非国民通信

ノーモア・コイズミ

何故こんな人を起用したんだよ

2010-11-23 01:00:43 | ニュース

法相?えーっ何で俺が…柳田法相の発言要旨(読売新聞)

 柳田法相が14日に広島市で開かれた法相就任を祝う会合での発言要旨は次の通り。

 「9月17日(の内閣改造の際)新幹線の中に電話があって、『おい、やれ』と。何をやるんですかといったら、法相といって、『えーっ』ていったんですが、何で俺がと。皆さんも、『何で柳田さんが法相』と理解に苦しんでいるんじゃないかと思うが、一番理解できなかったのは私です。私は、この20年近い間、実は法務関係は1回も触れたことはない。触れたことがない私が法相なので多くのみなさんから激励と心配をいただいた」

 「法相とはいいですね。二つ覚えておけばいいんですから。『個別の事案についてはお答えを差し控えます』と。これはいい文句ですよ。これを使う。これがいいんです。分からなかったらこれを言う。これで、だいぶ切り抜けて参りましたけど、実際の問題なんですよ。しゃべれない。『法と証拠に基づいて、適切にやっております』。この二つなんですよ。まあ、何回使ったことか。使うたびに、野党からは責められ。政治家としての答えじゃないとさんざん怒られている。ただ、法相が法を犯してしゃべることはできないという当たり前の話。法を守って私は答弁している」

 結局、辞任することになった柳田法相に関しては就任時にちょっと触れたことがあるのですが(参考)、本当に何で柳田氏が法相に決まったんでしょうね。法曹出身でもなければ法学部卒ですらない人物を敢えて法相に起用するからには、それなりに理由があってしかるべきものと思われます。しかるに有権者にとっても理由の不明な人選であるだけではなく、当の柳田氏にしてさえ理解に苦しむ人事だったようです。まぁ、そこはボロを出さないように表面を取り繕うのが普通の政治家というものですが、この柳田氏は森元総理と同様に思ったことを軽々しく口に出すタイプなのでしょう。そして森元総理がそうであったように、失言の連発であらゆる方面から顰蹙を買うわけです。

 前任の千葉法相が社会党出身であまり人気がなかった分、今度は逆に民社党出身の右派色が強い人を選ぼうという意図もあったのではと当初は思われたのですが、今にしてみると単に党内派閥のバランス取りでしかなかったように見えてきます。先日のエントリでも触れたように、国民の大半は自分が生きてきた時代の政治すら忘れている人が大半です。民社党という右派政党が存在したことなんて覚えている人はほとんどいない、そんな中で旧民社の人間を起用したところで自称中道の右派層から歓迎されることはないわけです。そうなると、後はもう本人の適正か党内のパワーバランスかという問題になってしまう、そして本人の適性が皆無であることが露わとなった今では、要するに「旧民社グループにも大臣の椅子を」という理由に沿った人事であろうと推測するほかありません。

 結局、この柳田法相が得意気に語る逃げの答弁にせよ、おそらくは派閥調整でしかない人選にせよ、野党時代には民主党もさんざん批判してきた自民党のやり方と何も変わらないことを示すものです。多数派を占める政党が変わっただけで、やっていることは何も変わっていません。これがサラリーマンの世界なら、意に沿わぬ起用でも何とか切り抜けようとするのは頷けるところですけれど、特別な職業である政治家がこれでいいはずがないのです。政治主導などと猛々しく掲げながら、実際は野党からの質問をかわして自分の身を守るだけしか脳のない人物にポストを与える、たぶん民主党の語る政治主導とやらは、単に官僚を忌み嫌う心さえあれば済むものなのでしょう。

 子ども手当とか、あるいは麻生内閣時代の定額給付に関して「狙いがはっきりしない」と何度か当ブログでは指摘してきました。その政策が何を意図したものであるか、それによって評価の指針も変われば取捨選択すべき要素も変わってくるものですが(たとえば「農業」を保護したいのか「農家」を保護したいのか、それだけでもやるべきことは全く変わってきます)、しばしば狙いのはっきりしないまま政策なり人選なりが決定されてしまうわけです。政治の透明性云々といった類は世間のウケが良いところですけれど、ならば閣僚起用の意図ぐらい国民に公開してはいかがでしょうかね。曲がりなりにも国会での議論を通じて決められることならいざ知らず、与党の専決事項である閣僚人事ともなれば、ある意味で完全な密室の中で決められてきたと言えます。このブラックボックスの中身を公開する試みぐらい、あっても良さそうな気がします。菅は何を狙って柳田を起用したのか、その意図は達成されたのか、それくらいは問われるべきです。

 

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2 コメント

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この内閣…適材自体がいないと思われます (こっぱなお役人(北のほう))
2010-11-24 00:14:36
と絶望的なことを言いたくはないですが、
内閣広報(つまり、方針を国民に分かりやすく説明する)担当の官房長官にその場理屈の仙石先生(弁護士)、情報を扱って対外関係を行う外務大臣には前原(情報音痴)、国の財布を握る財務大臣にはどケチ野田、行政の問題点を把握しその問題点解決を図る行政改革担当に「人寄大熊猫(人を襲います)」連鈁、国土の整備を行い陸海運を司る国土交通大臣には前任者の意向そのままに馬渕と…書いていて鬱になってきた…
というか今「名大臣」といわれるような人は全部(与野党供というのが悲しいですが)パージされて人材がいない中国三国末期の呉の様相が出てきている気がします。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-11-25 00:06:47
>こっぱなお役人(北のほう)さん

 根本的に政治家にロクなのがいなくなっている気がしますね。昔は選挙に強いタイプとは別に政治力のあるタイプがいたはずが、小選挙区制度で選挙に強いタイプばかりが重用されるようになったところもあるでしょうか。政治力よりも猛々しく周囲を煽り立てる能力の方が、有権者からは評価されるところでもありますし……
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