さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

「一本化」のカードを組む意義、ここにあり 福永亮次、中川健太をTKO

2020-12-14 22:38:19 | 関東ボクシング




昨日のWOWOWオンデマンドに比べれば、マイナー、と表現せざるを得ないBoxingRaiseのライブ配信ですが、中谷、ベルデホ戦に続いて、ライブで見られて本当に良かった、と言える試合を、先ほど見終えました。
スーパーフライ級の日本チャンピオン、中川健太と、WBOアジアパシフィック王者、福永亮次が、空位のOPBF王座決定戦も兼ねて戦う「三冠統一戦」という名目の試合でした。


共にベテランというべき年齢、サウスポー、しかし一打必倒の強打を持つ者同士。
そして、試合ぶりが真正直で、あまりベテランらしくない。
色々と似ている者の闘いは、予想以上の大激戦となりました。


初回、福永が右リードを強めに突いて仕掛けていく。中川は見て立った印象。
2回もほぼ同じ、中川は少ないながら左を繰り出すが、主導権支配で福永か。
この辺までは、わりと静かな感じ。中川の自重気味?と見えるスタートが、彼に向いた闘い方なのか、若干の疑問あり、でしたが。


試合前のコールで「リトル・パッキャオ」とニックネームをコールされた福永は、心なしか髪型も「寄せ」ている感じ。
そしてパッキャオばりに思い切りよく左を振る。

が、より効果的だったのが、上だけでなくボディにも強めに突き立てる、右ジャブのリードパンチ。
このパンチが、時に中川を止め、時にスリーパンチの端緒となる。
そして3回、福永の左クロスが中川をぐらつかせる前にも、このパンチがよく出ていました。

続く4回、福永が攻め、中川は左のヒットで反撃開始、と思ったところに、福永の右フックが決まり、中川ダウン。
中川、序盤から飛ばす福永の失速を見越した、抑え気味の前半かと思っていたが、そうだとしたら計算が完全に狂ったことでしょう。


5回から中川が奮起。ぐいぐい出て、時に足を止め加減で打ち合いに。
6回も同様だが、福永の方がまだスピードでまさっている。左を決めて出る中川がポイントを取ったと見るが、福永を抑えるには至らず。
7回、さらに出る中川に、福永がボディへ左右の連打を送る。合間の右リードも冴え、中川の方が失速気味。

8回は俗に言う「ビッグラウンド」。福永が右リードからスリーパンチ。中川が左クロス決め、右返し。
中川、半ば捨て身、さらに左をヒット。しかし福永の左がカウンターで決まり、追撃。10-8もあるか、という回。

9回、福永の右ジャブで中川がぐらつくが、中川左を打ち返す。福永、両手上げてアピール。
福永のワンツーで中川、ロープ際へ下がる。
両者疲れとダメージでさすがに失速、共にきつそう。しかし懸命に狙い合い、打ち合う。死闘の様相。
ことに、まともに打たれ続けている中川が心配になってくる。そのタフネスには感嘆しますが。

10回、中川が脅威の粘り。左クロス、右フック返しを繰り返して攻勢。
福永もガードがすぐ落ちてしまう状態で、続けてヒットを喫していたが、左を食ったあと、すぐに返した左が決まり、中川がよろめくと、レフェリーがストップ。
大激戦の末、福永がTKO勝ちとなりました。



過去に数多く、世界のタイトルホルダーを出したクラスですが、それ故にというべきか、国内レベルでの好カード実現よりも「避け合い」が目につく、という印象も残る、それが日本の115ポンド級でした。
かつて「保留選手」制度というものがあったとき、日本タイトルに挑戦しない、という位置付けの選手が7人も8人もいたくらいで、さすがに呆れかえったものです。
まあ、あくまで印象に過ぎないだろう...と言われればそうですが、そういう話で収まらないと思ったのも事実ですし、このような「構図」は、何もこのクラスに限った話でもありません。

今回、昨今のご時世を受けて、国内の上位対決が増えた趨勢の中、ベテランの域に入る両者のカードが実現しました。
とはいえ、このクラスから次に世界を伺う選手が出るとしても、この一試合だけではなく、今回の勝者と、今後浮上してくるであろう、新たな世代のホープとの対決を待たねばならないだろう、と思ったりもしていて、タイトル一本化の三冠戦、というお題目も、申し訳ないが聞き流す、という感じでした。


しかし、実際にリングの上で繰り広げられた、両者の果敢、懸命そのものの闘いぶりは、なるほどさらに上の、世界云々という話をすれば不足はあれど、国内最上位の王者を決める、タイトル一本化の試合というものを本当に組むと、これだけ見どころのある試合になるのだ、という好例として、もっと多くの目に触れて欲しいと、心底から思えるような試合でした。

この試合、その勝者の栄誉を飾るのに、三本ものベルトは必要ない。
国内における、真の王者ひとりを決める試合が、当たり前のこととして行われ、それが常態化していれば、ベルトは黒革の一本だけで足りるし、その一本のベルトの価値は、何処に出しても恥じない、輝かしいものであり得るはず、です。

そんな思いが、けっして間違いでは無いのだ、と思わせてくれた熱戦でした。
福永亮次、中川健太の両者に、その「健闘」に、心から拍手し、脱帽したい気持ちです。



...いや本当に、この試合見られただけでも、BoxingRaise視聴料980円はお得ですよ(^^)
セミの岡田博喜、富岡樹戦も熱戦でしたし。小田貴博は無念でしたが、普通の名前で闘えて良かった。
こちらも改めて、入ってて良かったBoxingRaise、と心底から思った次第です、ハイ。



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ということで、一曲。
サカナクション “aoi” です。









コメント (2)
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