さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

劇的勝利も本人は「この先」を見ていた 中谷正義、大逆転KO勝ちで再起

2020-12-13 18:14:59 | 海外ボクシング



ということで、今日は朝からDAZN、昼からWOWOWオンデマンドでライブ配信二本立ての一日でした。
とりあえずWOWOWの方、中谷正義vsフェリックス・ベルデホ戦から、簡単に感想です...と、落ち着いて語れるような試合ではありませんでした。


初回、ベルデホが、強烈なワンツーでダウンを奪う。
懐深い中谷の作る距離をものともせず、というか、むしろその空間があることで、カウンターやリターンの際に見せる巧さ、鋭さ、意外性を存分に発揮した感あり。
中谷はダメージを隠したか堪えたか、逆にボディに強打を決めて追撃を食い止める。

2回は五分五分の感じ「競った回」だったが、その後は苦しく、3回を落とし、4回は打っていったところに、ベルデホのコンパクトな右カウンター。
膝を落としかけて、ダウンの宣告を受ける。
5、6回と中谷は単発でボディのヒット、右も出すが、その度ベルデホが複数のパンチをリターン。失点を重ねる。

中谷のパンチも、単発ながら鋭いものの、ダウン二度も含めてポイントは大差、という流れ。
ベルデホの方は、大量リードながら楽な様子ではなく、中谷の体格やボディへの攻撃などによる圧力を受けて、むしろ苦しげな様子でさえあったが、中谷のリーチから遠ざかりつつ、来たらリターン返すという流れを作っていて、これをひっくり返すのは容易ではない、という印象。
7回に入ったとき、残り4つ全部取っても勝てない、倒さないと無理だが、さすがに難しいだろう、と諦めつつ見ていました。


その7回、ベルデホのヒットがあった直後に、中谷はワンツーを決め、即座に追撃の連打。
この試合、初めてと言っていい、まとまった攻勢で、クリアに抑える。
ベルデホの右カウンター狙いが怖かった展開ながら、中谷の方も同じような右のカウンターを狙う場面も増えてくる。

8回、その右が相打ちのタイミングでベルデホの頭部をかすめ、ベルデホがたたらを踏むが、直後に中谷の右を外したベルデホの、ジャブのような左がカウンターになり、今度は中谷が一瞬、ぐらりとバランスを失う。
レベルの高い攻防が続く試合が、ここにきて、さらにスリルの匂いを纏い始める。お互いに「ただ者ではない」ことが証された場面。
ポイントは微妙な回だが、もうこうなるとポイント云々ではない。

続く9回、早々に中谷のワンツー。ベルデホが右返すが、中谷の右がよりインサイドを通り、アゴをかすめたように見えた。
ベルデホ後方によろめき、中立コーナーに背中から当たる。ダウン裁定もあり?と思う場面だが、レフェリーはスルー。
ベルデホ堪えて、左のヒット応酬のあとも粘るが、中谷は顔を腫らしながらもぐいぐい出て、圧力をかけていく。

中谷が左のジャブ(ヒット)、右クロス(頭部をかすめる)、左ボディアッパー(視認できませんでしたが、おそらくヒット)、そして左フック上へのダブルと続けた後、左ジャブをカウンター気味に決めると、ベルデホがロープに叩きつけられるようにダウン。
糸の切れた人形のような様のベルデホ、なんとか立つが、もう余計でした。右を被せられて倒れ、レフェリーが即座に止めました。


世界ライト級の上位クラスといえるランカー同士による、熾烈な攻防は、それぞれのスタイル、持ち味が存分に出た末に、より「タフ」な方が勝つ、という結果になりました。
普通に、傍目の立場で見ていても、世界中どこに出しても通るレベルの試合でしたが、その一方が、かつてカリブの英雄として一世を風靡したフェリックス・トリニダードの再来と謳われた元ホープであり、それを破ったのが、日本最強のライト級である。
一昔前なら、夢物語のような試合です。しかし中谷正義は、それを現実にやってのけました。

しかも、見ているこちらが半ば勝利を諦めてしまうような、これ以上悪い展開はない、と思うような試合をひっくり返す、大逆転KO勝ちです。
一昨年のテオフィモ・ロペス戦に続く、世界ライト級上位相手との二試合におけるこの内容と結果で、中谷正義は世界ライト級のトップシーンにおいて、重要キャストとしての地位を確立したのではないでしょうか。
今日一日の話に限っても、エドガー・ベルランガ、シャクール・スティーブンソンという、トップランク社お抱えのスター候補に挟まれてのベガス再登場、そして再起戦の舞台において、中谷正義はこのふたりにも負けない、ことによると上回る脚光を浴びたと言えそうです。



今回の試合については、以前も少し書きましたが、とにかく中谷という希有な人材が、その可能性を閉ざされることなく、再び闘えることがまず、何よりも嬉しく思えることでした。
正直言って、この試合に勝ってその先がああでこうで、と夢見る、というところまで、気持ちが届いていなかったというか、追いついていなかったというか。

しかし試合後、テオフィモ・ロペスへの雪辱を口にする、思いの外、冷静な中谷の姿を見て、当たり前のことながら、本人はその心中に、未来への情熱を秘めて再び起ったのだなあ、と気づかされました。
中谷正義の今後に期待...というより、本人がしかと見据えている「この先」を、我々も見られるのだ、見せてもらえるのだ、という喜びが、心中に溢れています。
本当に見事な勝利でした。脱帽、そして拍手です。



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寺地拳四朗や京口紘人にとり、今後最大の脅威になるかと目されるジェシー・ロドリゲスの試合、トップランク公式のハイライトがありましたんで、ご紹介しておきます。
この相手、確か拳四朗とフルラウンド闘った選手ですが、これだけではなんかもう...という感じです。








以前WOWOWで試合が放送されたのを見て、おお、これはなかなか上等な、と感心したものです。
今日のオンデマンド配信には入らないみたいだが、明日のWOWOWライブ放送枠には入るかも、と思ってたんですが、メインでシャクール君が、対サウスポー戦の目慣らしにフルラウンドを費やす我が儘を通したもので、おそらく放送する時間がないだろう、と思い、一応貼ることとします。
ベルランガはきっちり、いつも通りの仕事ぶりだったんですが...いや、これはこれで「いつも通り」なのか。

それはさておき、このご時世、来日して試合するのも難儀なので、おそらく狙いはIBFかWBOになるんでしょうが、帝拳の息がかかっている(というと禍々しいですね、契約選手だそうです)こともあり、コロナが収まったら、日本のリングでも見たいものですね。



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ということで、一曲。
LAMP IN TERREN 「キャラバン」。








コメント (4)
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