「人間の土地」 サン=テグジュベリ著 堀口大學訳
新潮文庫 新潮社刊
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アン・モロウ・リンドバーグの「海からの贈り物」などと並んで、座右の書になりうる一冊。著作権が切れたため、最近「星の王子さま」が新訳であちらこちらから出ていたが、この本こそ新訳で出版されるべきだ。十代で読みたかった本だと思ったが、今読んでも十分姿勢を正される。真っ直ぐに、人間が人間でとして世界に対峙するということを、詩のような文章で語りかけてくる。
この書の最後では、人が人による圧力に打ちひしがれている姿を描き出している。これは、現代の我々にも常に傍にある風景だ。
小林多喜二の「蟹工船」が、ワーキングプアと呼ばれる若者たちの間で売れている、という話を耳にした。言わずと知れた、日本のプロレタリア文学の金字塔である。著者の小林多喜二は、1933年、思想犯として特別高等警察による拷問によって惨殺された。だが、その文学と言葉は、今に至るまでしっかりと生き続けているということだろう。
この勢いに乗って、ジャック・ロンドンの一連のプロレタリア文学が再評価されないかと、僕はちょっと考えたりする。