さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

相手の意のまま、流れのままでは 中嶋一輝、ドヘニーにTKO負け

2023-07-01 00:03:34 | 関東ボクシング



ということで一昨日のLemino配信、残りの試合感想など。


メインでは中嶋一輝が、元IBF王者TJドヘニーと対戦。
中嶋にとり、世界的に名のある初めての相手、いわばチャレンジマッチ、という意味合いかと思ったが、WBOアジアパシフィックのタイトルマッチだと、見ていて初めて知りました。
というより、そうか、中嶋がこのタイトルを持っているんだなあ、とぼんやり思い出した感じでもあり。


予想としては、いくらなんでも衰えもあろう、そして最近は負けも多いドヘニーに対し、中嶋が一発撃ち込みやカウンターを狙いすぎず、スピードとテンポを上げて先行すれば、その後で強打を生かせる展開が作れるだろう、と思っていました。


しかし立ち上がり、ドヘニーが圧をかけて出ると、元々「引き込み癖」のある中嶋、手数は出さずに引いて見て、という構えに。
ドヘニーはベテランの嫌なビジーファイトを回避出来て、落ち着いた立ち上がり。あくまで自分のペースで「城攻め」という風。

もちろん強打の中嶋が、それに自信を持っているのは良いですが、元王者のベテランが押し立てた「意」のままの展開を簡単に受け容れ、まるでいつでも当てて効かせて倒せるから、細かいことは良い、という感じで立ち上がるのを見て、こんなことで大丈夫なのかなあ、と一気に不安が募るスタートでした。


中嶋は左カウンターを打つが、当然というか、単発。カウンターとは基本的に、そういうものでしかあり得ない。
ドヘニーは少ない手数で済む展開の中、フェイント入れながら、ボディジャブを散らし、左のクロス、肩越しに。

2回、ドヘニーはクリンチのさなか、良いところに右フック当てる。 
ドヘニーの楽なリズムに、中嶋が合わせてしまっている。そのこと自体に少し苛立っているか。

3回、中嶋の左、右フック、ヒットがある。ドヘニー、ワンツー返すが外される。
しかし、ならばとボディジャブ、続いて低い姿勢から右を突き上げ、左は出さずに止める。
何でも良いから当てる、触れることで、中嶋が気持ちよく打てるリズムを封じている。
この辺は年の功というか、冷静。


ここまでは、中嶋の闘い方はどうもいただけないと思いつつ、一発の威力はやはり違うし、ドヘニーのごまかし、やりすごしがどこまで続くか、その均衡が崩れるとしたら、それは中嶋の方に傾く展開なのだろう...と、ぼんやり思っていました。


しかし4回、ドヘニーがダブルジャブで入って、ワンツーをクリーンヒット。何の変哲もない攻撃に見えたが、巧く間合いを変えたということか。
何しろ言えるのは、中嶋が基本、受け身だから、相手に色々な攻め方をされてしまうということ。
自分から右のリードを頑張って突いて、そこから次へと繋げる、能動的な試合運びをしていないから、ドヘニーの作る流れの上で、全部話が進んでしまう、というか。


そのうち、中嶋の右フック迎え打ちをしのいだドヘニー、クリンチの際に左アッパー、フックを内から外から、当てる。
続いてドヘニーのワンツー。中嶋も打ち返し、打ち合うが、ドヘニーの左アッパー、フックでぐらつき、さらに追撃されてダウン。
見ていて唐突に感じたが、どこかでダメージを受けていた模様。解説の亀海喜寛によると、耳の辺りを打たれたダメージだろう、とのことでしたが。

中嶋立ったが、ドヘニー、ロープに詰めて猛攻。それこそ普段、ミット打ちでやっているような「詰め」の連打。
左フックが入り、返しの右フックも決まり、中嶋二度目のダウン。ダメージ深く、レフェリーが止めました。


試合後の実況は、勝ったドヘニーを「試合巧者」と表現していましたが、確かにドヘニーは巧者なれど、中嶋の闘い方があまりにも拙い、損なことばかりやっている、と感じもしました。
単に一発のパンチ力、それに年齢や体力など、中嶋がまさっている部分はあるのに、ドヘニーに不都合な展開とは何か、やって嫌がることは何か、ということを考えて闘っているようには見えませんでした。
また、それが最初から何も出来ないような、そこまで劣勢の力関係でもないはずなのに、とも。



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アンダーは、帝拳の小川寛樹と、大橋ジムの田中湧也という、大手ジムの若手ホープ対決が注目でした。
地味な展開ではありましたが、締めた構えから、パンチも動作もコンパクトな小川が、質の差を見せて判定勝ち。

相手の正面に立ち、遠回りの右でなく、近い軌道で打てる左ジャブリードを押し立てる対サウスポー戦略。
無闇に手応えを欲しがらず、右を打つときは、左で崩して「ルート」を作り、そこから入っていって、きちんと間を詰めてから打つ。
田中の左カウンターを上回るヒットを重ね、ペース掌握していく小川のボクシングは、見どころがありました。
その堅実さが少し揺らぎ、田中の好打が増えた最終回だけが、唯一、キャリアの浅さを感じさせた回でした。


こういうカード、時々ありますが、これからもどんどん組んでいってほしいです。
何せB級デビューする選手なのだから、このくらいの試合が当たり前でないと、新人王戦の上を行く、という意味合いがなくなってしまいますので。



あと、あまり強くないタイ人がふたり出ていました。石井武志はライトフライ級での試合でも強打を見せましたが、力の差は歴然。
さらに、デビュー戦の山崎裕生の相手に至っては、力どうこうではない。ボクサーとしての耐性が極めて低くて、危険を感じました。

替え玉事件がまた話題になっていて、もちろん問題は多々あるのでしょうが、言えば替え玉ではなく、ボクサーライセンスも持っている「本人」が素人同然の耐性しかない、というパターンもまた、同等に悪質で危険なんではないか、と思ったりもします。形式上は問題無いわけですから、余計に。
まあ、この手の話を始めると、それこそ夜が明けてしまいます。それくらい、過去には色々と凄いものを見てきましたしね。



あと、気になったのは場内の客入りです。
南側の席、ごそっと人が居ない。シートのオレンジ色が目にも眩しい。空席だらけ。
発表は800人強、という数字でしたが、何しろカメラワークにも限界があり、しっかりと不入りが視認出来てしまいました。

試合を配信で見られるようになったこと、チケット価格の高騰、物価高、井上尚弥への人気(=チケット購買の動向)集中、カード自体の評判、国内・地域タイトルの重複による価値下落、色々要因はありそうですが...何しろ、場内が閑散としているものを、ネット配信媒体がいつまでも相手にしてくれるわけはありません。
いつもいつも、4大タイトルマッチを組むわけにもいきませんし、この辺り、根本から見直す必要があるだろう、と思った次第です。




コメント (6)
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