステロイド合衆国」


長男はデブ、次男はチビ、三男はバカ、と近所で馬鹿にされてきた3人兄弟。彼らのアイドルはハルク・ホーガン、スタローン、シュワルツネッガー。彼らは周りを見返すには「マッチョになればいい!」と思い、アメフトや重量挙げに明け暮れる。結果、長男はプロレスラー、三男はアメフト選手に。そして筋肉をつけるためにステロイドを使い出す。唯一、ステロイドを使わなかった次男がアメリカのステロイドの実態を探る。

とにかくアメリカ人は「でかく!強く!早い!」のが好き。ちなみにこの映画の現代は「Bigger! Stronger! Faster!(より大きく!より強く!より速く!」。そのためにもっとも効率がいいのが薬物。薬物を使った人が活躍してる。(シュワルツネッガーだってボディビルダー時代は使ってたと告白)

みんな使ってるんだから使わないほうがアホだ、とばかりみんなガンガン使ってる。異常に盛り上がった上腕二頭筋を見せびらかす人とか。

結局、観てて思うけど、このステロイド蔓延の裏側には「薬で治せば一番楽」という安易な考え方がある。

アメリカでは受験生が病院に行って「勉強に集中出来ない」と言えばすぐ薬が出る。眠るために睡眠薬、起きるために興奮剤…なんでも薬で解決しようとする。

「P.Sアイラブユー」という映画でハリー・コニック・ジュニアが「今はなんだって薬で治る時代なんだ。そのうち中東問題だって薬で治る」ってジョークを言っていたけど、そのジョークが笑えなくなる。

ドキュメンタリー自体は悲劇的(薬の副作用が出てる人もいる)なんだけどそれが生んでるのが(ひとまずは)筋肉ムキムキの人たちなんでユーモラスにすら見えてしまう反対側の怖さがあるね。

「ジーザス・キャンプ」


アメリカにいる福音派(聖書に書いてあるものがすべて真実、と信じる宗派)のドキュメント。

子供たち(3~10歳くらいかな)をサマーキャンプに集めて宗派の説明をする。

サマーキャンプだから楽しい音楽と楽しいダンス。しかし声を合わせて言わされるのは「進化論は間違っている」「中絶する者やゲイは神の罰を受ける」、、

子供たちに子宮内で命が生まれていく過程を見せる。そして中絶の様子をリアルに見せる。

こんなのをさー、多感な子供時代にがんがん教え込まれたらちょっとトラウマになってしまうよね。

僕は少し涙ぐみながら観た。やっぱりさ、子供達が可哀想だよ。

このキャンプの主催者を僕は絶対許さない。最初のインタビューでこんな風に答えてたんだよ。

「なぜイスラム教が強いのか。それは子供の頃から『アラーのために』と教え込んでいるからです。だから彼らは成長して自爆テロも恐れなくなります。我々もイスラム教に負けないよう子供達を利用すべきです」

はっきりこの人は言ったからね、「利用する」って。絶対許さないよ、僕は。

「アーミッシュ~禁欲教徒が快楽を試す時~」


「アーミッシュ」というのはキリスト教の宗教集団の一つ。アメリカに20万人くらいいるらしい。教義は禁欲主義と言われ、一切の快楽が許されていない。ドラッグはもちろん、酒・タバコもダメ。更には文明も否定しているので車とか電気もダメ。着るものも装飾がついているとダメなのでボタンがついているものは着ちゃダメ、離婚もダメ、歌もダンスもダメ、読書も聖書と聖書に関わる本以外は読んじゃダメ。

という人々なんだけど、16歳になると一度村から出て一人暮らしをすることが許される。

そしてその期間は何をしてもいい

車を運転してもいいし酒・タバコはもちろんドラッグもオーケー。映画もロックンロールも、もちろん恋愛も自由、それ以上も。

この期間を経て、子供達は俗世間で生きるかそれとも村に戻りアーミッシュになるか、を選ぶ。

あのね、僕自身はアーミッシュの人たちの話を聞いてもあまりにも禁欲的でそれが正しいとは思えない。でもアーミッシュの親たちがこういうことを言っていた。

「我々は"洗礼"を認めていない。信仰というものは誰かから強制されるものではなく、自分で選ぶべきものだ」

この言葉にはうーん、と唸ってしまった。

これの直前に「ジーザス・キャンプ」を観てたから更にね。ジーザス・キャンプのほうはめちゃくちゃ信仰を強制をしているんだもの。

この話だけ聞くと一見僕から観ると異常に思えるアーミッシュのほうがまともなことを言っている気がしてきて、もうよく解らなくなってくる。

「キムジョンギリア」


脱北者(北朝鮮から脱出してきた人々)のインタビューから明らかにする北朝鮮のリアルな姿。日本人はまぁ近い国だからある程度知識があるけど、アメリカではほとんど情報が無かったらしいね。ということでこの映画はかなりセンセーショナルだったみたい。

まず開始5分間で脱北者の人が北朝鮮の異常性、残酷な状況をただただリアルに語る。とにかく国を批判すればすぐに一族全員収容所行き。食料すら不足している北朝鮮に留まり続けることはとても辛いことだし、更に脱北だって命の危険がある。更にはその手配をする悪徳業者に騙されて脱北したのに体を売らされ続けた女性などもいる。

この時点で涙ぐんでしまうし「なんでこんな異常なことが起こってるんだろう?」とほんとに落ち込んでしまう。

ラスト、平壌で豪華なマスゲームが行われそれに手を振る笑顔の最高指導者の映像。

その映像を見て僕は生まれて初めて思った。

「ああ『反吐が出る』って言葉はこういう時に使うんだな」と。

「C.S.A」

奴隷解放を争点にアメリカ南部と北部が戦った南北戦争。結果、北軍である「U.S.A.」が勝ち奴隷は解放され、現代のアメリカ合衆国になった。しかし、もしこの時、南軍「C.S.A(Confederate States of America=アメリカ連合国)」が勝っていたら?というIF物。

ちょっとツイストされた構成になってて、CSAの歴史を追ったイギリス国営放送のドキュメントをCSA国内で放送している、ということなんで途中、CSA国内でのCMが入る(これ後述しますが絶品)。

CSAがどういう国になったかというと、まずリンカーンは戦争犯罪人として死刑。奴隷制度は続き、多くの黒人はカナダに逃亡。第二次世界大戦ではユダヤ人虐待のナチスと手を組みヒトラーがワシントンを訪問。日本に対して先制攻撃を行う。大戦後は奴隷解放をとなえるケネディが暗殺され、、などなどすごい世界に…。

この映画がすごいのは、途中CSAの歴史としていろいろな映像が出てくる。基本的には「フェイク・ドキュメンタリー」だから作られた映像がメインなんだけど、それに巧妙に本当の映像が混ぜられていること。

例えば逃亡した奴隷に何度も鞭を打つ映像があるけどそれは現実のもの。。。

すごく重いテーマだけど、やっぱりこういう事実があったことに目をつぶっちゃいけない。

ところで間に挟まれるCM。これはもちろんフィクションなんでトンデモないものもある。(例えば最先端のマイクロチップを搭載した奴隷逃亡防止用ブレスレットの通販CMとか…) なんだけど、最後にそのあたりのオチが付く。ここで見ているほうとしては「そうだったのか!」と気づく。ある意味「猿の惑星」並の衝撃。メタフィクションとして最高の出来。

「レリジュラス」


ビル・マーというコメディアンが各地の宗教家に話を聞きに行きそのすべてをおちょくる。一番シンボリックなシーンは「死んだら素晴らしい天国が待ってるんだ!」と熱弁をふるう人に対して「じゃあ今死ねば?」とおちょくるところ。

彼がおちょくるのはキリスト教(カトリック&プロテスタント)、ユダヤ教、イスラム教。これらの宗教の特徴は「みんな元々は同じ宗教」ということ。

たぶん、ビル・マーがそれらの熱狂的な信者達に聞きたいことは「大モトである旧約聖書の十戒に『汝、殺すなかれ』って書いてあるだろ?でもなんで宗教の名の下に戦争するの?」ってことなんじゃないかと思う。

「イエスメン」

お笑いテロリストであるイエスメンという二人組。彼は世界貿易機関(WTO)のオフィサーになりすまし各地でシンポジウムに参加する。(なんで一介のサラリーマンである彼らがそんなところ参加出来ちゃうのか良く分からないんだけど…それほとシンポジウム開催者のチェックは甘いのかな??) で、そこで大まじめにバカな発表をする。その発表と言うのが現実のWTOをおちょくってるんだけどね。

「ビン・ラディンを探せ!」


「スーパーサイズ・ミー」で30日間マクドナルドを食べ続けた男モーガン・スパーロックの彼女が妊娠(関係ないけどこの彼女、かわいいよね)。子供のためにも安全な所に引っ越さないと、と郊外に引っ越したはいいけどまだ不安。だっていつテロが起きるか解らない。

じゃあテロを無くすにはどうしたらいい?どうやらテロはビン・ラディンというやつが起こしてるらしい。よし、ビン・ラディンを見つけて捕まえれば世界は平和になり、子供の未来は安心だ! ということでビン・ラディンを探しに行く話。

バカだなー、と思うでしょ。でも見てると思うんだけどはっきり言ってアメリカが国を上げてやったことはこれとあんまり相違ないよね。フセインが悪いフセインを見つけて殺せば、、ビンラディンを見つけて殺せば、、世界は平和になる!みたいなこと言い続けてるじゃん。

スパーロックは中東に行くためにいろんな準備をする。たとえば防護術。中東テロリストばかりで、そこかしこに手榴弾が転がってるから手榴弾から身を守る方法とか。

でも当たり前のことだけど中東に行ったら普通の土地には普通の人がいて普通の笑顔がある。「手榴弾なんてどこにあるんだ?テロなんてどこにあるんだ?」と気づく。

中東で出会った人が言う。「アメリカのせいで戦争になった!アメリカが憎い!」

彼にスパーロックが尋ねる。「僕のことも憎い?」

彼は答える。「いや、あんたはいいヤツだ」

なんで個人個人だと仲良くなれるのに国対国だと戦争になっちゃうんだろうね?

「ビアポン」


これは面白い!笑える!この未公開映画祭の映画は結構重い内容が多い。人が亡くなったり。でもこの映画だけはまっーったく重いところは無い。

どういう映画かというとまず「ビアポン」というスポーツがあるんだって。昔、大学生が酒場で始めたスポーツ。

長テーブルの両端に二人1チームで向かいあいます。テーブルの両端にビールを入れた紙コップをおいておきます。交互にピンポン球を投げてそれに入れる。自分の陣地側のコップに入れたら相手の得点。相手のコップ全部にピンポン球を入れれば勝ち。狙って投げる、ということでダーツ的集中力勝負の競技。

これのスポーツが面白いのは2点。

1、常識の範囲内で相手を邪魔していい。つまりヤジを飛ばしても面白い格好して集中力を削いでもいい。男のチームは面白い扮装してたり女性チームはTバックでおしりふったり。
2、玉を入れられたカップに入っていたビールは飲まなきゃ行けない、という「酔えば酔うほど弱くなる」逆酔拳ルール。

ま、飲み屋の余興にはちょうどいいんだろうね。

で、このくだらないゲームの世界大会を開催しようと考えたバカがいる。この映画はその第二回ビアポン世界大会に青春をかける人々の汗と涙とビールの物語。

ビアポンのために仕事もせず毎日筋トレに励むチーム。パソコンにデータを入れ分析するチーム。彼らが情熱のかけるビアポンの先に何もないことは彼ら自身が分かってる。でも彼らはビアポン世界一の名誉のため人生をかける。

もうね、最高。バカで格好悪いことを真剣にやることってなんて格好いいんだろう。逆に泣けてくるよ。

時々、第一回チャンプ、カナディアンズの二人のインタビューが入るんだけど彼らのユニフォームが全裸にオムツ&ヨダレかけ!面白い格好のほうが相手の集中力を削げるからね。そんな格好で「ビアポンはスポーツだ」なんて言ってるのが最高に面白い。カナディアンズが写る度に吹き出した。

「いろんなスポーツがあるのは分かってる。でもいい大人がオムツ姿でプレイできる世界大会が他にあるか?」 うーん、名言。

気分が重くなったらビアポンは見るべきだと思うよ。

「アウトフォックスド」


ブッシュ政権下、アメリカで最大人気のニュースチャンネルとなった「FOXニュース」。「公平で中立」を宣伝文句にしているこのチャンネルがどれだけ「不公平で偏重」だったのか、を探るドキュメント。

このチャンネルでは「イラク戦争はすべて正しい」「ブッシュは素晴らしい」「ブッシュのおかげでアメリカの景気は良くなりつつけている」というニュースを流し続けた。第二次世界大戦下の大本営発表みたいだね。

FOXの流していた放送がいかに嘘ばっかりだったか、ということを内部で働いていた人の証言や実際に放映された映像を元に暴く。

ちなみにタイトルの「outfoxed」は「裏をかく、策略でだます」の「outfox」から。FOXがかかってるね。

なんでFOXニュースがこんなことをやるかというとそれが視聴率に繋がり儲かるから。「アメリカは常に正しい!常に強い!」ということを難しいこと抜きでニュースにしてるから何も考えたくない人には人気がある。

考えてみると日本のマスコミだっていつこんな状態に陥るか分からない。あれ?もう陥ってる??

「ウォルマート 激安の代償」

アメリカのナンバーワン小売店舗チェーン、ウォルマート。僕は良く知らないけどめちゃくちゃ安いんだって。(たとえば子供用自転車が1500円とか) その安さの裏に何があるのか、というドキュメント。

まずね、人件費にびっくりする。ウォルマートで働いている人の多くは正社員なのに生活保護を受けないとやっていけない。つまりさ、これって年収の一部を国に払わせているようなものだよね。なぜそこまでしてウォルマートで働かなくてはいけないか、というとウォルマートが町にどんと出来るとめちゃくちゃ安いのでその町の個人店は全部つぶれちゃうから。今まで何代も続いた小売店もウォルマートの安さには必ず店を閉めるしかない。閉めても働くところはウォルマートしかない。で、ウォルマートで働く。

更に入社する時に「予告無く解雇されても訴えません」という誓約書にサインをしないといけない。だから待遇改善のために労働組合とか作るとすぐに解雇されてしまう。

なんかこれって現代の奴隷制度のような気がするんだけど。。。




以上、ざーっと駆け足で紹介しました。しかしよう見たね、我ながら。

こういう風にいろんなドキュメンタリーを同時多発的に見ると、自分の価値観が磨かれる、っていう感覚が確かにあってやっぱり面白いなぁ。

そして思うことは「悲劇は喜劇の顔をしてやってくる」ということ。ステロイドが巻き起こす諸々の事件や、FOXニュースのめちゃくちゃっぷり、餓死者が出続けている北朝鮮での「今年は豊作」というニュース、ホントに大きな悲劇なんだけどそれでもタチの悪いジョークにしか思えない。。。やっぱりなんかこの世の中っておかしいね。

そして、そのおかしな世の中でも必死に、誇りを失わずに真っ当に生きてる人、たとえばそれはカシムやビアポンチャンピオンのカナディアンズ(ちょっと違うか)だったり、がいて、その人たちが映画に出てくると感動する、やっぱり。

おにぎりって割って食べます?

2011-06-07 23:44:25 | DVD、映画
数年前、暑い夏に上野公園の国立科学博物館前に「南極の温度を体験しよう」みたいな小屋があった。コンテナハウスですぐ移動出来そうなやつでね。

中に入ると南極大陸の温度、たぶんマイナス20度とか。夏には最高の企画でしたね。

何でか昔っから南極が好きなんだよなぁ。

たぶん始まりは学研漫画(僕らの世代は科学・歴史系知識はほぼこれから学んでるんじゃないかと思うけど)で読んだ「タロ・ジロ物語」。我々世代はこの話好きなはず。

あとはなんだろなー、よく覚えてないけどとにかく北極よりは断然南極派ですね。北極って言われると「フランケンシュタインの怪物が死んだとこだなー」と思っちゃうもん。あーでもホッキョクグマはかわいいか。

(ちなみにフランケンシュタインは怪物を作った医学生の名で怪物は名前ないです。フランケンシュタインが怪物の名前、というのはまつがい)

つーことでこういうDVDも見ました。

沖田修一
バンダイビジュアル
発売日:2010-02-23


映画公開時にたぶん「THIS IS IT」と重なってて見逃してました。

堺雅人が南極観測隊の料理人役。特に大きなドラマが起こるわけじゃないけどいいよー、出てくる食べ物が美味しそうでいい。

俳優人も堺雅人、生瀬勝久、嶋田久作、そしてきたろう、というなんつーか癖がある人たちばっかりでじっと見ちゃう。あと実は主人公の奥さん役の西田尚美は僕けっこう好き。

特にきたろう!アカデミー助演男優賞を差し上げたい。すばらしい!もう彼が写るだけで「ぷっ」って噴出しちゃうんだよね。

結局のところさ、人生において大事なことは「どんな状況でもメシちゃんと食えてるならいいよね」ってことだと思うんですよ。この映画、一言でまとめちゃうとそれしか言ってないと思う。

だけれども南極と言うロケーション(ロケ地はもちろん違うらしいけど、まぁいいじゃないですか)、と芸達者なおっさんたちのキャッキャッっぷり、そして美味しそうな料理の数々によって、そのメッセージだけで観られちゃいます。

特にこの映画における食材というか料理の選択が秀逸!なんですよ。はっきり言ってここまで「そうだよ!そのとおり!」と思える映画は稀です。

からあげ、ラーメン、カニ、ブリの照り焼き、おにぎり、豚汁、(おすましの時の料理としての)フランス料理。。。ことごとく我々日本人が「あ、そういう時ってこういうの食べたいよね」とか「こういうの食べたらそういう感じになるよね」と思うものばっかり。特にラーメン!使い方がすばらしいよ。

一度見終わって「あれ、カレー出てこなかったな」と思ってもう一度見直してみたらちゃんとあった。しかもあれは正しい。あのシーンはカレーじゃなきゃ。

この、食材の選択した人は圧倒的に正しい。本当によく分かってる。

はっきり言うけど伊丹十三監督の「タンポポ」以来の、真っ当に現代日本人の食文化を映画にした映画です。日本人がいつも味噌汁と納豆ばっかり食ってるわけじゃないんです。

この映画のフードコーディネーターは僕が好きな飯島奈美という人で、南極基地なんで決して豪華な食材にあふれているわけでもないんだけど几帳面な調理人(つまり堺雅人)が心を込めて作った感じが出てる。料理が並ぶ食卓がなんとも豪華でも質素でも無くただ「まじめ」って感じがする。決して堅苦しい「真面目」ってわけじゃなくてね。

ブリの照り焼きを皿に盛ったときに、ちょっと皿にこぼれたタレをちゃんと拭いて盛り付けるところとか、すごく「あ、まじめだー」と感じる。

あと「調理人としての気持ち」ね。これは特に男性で料理をよく作る人、特に誰かに食べてもらったことがある人はよーく分かると思う。「一番食べさせたい人に一番食べてもらいたい料理を作った時の、その一番食べさせたい人の反応を見る感じ」とかさー、これは堺雅人の演技力によるものが大きいんだろうけど。すばらしい。ドアを蹴るとことか「あーぐーら!」のせりふとかね。しかもその二つが出てくるのは南極行ってしばらく経ってみんなとの食卓が「日常」になった証拠なんだよなー。

こういう映画こそ僕は日本がもっと誇って世界に送り出して欲しい。

僕は一人で見ながらかなり涙がこぼれたし、下手したら声上げて泣きそうになりました。すばらしいですよ。爆発シーンもスーパーヒーローも出てこない、きったない(というと失礼だけど)おっさんたちがご飯食べてるだけです。でもここから何かを感じ取れるのが日本人でしょうよ。

おにぎり美味しそうだったなー。いいおっさん方がおにぎりと豚汁でいい笑顔するんだわー。もうなんかそのおにぎりに萌える。

文句はひとつだけ。カキ氷用のイチゴシロップ。あんな使い方僕は許しません。


ところでさ、おにぎり割って食べる人いますよね。ちょっとこう中の具を確認するかのようにして。僕は基本的には中身分からずともガブリと行きたい派。そもそも割って食べると両手ふさがっちゃうからおかずとか食べられなくなっちゃうじゃん。まぁ割って食べるきたろうがちょっとご飯こぼしちゃうところとか「こういう人いるよなー」って思えたけどね。

「Deus lo vult.」 - 神がそれを望んでおられる

2011-06-06 19:40:08 | 
「ローマ人の物語」を僕が読み続けているのはご存知のとおり。

このシリーズは元々単行本で15冊出版されている。まぁ1000年間くらいの話だからね、ロングシリーズ。

単行本だと場所も取るし値段も高いので僕は文庫本で揃えています。だいたい単行本1冊が文庫本3、4冊くらいになるので、15×3で文庫本でも45冊くらいになる。(たっぷりあるんで本棚の一番上に並べといたらこないだの地震で全部落ちてて大変だった)

文庫本のほうは年に一度9月ぐらいに刊行される。次の9月に最終刊「ローマ世界の終焉」が出て、文庫本シリーズ終了の予定。

とはいえ作者自身の単行本のほうもまだまだ出ていて、「ローマ人の物語」の後日談「ローマ無き後の地中海世界」という単行本が出てる。たぶんこれも同じ形態で文庫本になるだろうからそれ待ち。

そして現在、作者が5冊シリーズで出している単行本が十字軍の話。

ローマ帝国の成り立ちと終焉まで(紀元前40年くらいから紀元後480年)のあと、十字軍の話(紀元後1000年くらい)にというのは非常に楽しみ。僕自身は十字軍についてほとんど何も知らないからね。

ま、こちらも文庫本を待とうと思っているから読むのはかなり先だなー、と思ってたんだけどシリーズ第一作が図書館にあったのでつい借りちゃいました。

絵で見る十字軍物語絵で見る十字軍物語

この本は「十字軍シリーズ」の予告編的なもの。ドレという画家が描いた十字軍の物語の絵がメインで文はその解説。絵が大きめにで、細かいことは載っていないけどだいたいの流れを頭に入れるにはちょうどいい。

だいたいの主要登場人物も絵で見て分かるしね。隠者ピエール、サラディン、リチャード獅子心王なんかがキーパーソンだ、ということは分かった。「カノッサの屈辱」なんかも出てくるのかなぁー。


そして、この簡単な「予告編」だけを読んでも分かることは「神がそれを望んでおられる」を合言葉にしたこの戦いは終わりが見えないなぁ、と言うこと。

キリスト教側はイスラエルという聖地の奪還を「神がそれを望んでおられる」を合言葉に正義の戦いとした。一方、イスラム教側もこの戦いを聖戦(ジハード)と名づけた。

その結果、神が一番望むわけがない多くの戦いと人の死が繰り返されることになる。残念ながらそれは第一回十字軍から約1000年経った現代でも終わっていない。

ため息をつくしかない。

街場のマンガ論

2011-06-06 00:06:19 | 
あー、面白かったわー。

内田 樹
小学館
発売日:2010-10-04



内田樹の「街場の~」シリーズ。

第一章の「井上雄彦論」なんかはこれ完全にマンガ論ではなくて教育論ね。

『バカボンド』(宮本武蔵のマンガね)を例にとり「わけの分からないことを言う大人が複数人いる状態が子供に取って一番いい教育現場なのだ」という話が出てくる。

『バカボンド』読んだ人は覚えていると思うけど、主人公宮本武蔵の心の中であるとき柳生石舟斎、宝蔵院胤栄と言う二人の師(というかロールモデル)が出てくる。二人は超一流で、だからこそむにゃむにゃと勝手なことを言う。イメージとしてはよくマンガで心の中で悪魔と天使が言い争いをするけどそういう感じ。

この状態、複数のロールモデルがぜんぜん違うこと、場合によっては同じことを言っているんだけど違う言い方をしている、時こそ本当にその人が自分で考え、自分で答えを出す時なのだ、という話。

それなんて本当によく分かる。

明らかに正しい人が一人しかいなくてその人の言うことが正しいと思える時なんて自分は成長しない。いろんな人がいろんなことを言って、しかもそれがどうも「全部正しいなぁ」と思える時、初めて自分で考えるようになるもんね。

その他にも「少女マンガの四種類の音」なんかは面白かった。普通のマンガにある音、つまり紙面上に出てくる文字は3種類しかない。つまり「実際の音(口に出して言った言葉だったり周りの音だったり)」、「内なる声(つまり、考えていること)」、そして「擬態語」。少女マンガには更にもうひとつ加わる。それは「心の中に存在するけど本人自身それに気づいていない声」この4つ目の声を理解できる人は少女マンガを楽しめるけど、これが理解出来ない人は少女マンガを楽しめない。

なるほどねぇ。

その他、対アメリカとの関係から読み解くマンガ論なども面白いです。

マンガ好きな方は「へぇーなるほどー」と思えると思いますよ。

指導者としてのティベリウス

2011-06-02 22:58:56 | 
ふと思って僕が昔書いた「ローマ人列伝:ティベリウス伝」の一部を修正の上、転載。


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現在、イタリアの歴史の教科書にはこういう記述があるそうです。

「指導者に求められる資質は、次の五つである。知性。説得力。肉体上の耐久力。自己制御の能力。持続する意志。カエサルだけが、この全てを持っていた。」

指導者に必要なもの、について僕は何もわかりません。その五つと言われればそうなのかもしれません。

ただ僕は指導者として絶対に言ってはいけないこと、だけはおぼろげながら思っています。

それは、

「だったらお前がやってみろ」

です。

望んだ権力でなかったにせよ、それを言ってはおしまいではないですか。つまり、指導者は絶対に投げてはいけないのです。

辛ければ適当にお茶を濁してもいい、時には弱音を吐くこともあるでしょう。
しかし投げてしまうのは余りにも無責任じゃないですか。

人生は不本意なものです。あっち行けーと言われて行ってみたらこっちに来いと言われ、やれと言われたことをやろうと思ったらやるなと言われ。

確かにティベリウスの人生は不本意なものでした。司令官としての才能を持ちそれを十分に発揮しながら、なりたくも無い皇帝にさせられ。母からはいちいち政治に口を出され、愛した人とは別れさせられ、政略結婚させられた妻とは巧くいかず。

それどころか自分が何よりも愛し、全身全霊で尽くしたローマ市民からも蛇蝎のごとく嫌われました。

しかし彼はそれを受け入れました。彼は言われたことを言われた以上にやりました。不器用だったかもしれません。それでも皇帝としての責務を何一つ投げませんでした。それで充分じゃないですか。
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天運と人運

2011-06-01 22:18:07 | 仕事
続き。

結局なんでも『運』によるところが多い、じゃあどうやってその「運」を自分の目の前に転がしてくるか。

あくまで仕事上の運に限った話ですが。恋愛において、人生において、だったら僕だって教えて欲しい。

僕が考える仕事上の『運』には2種類ある。

ひとつは「天運」とも言うべきもの。正に偶然によるラッキー、たとえば「拾った宝くじで1億円当たりました」と言うもの。

仕事で言うと電車で隣に座ったおじさんが偶然、大企業の社長で「なんだか君はいい人そうだから君の商品ぜんぶ買ってあげよう」と言われる、みたいなそういうの。

こういう運がどうすれば来るのか、それは僕もよく分からない、すいませんね。

まぁ毎日がんばってればその天運は来るような気もするけど、時々さぼってる人にも来たりするからなぁ、こればっかりは分からない。

そしてもうひとつの『運』は『人運』とでも言うか「人がくれる運」。たとえば「あのお客さんすごくいいお客さんなんだけど、俺、行けないんだよなぁ代わりに誰行かせようか…」って時に「お前、ちょっと行って来いよ」と行かしてくれるとか。

こういう人運をもらえる人は強い。

じゃあどうやったらその運がもらえるか。

ちょっと寄り道して「新卒入社から3年間の仕事論」をします。最近、新卒社員と話すことが多いからそういう話をよくしているんです。

新卒一年目って言うのはサッカーで言うと何はともあれ「まず90分間、走り続けられるようになる」というのが一番大事。

いきなり社会人になって最初はたぶん前半で息切れしちゃう。周りはプロばっかり、敵だって弱いわけじゃない。そんなゲームにいきなり放り込まれたらまずはそのゲームに必死でついて行くことすら大変だろうと思う。だからまずはゴールを決められなくても、まったくボールにタッチ出来なくてもまずは90分走り続ける、そのための体力を付ける、ということが大事。「どうせ出たってボールに触れないんだから意味ないや」と腐ってる人は後々ろくな目に合わない。

90分走り続けられるようになったら連続してゲームに出続けること、つまり「体壊さないこと」が大事。

そしておそらく1年目にそれだけがんばっていると、2年目には少なくとも「ゲームの流れ」が見えてくるようになる。

「ああ、だいたいこの時間帯はここの人が忙しくなるんだよな、去年もそうだった。その次にはだいたいここの人手が足りなくなって…」と流れが見える。
ここで差がつく人は「気が利く人」。その「流れ」に応じて先に「気を利かす」ことが出来ればすばらしい2年目だよね。「あ、先輩、これ必要になると思って先にやっときましたよ」みたいなの。

で、3年目は、、という話の前に今回は『運』の話だから運の話に戻しますね。


ゲームメーカーの選手がパスを出そうとする、その時。

もちろん出す先としての最優先はエースストライカー。そのほうがゴールが決まる。でもエースにべったりマークがついてて出せそうも無い、自分でシュートを決めるにもゴールが遠い、そのときの選択肢はなんたって「一番走ってる奴」「一番ゲームが見えてる奴」そして、最後も大事なんだけど「一番パスもらいたがってる奴」。

ACミランの試合でインザーギなんか見てると本当にそう思う。彼なんてゴールの6割くらいはいわゆる「ごっつあん」で「目の前にボールが転がってきた」ってだけだけどやっぱり走ってるもん、パス欲しがってるもん。

つまり運の転がし方ってそういうことなんじゃないの?

そしてもしボールが目の前に転がってきたら大事なことは「格好悪くても決める」ってことだよね。何せインザーギは今までの全得点のうち5%は右足でも左足でも頭でもなく、「足のどこか」で取ってる。

(06/07CL決勝、対リバプール戦。ハンド疑惑もあったけどまぁとにかく決めた)

格好悪くても転がってきた運を何とかして決めればそれはもう運じゃなく実力になる。

そりゃそういう人には更にボールは転がってくるよ。

Non e vero?(そうじゃない?)