エディ・ハーン率いるマッチルームが、京口紘人と契約した、との報。驚きました。
所属選手の試合はDAZNで配信されているので、おそらく京口もそうなるのでしょう。
村田諒太や井上尚弥とは違い、日本のTV局にとり、京口の試合は高視聴率を見込めるものではない現実があり、それ故にこういう話にもなったのでしょうね。
本人がYouTuberとして活動し、知名度を上げ、自身のチャンネルで試合を配信をしようとしていた(コロナに阻まれましたが)ことなども、プロボクサーとして彼が様々な道を拓き、現状を打破するための努力だったのでしょう。
それが、こういう形で結実した、と言えるのかもしれません。
マッチルームやDAZNにしてみれば、WBSSを通じて直にその実力を見た井上尚弥を「獲得」出来れば何よりで、おそらく何らかのアプローチもあったはずです。
しかし、先のマロニー戦について、大橋秀行がさもトップランクが100万ドルの報酬を出したかのようなコメントをしていたものの、実際は日本のTV局がもたらす利益込みの話なのでしょうし、それを無視できるはずもありません。
そこで色々「調整」が必要な井上(ないしは村田)は、全てを独占し、月額料金の枠に押し込めたいDAZNにとり、難しい対象だったのでしょう。
DAZNは軽量級でもエルウィン・ソトやフリオ・セサール・マルチネス、ティト・アコスタに、Sフライの両巨頭などを抱えているし、最近になって配信する国の数が増えたこともあり、軽量級のマーケットにも、抜かりなく目配りをしているのでは、と思います。
仮に日本で、井上尚弥の試合がDAZNでしか見られない(或いはAmazonプライム、またはNETFLIXなど)となれば大ごとですし、実際そうなったら面白いだろうなあ、という気もしますが、このあたり、既得権益が鉄壁の防御を誇る我が国、そういうことは起こっていません。
で、そういうプロテクトから外れているが、実力のある選手を、となれば、思い当たる数人の中で、上位に位置するひとりが京口だったわけですね。
大晦日の結果待ちですが、今後、田中恒成にも同様のことが起こって欲しいと思ったりもします。
彼の場合、全国区のスターになれるか、という、その才能からすれば、地べたを這い回るような話が語られていますが、やはり地方ナショナリズムの壁といいますか、その地域性、所属ジムと地元TV局を筆頭にした様々な誼に縛られている面があります。
しかし今度勝てば4階級制覇でもあり、もうそろそろ「フリー」な状況を与えてほしい、もう「奉公」は済んだでしょう、と、傍目には思えてなりませんね。
他にも同様に、国際的な舞台で闘う機会を得られれば、と思う選手はいます。
問題は、そういう場に立つまでに、キャリアの一番良い時期を捧げて、その後に...というのでは遅い、というところですかね。
もっとも、あの内山高志のように、ついにその時が訪れなかった例の方が、圧倒的に多いのですが。
京口が今回の契約を経て、どのような形で活動していくものか、情報がないので何とも言えませんが、まずはタノンサック戦、そして大きな試合へと進むことになるのでしょう。
その過程で、シビアな状況、対戦相手との闘いに勝ち抜いていかねばならない。
これまでとは、判断基準が一段上がるわけです。
にもかかわらず、ちょっとやそっとのことでは、桁外れに巨額の報酬があるわけでもないでしょう。
軽量級のグローバル・スタンダード、その報酬の水準は、けっして高いものではありませんし。
これまでの、TVコンテンツとして評価を得られない状況に比べれば良い、という程度でしょう。
しかし、傍目からすれば、甘い話ではないが、新たに道を切り拓き、そこで「勝負」をする京口紘人の姿を見られることは、幸いの一語です。
そして、想像ですが京口紘人本人にとっても、ボクサーとしての本懐がそこにある、という気持ちなのではないでしょうか。
そして、彼の今後が、日本ボクシング界の今後を大きく変える可能性もある、とも思います。
井上や村田、井岡に田中と、置かれた状況は様々ながら、国内でそれぞれに価値を認められたが故に、身ひとつで動けない部分もある選手とはまた違った「普通」の選手が、開かれた世界に打って出て、そこで得られるものは何なのか。
そこに是非「好例」を残してもらえたら、と思います。
それが、何かと旧弊蔓延る日本のボクシング界を、さらに大きく変えるきっかけになるのではないのか、と。
京口紘人の今後に、大いに期待します。
================
ということで、一曲。
BBHF “Torch” です。