さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

結果はおいて、違和感ありの大差判定 ロペス、ロマチェンコに判定勝ち

2020-10-18 17:41:23 | 海外ボクシング



ということで、世界ライト級タイトルマッチ、生中継を見終えました。
細かいとこまで書いておこう、と思う試合内容と判定でした。まずは経過から。



リングに上がった時点で、テオフィモ・ロペスはうっすらと汗をかいている。
ワシル・ロマチェンコは涼しげな様子。

初回、ロペスがスタートダッシュをかけるのかと思ったが、速い左から入り、しっかり構え、じりじりと圧す。
対するロマチェンコ、偵察か観察か情報収集か、何しろホントに手を出さない。
ロペスは「荒し」「乱し」の手で、強打狙いに出る、という想像とは違う立ち上がり。
ロマチェンコが見ていると同時に、ロペスの方もロマチェンコをしっかりと見ている。意外な感じ。
この回ロペス。というか、ロマチェンコにはつけようがない回。

2回、ロマチェンコ左ショートのダブル。速いスリーパンチ。
ヒットの場面が二度あり、それ以外は丁寧に芯を外している。ロマチェンコ。

3回、ロペスの左フック、ボディブロー2発。浅いがヒットもあるように。右アッパーから左フック返しも出る。
ロマチェンコ、右フックリードから入ってヒットも。微妙だがロペスに振る。

4回、ロマチェンコの右リード、ヒットも数があまりに少ない。
ロペス、無理に出ず、左リードの速さで脅かす。ヒットがあるにせよ浅いのが僅かに、というところ。
これまた微妙だがロペス。

5回、ロペス右ロングで脅かし、ボディへ連打を送る。ロマチェンコ、ジャブとワンツー浅い。
ロペスのボディブローの力感と、主導権を握っている点を見て、ロペス。

6回、ロペスの左フックにロマチェンコ左リターン、速いが軽い。
ロペス、右アッパーから右ショート狙う。ロマチェンコ右ジャブ。攻勢をとってややロペスか。

7回、ロペスの右がロマチェンコのガードを巻いてヒット。
相殺に来るロマチェンコを、カウンターの右アッパーでも脅かす。
ロマチェンコ右フック、ボディをリターンするが、ヒット、攻勢でロペス。

8回、前の回をクリアに取られたという認識か、ロマチェンコが出始める。
左ヒットに続いてアタマも当てる。この辺、らしくもなく不細工。
両者パンチの交換になり、ロマチェンコ左ダブル、揉み合いになっても左を打ち続ける。
ロペスのワンツー、右アッパー鋭いがロマチェンコ外し、連打で攻勢。クリアにロマチェンコの回。

9回、ロマチェンコ右ボディに対し、ロペスの右アッパー。
ロマチェンコ出て、コンパクトな左右連打。ロマチェンコ。

10回、少しアタマが気になるが、ロマチェンコ出て、右フックでリード、ワンツーも。
ロペス右ストレート鋭いが、ロマチェンコは出ている割りには食わない。流石。
ラスト30、両者打ち合い。ロペスの右がローブローに。ロマチェンコ。

11回、ロマチェンコ、ショートの連打。返しの右フック振り下ろし、ボディも好打。
お得意の「終盤、忘れた頃にボディ打ち」が出る。
しかしロペスもボディにヒットを返し、ロマチェンコの追撃を食い止める。全体はロマチェンコ。
 
12回、ロマチェンコは逃げ切りという余裕はなく、最後も「抑え」にかかる風。
右フックリードで入り、ボディ攻撃、左ストレート。「詰めた」攻防共に巧さがある。
しかしロペス、際どいタイミングも怖れず、上下の連打。やっと「らしい」ところが見えた後、右ボディ。
ロマチェンコまた食い止められ、少し足が伸び加減に。
ロペス、詰めた距離で脅かす。最後右瞼カット。ロマチェンコの回。




ということで、さうぽん採点は114-114のドロー。
前半、微妙な回を全部ロペスにしたことも含め、ちょっとロペスに甘いかな、と思いつつ、判定を聞いたら、119とか、117とかいう数字。
この内容でロマチェンコの大差勝ちになるのか、今の採点はそういうものなのだなあ、自分の見方はもう古いのか...と思ったら、逆でした。
これはこれで驚きでしたが。


鮮明な映像を様々なアングルで見るのと、リングサイドから見上げるジャッジの採点が一致しないというのは、競った試合では当然、あることです。
仮に一方が、3分間で一発だけリードパンチを当て、相手のパンチを二十発外したとて、それが必ずしもポイントになるとは限らない。
有効打か攻勢か、となると、ルール上は有効打を採る、それはそうなんですが、ロマチェンコの軽いヒットより、ロペスが放つ力感あるボディブローが「かすめた」方を採る、という見方もあり得るでしょう。
また、その場合、攻勢はロペスの方が取っている場合が多かったはずです。


そういう細かいところの積み重ねが、このような「結果」に結びついた。
そして、その結果は、究極技巧を謳われる王者に対し、派手なことも無理なこともせず、バランスを乱さずに対峙し続けた、テオフィモ・ロペスの持つ「確かさ」故に、出たものでした。

もっと打っていきたい、という場面もきっとあったはずですが、しっかり構えて左リードで追いつつ、右アッパーの迎え撃ちも用意し、間が空けばボディストレートを伸ばして、ロマチェンコを遠ざけ、「旋回」からの攻撃を封鎖するという、地味な「タスク」をしっかりこなす。
終盤、攻勢に出たロマチェンコに対し劣勢となるも、ボディブローによってダメージを与えるなどして凌ぎきった。

その闘いぶりは、こちらの勝手な想像...ある程度、ではなく、それ以上に無理な、無茶な仕掛けをもって「パンチャーズ・チャンス」に賭けるしかないのでは、という想像を覆す、冷静にして沈着なものでした。
採点がどうというのを抜きにして、内容的に「健闘」だったと思います。



対して、王座陥落となったロマチェンコですが...何しろ相手は最強の挑戦者、何もかも好き勝手にやって勝つというわけにはいかない、という前提をもって見れば、何も悲観するような内容でもなかった、とは思います。
ただ、上記した、採点基準と「現実」の乖離を一切無視したような発想で、ポイントの優勢を信じていたのだとしたら、その判断は結果としてミスだったし、もし劣勢、ないしは互角に近いと見ていたのなら、反転攻勢に出るのが少し遅い、という印象でした。

そしてそれが、単なる判断ミスなのか、コロナによるブランクや、年齢による衰えやその他の問題なのか、体格面の不利もあってのことか...どう見るべきか、色々と迷うところではあります。
今後はおそらく、判定への不満を表明して再戦へ向かうのでしょうが、スタイルが今からがらりと変わるわけでもない以上、どのように今日の試合を省みるのか、それが彼の今後を決めるのでしょうね。



と、細かいことをあれこれと書いておいてナニですが、今日の試合が9対3とか、11対1やとか言われると、さすがに「どういうこっちゃ」と言いたくもなります。
両者が試合前、というか、以前から語ったり、噂されていた、この試合後の身の振り方、階級の選択を含めた活動方針などからするに、こういう結果が、ある立場の人々にとっては望ましい、ということなのでしょうか?
そんな勘ぐりをしてしまうほど、最初から決まっていたかのような数字だと思ってしまいます。いくらなんでもなあ...と。


試合としては「地味系」ではありましたが、生中継だったことも含め、緊張感をもって見られる12ラウンズではあったと思います。
もっと派手なことが起こって、はっきりと白黒ついていれば幸いだったでしょうが、スペクタクルを「企図」出来ないこともまた、ボクシングの、ある部分の価値を証明している、ということで、今日のところは収めるべき、なのかもしれません。


とはいえ、やはりすんなり腑に落ちる「まとめ」にはなりませんね。
この試合で、片方が119...ウソでっしゃろ、と...。



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ということで、一曲。
THE BRICK'S TONE 「ビジネスが蠢く」。









コメント (6)
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