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感想:小説「ドキドキ!プリキュア」

2024年09月16日 | 小説版プリキュア
てっきり立ち消えたのかと思われた講談社キャラクター文庫さんから、まさかの続刊が出ました。ありがたい。

■小説「ドキドキ!プリキュア」


小説 ドキドキ!プリキュア [ 山口 亮太 ]

ドキプリを貫くキーフレーズ「幸せの王子」。
困っている人がいる。だから王子は助ける。
でもそうやって助け続けたら、王子は疲弊していずれ倒れる。犠牲になったツバメたちと共に。

これへの本編の回答は、人々が立ち上がること。
文化祭の一件然り。最終決戦の混乱を協力し合って乗り越え、プリキュアの救援に駆けつけようとしたあの時然り。

マナさんは特徴的に「人に手取り足取り教える」ことをしない方です。
幸せの王子は宝石をばらまく。魚を与えるのではなく、魚の取り方を教えよ…とは逆の思想。
今必要なのは直接的な助けであって、悠長に構えている余裕はない。

この思想は、人々が自発的に立ち上がるかが肝で、実際に本編では立ち上がってくれたのですが、事はそれだけではやっぱり上手くいかない。
ジコチューが人間に潜む以上、人々にも悪意は存在する。幸せの王子にとっては天敵です。
しかも幸せの王子は、所詮は一つの町の守護者でしかない。よその町にも困っている人はいる。

人造プリキュアや対プリキュア兵器、果ては人々からの悪意や際限のない現実に、プリキュアさんが屈するのはなかなかに辛い。
物理的に破壊される変身玩具、危険性から自主規制を迫られる追加玩具等々。
「敵を浄化すれば原状復帰する」と割り切って戦った結果、倒せなかったので破壊が元に戻らないとか。

かつてのトランプ王国がそうだったように、プリキュアだけでは世界を救えない。

ただ悪意や困難の渦巻く中、立ち上がってくれる人たちももちろんいる。
四葉兄の行動方針はまさに「私たちも立ち上がろう」です。警部さん他、奮戦する方々もいる。
最終的に決定打となったのも、人造クリスタル。作った人々すら紛い物と認識していたそれが、戦局を決めた。

四葉兄がマナさんに突き付けた「世界中で困ってる人がいるのに、君は何をやってるのか」。
相田マナがいかに頑張ろうと、覚悟を決めてツバメを使い潰そうと、王子一人では世界は救えない。

その幸せの王子の限界への回答は、本編よりも具体的かつ抽象的にもう一歩先でした。
キュアハートの活躍に胸を震わせた人々から生まれた、5000人のプリキュアが舞い降りる。

全人類でいえば0.0001%未満のささやかな覚醒ですが、元の5人からは1000倍です。
新たな5000人の幸せの王子が、ツバメや人々を信じて宝石をばらまき、その中からまた王子が現れるラブリンクの輪。

とても読み応えのある、ドキプリの正統続編でした。

【マナさん】
極めてハイスペックな印象と、パルテノンモードの圧倒的な美しさから、最強プリキュアにも挙げられるマナさん。
この考えを根本から改めました。

マナさん自身は何でもできる超人ではなく、むしろかなりの弱さを抱えてる。
ただそれでも彼女は幸せの王子たらんとして、必死に奮い立って強くあり続けた。

思えば本編でも「意外に弱い」のがドキプリの特徴でした。ボロボロになっていく幸せの王子を、傍観してちゃだめだった。

パルテノンモードも「強い!格好いい!すごい!」だけではなく、「私もああなろう」まで思える人になりたい。あの5000人のプリキュアのように。

幸せの王子から降りることができたラストは、とても清々しく、ここからマナさん本来の物語が始まるのかなとも感じました。

(なぜ「パルテノン(処女神アテナの神殿)」なのか?は長年の謎でした。劇場版のエンゲージとは対極にある。あれはもしや、究極的な個人の選択である結婚が許されない(私人ではなく公人として戦う)的な意味だったのかも。もしそうなら、ある意味でダークプリキュア的なニュアンスだったのかもしれない)

【本編の回収と未来】
繰り出されまくる本編設定のツッコミどころの回収の嵐が凄まじい。
ドキプリさんの裏設定をちゃんと追い切れておらず、初出かどうかは分からないのですが、本編のフォローをしつつ、物語にも組み込まれていて爽快でした。

設定だけの存在だった四葉兄の他、謎の敵幹部ゴーマとルストも遂に登場。

ドキプリさんの敵は、いわゆる邪悪な悪党ではない。ジコチューなだけです。
七つの大罪の皆様は人間の負の根源ですから、価値観は通じるものがある。
かといって当然仲間でもなく、えげつない攻撃もかなりしてくる。この独特の距離感が、小説でも発揮されてた。
リーヴァたちまで出てくるとは、正直全く予想しなかったな…。いや確かに7人勢ぞろいは凄く良いから、とても嬉しい。

トランプ王国のプリキュアさんも登場なされた。

キュアデュース
キュアケイト
キュアサイス

デュース(2)、ケイト(4)、サイス(6)。
エース(1)が亜久里さんなので、他にトレイ(3)さんとシンク(5)さんもいらっしゃるんだろうか。
(どこまで本気か分かりませんが、キュアシンクは山口亮太さんのTwitterで発言されたことがある)

5000人のプリキュアの内、名前が出たのは3名。

キュアキスリング
キュアテスラ
キュアクラベス

クラベスは楽器…なんだろうか。
キスリングとテスラは何だろう。モイズ・キスリングとニコラ・テスラ?

(なお読むまで全く考えもしませんでしたが、男子プリキュアが登場する可能性もあったのか。「彼女たち」と表記されているので男子がいるとは明確にはされていない。

男子プリキュアの是非はともかく、せっかくの続編のクライマックスを「男子プリキュア登場!」と雑に評されるのは残念なので、わざわざ扱わないのは正解だと思う

【いつもの皆様と未来】
オノマトペまこぴー可愛い。エースショットの影響を受けたんだろうか。

そしてまこぴーの初恋。素晴らしい。

ぽこぴーなんていない。あれは異文化で馴染みがないし、危機的状況で余裕がなかったせいだ。
と主張し続けて10年。肉食獣なまこぴーが見られて大変に満足です。
こういう「二次創作でやったら袋叩きにあいそう」なのを公式が描いてくれるの、とても嬉しい。続編の醍醐味。
二次創作広しといえど、「ありすの姉になろうとする、まこぴー」なんてネタ、思いついた人いるんだろうか。

(お葬式のシーンはそれでいいのかと若干思いましたが、妙に口が悪かったりするのもドキプリの特徴だなと思い返してみた。なかなか王女様を探してくれないとか、あの辺り)

ジョナサンと亜久里&レジーナの微妙な関係に踏み込んでくれたのも良かった。
全く全然興味なしと回答はされたものの、その後の描写を見ると、亜久里さんはもしかしてもしかするのかもしれない。
キュアジョーカーにもジョー岡田リスペクトを感じます。
ジョナサンは亜久里やレジーナを、アン王女と同一視はしないと思うし、なまじ由来が由来なだけに却って断固として拒否されそうな気はしますが…。

レジーナ様は普段は目が青い。ジコチュー状態の時は赤になる。
片割れのエースは、常に目が赤。故にエースの方がジコチュー度が高い。
というネタが当時ありましたが、今回の亜久里&レジーナおよびキュアジョーカーはちょっとそんな気配がした。

亜久里さんの誕生日について、妙に丁寧に記述がありました。
公式的には5月30日も提唱するが、ただこれまでのファンの慣習を尊重して12月1日。ということなのかしら。
(5月30日は、亜久里役の釘宮理恵さんの誕生日)

兄が重要ポジションで登場した他、鈍器で戦うロゼッタさん。
一人称で獅子奮迅の活躍を成された菱川さん。各人が活躍の場があって、読みごたえが凄まじかった。

いやもう過去の回収と未来の切り開き方が素晴らしくて、この1冊でドキプリも一気に未来に進みました。ありがとうございます。
このシリーズは是非継続して欲しいです。

【蛇足】
人参回の人が、「嘘情報である」ことを示唆するような場面で登場しました。わざわざ、きゅぴらっぱまでして。
この場面の意図が分からない。丸ごと削除しても全く問題なく話がつながる。

「かぐや姫」かタケノコに思い入れがあって一言書きたかった、亜久里さんの誕生日説に7月7日があり(?)それを否定したかった、特に意味はないが何となく筆が進んだ?
個人的に人参回は、堆肥を手で扱うことを推奨する等々かなりの疑問を抱いているので、「嘘情報」とセットで登場したことを勝手に深読みしたくはなった。
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