浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

深淵を覗くこと

2015-05-18 11:20:17 | 
「アクト・オブ・キリング」という映画を観ました。


(Amazonリンク→アクト・オブ・キリング[Blu-ray]

ちょっとすごい映画でしたね。。言葉を失うくらい。

たぶん衝撃度で言えば「カシム・ザ・ドリーム」を観た時以来。

インドネシアで起こった大虐殺について、その大虐殺を行った人たちにそれを再現ドラマとして演じてもらうというドキュメンタリー(なぜそんなことが起こっているのかについては非常に複雑な話なのでぜひ映画をご覧くださいませ)なんだけど、恐怖という意味で言えば「カシム・ザ・ドリーム」よりも怖かった。

虐殺を行った人たちは元々はダフ屋だとかストリート・ギャングだった。彼らは思想も無くただ儲けるためにそれを行った。

見ながら本当に恐ろしいと思ったことは「もし自分が彼らと同じ立場だったら、同じことをやっていたのではないか?」ということ。大虐殺事件から数十年経って、そのクーデターを行った人々が政府の中枢にいるので彼らはまったく罰されていない。むしろ町の名士として生活している。「何をやっても罰されない、むしろこれからの生活を保障される」と言われたら、彼らが再現している「残虐なこと」を自分もやったのではないか。

そう考えると本当に恐ろしい。


比べるのはちょっとどうかと思うけど、先日の大阪での住民投票。僕はもちろん東京から見ていたんだけど、少しだけ恐怖を感じた。もちろん住民投票自体にはまったく問題無いし地方自治について住民が決めるというのは素晴らしいことだと思う。

だけどたまにTwitterを見ると「ほんとうにこんなことが起こっているのか?」と感じたことがあった。賛成派・反対派どちらかがどちらかを誹謗中傷していたり。もちろんそれは一部なんだろうしそもそもTwitterなんてそんなもんだよ、と言われればそうだろう。

マスコミについても数十年かけて完全に信頼を失っているんだな、と感じた。ネットを見ていると誰もマスコミを信じていない。その是非はおいておくとして。

ふと僕はゲッペルスのことを思い出した。ゲッペルスというのは大二次世界大戦のころのナチス・ドイツの宣伝大臣。「プロパガンダの天才」と言われ様々なものを活用してプロパガンダを行った。大衆を扇動し刺激的な言葉と宣伝で誘導した。

なぜ思い出したか、と言うともちろん大阪をあの時のドイツと比べたいわけじゃない。そんなの大阪にとって失礼だと思う。

思い出したのは「もし自分が賛成/反対どちらかにいたらゲッペルスみたいなことを嬉々として行っていたかも知れない」と思ったから。

ゲッペルスほどのスケールではないけど、僕の仕事だってある種、人の考えを操る、と言ってしまうと語弊があるかも知れないけど、人の考えにまつわることではある。

法に反することはもちろんやってないけど、どうやって商品を宣伝するかとかどうしたら効果的に売れるか、ということはもちろん考えている。それが仕事だし。そしてそういう仕事、好きだし楽しくやっている。

もし僕が大阪にいて今回の投票にまつわる仕事をしていたらもう楽しくて楽しくてジュルジュルよだれを垂らさんばかりにプロパガンダの仕事をしていたかも知れない。

三国志とか戦国時代とか幕末物を読んでても僕が「ああ、面白いなぁ」と思うのは戦いそのものよりもそれにまつわる駆け引きだからね。

もしかして戦時中になったら、、、僕はそこでもプロパガンダの仕事を何も疑問も持たず、いやむしろ楽しんで、やってしまうかも知れない。

そう考えると「アクト・オブ・キリング」で描かれた、「楽しんでやった人々」、更に「それを自慢気に語る人々」を僕は「これはひどい、こんなの自分は絶対やらない。これは自分とは違う人達だ」とは言い切れない。

ニーチェはこういう言葉を残している。

「怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。」

India Pale Ale

2015-05-14 16:34:25 | 食べ物
アメリカでWidmer IPAのトリコになってからすっかりIPA無しでは生きられない体になってしまった。

改めて書いておくと、IPAというのはビールの種類の名前。日本のビールのほとんど、つまりサッポロ黒ラベル、サントリープレミアムモルツ、一番搾り、スーパードライ、とにかくだいたいは「ピルスナー」というビールの種類。

それからギネス黒ビールなんかは「スタウト」という種類。

その中間辺りにあるのがIndia Pale Ale、略してIPA。これがどういう味かというのはなかなか言葉で説明するのが難しいんだけど、香りが強くて飲み終わったあとにフッとした麦芽の香りが残る。これがたまらないんですね。

先日、仙台で食事した時に「クラフトマン」という地ビール専門店を見つけた。

(外観写真で申し訳ないですが)

ちなみに「地ビール」は英語で言うと「クラフト・ビア」なんだと思う。名前のとおり全国各地の地ビールが30種類くらい生で飲めて食べ物も美味しい。

「IPA!IPA!」と飲みまくって大変幸せでございました。

で、ここ数日、東京は暖かいというより汗ばむくらいの陽気が続いていて「ああ、こういう時には夕方の明るいうちからIPAが飲みたいなぁ」と思って検索していたらその「クラフトマン」という店は東京にもあるのを見つけた。

もーう、早く言ってよ~。

ということで仕事も早々に切り上げ伺う。

店内はおしゃれな感じ。奥にはテラス席もあるようで夏にはいいだろうね。

まずはサンプラー(お試しセット)でIPA3種。

長野(ヤッホーブルーイングインドの青鬼)、新潟(スワン・レイクビール#B-IPA)、鹿児島(城山ブルワリー万咲IPA)。やっぱね、これですよ。

3種類の中では新潟のが良かったのでそれをもう一杯いただく。なに?東北の牡蠣フライがある?ヨコセヨコセ。

ということでカキフライとIPA。

返す刀で自家製ベーコンのグリル(とIPA)


ああ、幸せ~。