漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

物語シリーズ

2012年10月25日 | 読書録


「物語シリーズ」 西尾維新著
講談社BOX 講談社刊

を読んだ。面白い。

 シリーズとして一纏めにしてしまったけれども、正確には「化物語(上下)」「傷物語」「偽物語(上下)」「猫物語(黒)」「猫物語(白)」「傾物語」「花物語」「囮物語」「鬼物語」「恋物語」の12冊。シリーズとしては、ファーストシーズンとセカンドシーズンを全て読んだということになる。ライトノベルとはいえ、二段組で厚みもあるので、かなりのボリュームだった。読み応えがあったといっていいくらい。現在では、さらにサードシーズンの一作目「憑物語」が出ているが、それはまだ未読。予定ではあと二冊でシリーズが完結する予定らしい。
 ライトノベルももういいかな、と思っていたのだけれども、中高生に人気があるらしい(娘から聞いた)このシリーズの第一作「化物語」をちょっと読み始めて、そのまま勢いで12冊読んでしまった。読んでよかったと思う。「ライトノベル」というジャンルの代表的作品のひとつとして、このシリーズを挙げてもいいんじゃないかとさえ思った。ライトノベルの持つ下世話なくだらなさとをその先へと向かう可能性を、まとめて持っている作品として。さすがに、「ユリイカ」で特集されたこともある著者の代表作のひとつだけはある。
 そんなに面白かったのか、と言われれば、誰にでも勧められるものではないよなぁ、少なくともいい大人が喜んで読むには恥ずかしさを伴う本だよねぇ、としか言えない。ファーストシーズンなんて、小説というよりも「萌え漫才」の台本、あるいは(やったことがないから想像だが)ギャルゲ―のシナリオを読んでいるみたいだったし、拒否反応を示す人も多いはず。だけど、なんだろう、ぼくはそんなに嫌な感じがしなかった(偽物語で、一度挫折しかかったけれども)。セカンドシーズンには、時折町田康を思わせる文体も現れるし、登場人物がメタフィクション的な発言を平気でするし、その割には伏線がきちんと張られているし、なんだかのびのびと書かれた小説だなあと思った。読める小説は読めるし、読めない小説は読めない。本が好きな人なら、そんな感覚は絶対にあると思うが、そういう意味では、このシリーズはぼくには「読める小説」だった。文体も、悪くないんじゃないか。まあ、もしかしたら関西人には親しみの持てる語り口だったということにすぎないのかもしれないけれども。
 このシリーズは、「化物語」から「猫物語(黒)」までがファーストシーズン、「猫物語(白)」から「恋物語」までがセカンドシーズンということになっている。印象としては、ファーストシーズンがアウトサイド、セカンドシーズンがインサイドという感じ。時系列はバラバラで、作者はどの順番で読んでもかまわないといっているらしいが、やっぱり発表順で読むべきだろう。そうでなければ楽しめない部分(メタフィクション的な部分など)がたくさんあるように思う。