大阪府の橋下徹知事は6日、北朝鮮のミサイル発射問題に関連して、「北朝鮮以外の国に住んでいる北朝鮮籍の人が、厳しく今の体制について、批判していかなければならないと思う」と述べた。府庁内で記者団の質問に応えた。
同知事は「北朝鮮の中にいる国民は声を上げられない」と指摘。日本などに住む「北朝鮮籍の人」たちが、現在の国内の情勢や、国際的なポジションを冷静に認識し、体制を変える努力をすべきだとの見解を示した。
でも南アフリカのアパルトヘイトを終わらせたのは、何があろうと国内に止まり続けたネルソン・マンデラであって国外在住の南アフリカ国籍保有者ではなかったわけです。北朝鮮の政治体制そのものは先日の発射実験の有無にかかわらず非難に値するものですが、国外に居住する「国籍保有者」の批判が意味を持つような状況にあるとはとても思えません。日本在住の北朝鮮籍保有者が北朝鮮政府に対して何らかの影響力を行使しうる、そうした権限を与えられているのなら話は別ですが、それ以前に北朝鮮籍による外国人登録すら現行の制度上は認められていないわけで……
状況によって、何が容易で何が困難かは変わってきます。甲子園の1塁側で読売を応援するのは難しいでしょうが、3塁側なら簡単なことです。逆に、阪神を応援することの方に困難があるかも知れません。同様に北朝鮮国内で金正日体制を批判するのは極めてリスクの高いことですが、日本国内で北朝鮮を批判するのは実に容易です。むしろ、批判しないことの方が勇気の要ることではないでしょうか?
北朝鮮のような独裁国家と日本のように反北朝鮮一色に染まった国家では、北朝鮮を批判するという行為は同じでも、その意味するところは異なります。それは一方では危険を伴う行為ですが、もう一方では危険から身を守るため、周囲に同調する行為とも言えるでしょう。「北朝鮮政府」と「北朝鮮国民」を同一視する習慣のある社会では、往々にして在日「朝鮮人」も北朝鮮政府と同じ様な視線を注がれるものですが、そうした中で謂われなき非難をかわすためにはどうすべきでしょうか? 周囲と一緒になって、あるいは先頭に立って北朝鮮を批判することで、自分は北朝鮮ではなく日本の側に立っていると、そう周囲にアピールすることが否応なしに求められます。聖母子像を踏むことで「自分はキリシタンではない」と示すように、北朝鮮をこれ見よがしに非難することで「我々は北朝鮮政府に同調するものではない」と宣言しなければならないわけです。そうしないと「狩り」の対象にされてしまいますから。
そもそも私には思われるのですが、「朝鮮籍(≠北朝鮮国籍)」の人にとって北朝鮮の国情はどの程度まで重要なのでしょうか。そりゃ、全く縁もゆかりもない国ではないかも知れませんが、たいていの人にとってより大事なのは、「今」自分が住んでいる国であり、将来も住むであろう国です。単に日本国籍が与えられていないだけで実質的には日本に根ざしている人々にとっては、北朝鮮をどうにかするよりも自分の住む日本をどうにかすることの方が優先課題でしょう。そこで、何となく北朝鮮に関係のありそうな「籍」を持っているからというだけで「北朝鮮の体制を批判せよ」と言われても、あまり気乗りはしないような気がします。
確かに、初めに結果ありきでしょうね。実際の言動や行動を見て態度を決めるというのであれば、今のような関係はなかったでしょうから。
>助詞厨学二年生さん
そこはそれ、法律論よりも世論を楯にしたごり押しを好む御方ですし……
>BR-Sさん
ある意味では、耳をふさいで悦に入っているのは日本も同じ様なものですから。外交上は意味のないことを、国内の住人に強いて「何か」をやった気分になる、自分の頭の中に響く声しか聞こえていないのでしょう。
>河豚公国(かわぶたこうこく)
これ以上レイシストに発言機会は与えませんので、悪しからず。
それから、新風とか麻生とかあなたとその同類が「漢字に弱い」のは周知のことですが、ここではフリガナなど振らなくて結構です。我々はあなたとは違うんです。
日本で生まれて故郷でもなければ、そもそも大して関心もない
そんな風に考えていても、黙っていると日本社会からあらぬ疑い(↑のヤスジみたいな)をかけられてしまうので、仕方なく非難をしてみせている
声の大きい、過激な主張をする人ほど、実際のところはそんなものなのかもしれない
(黒や白の街宣車に乗っている人とか)
…何の支援も無いどころか両手足を縛り付けておいて、「圧制国家と戦え」とけしかけているのだからこれほど酷い話もありません
芋畑の件で見せた知事の「悪徳弁護士スキル」に照らし合わせれば、法的に非難されるスジ合いのない「ロケット」にチャン付けするのはかーなーり難しい気もします。
欧米列強の支配が大日本帝国の支配に変わっても意味がなかったように、問題のある政権が打倒されても、その次に来るもの次第では尚更、状況が悪くなってしまいますからね。反イラクの政治難民、反キューバの元キューバ特権階級にアメリカ政府は肩入れしますが、その「支援」を受けることが吉と出るとは限らない、日本と北朝鮮の場合もそうでしょう。もっとも、「肩入れ」する段階にすら至っていないので、その心配をするのは気が早すぎるかも知れませんが。
>kuronekoさん
マイク・ホンダ議員をネット世論がどう受け止めているかを見れば、結果は予想が付きますね。
>不備さん
偶々の単身赴任で大阪を離れているだけならいざ知らず、他の地域に完全に移っている人からすれば尚更ですよね。そんな責任まで押しつけられてもいい迷惑ですが、マイノリティを狙って押しつけることで差別者側の歓心でも買おうというのでしょうか。
>とおるさん
まぁ、脅威を煽る一方で実際は安全である、特に備えなど必要ないことを心得た上での発言なのかも知れません。外に向けてのメッセージではなく、あくまで内向きの、府民向けのパフォーマンスとしての発言のような気がします。外交的な影響力は皆無でも、この手の発言を歓迎する人は少なくないでしょうから。
>Bill McCrearyさん
何も出来ないのがわかっていながら、何かせよと迫るわけですが、そうすることで何も出来ない「朝鮮籍」の人々に社会的な非難の目を向けようという意図もあるのかも知れませんね。公務員叩きの次は、いよいよレイシズムに訴える、その可能性すら漂ってきた気がします。
>大木銀太郎さん
詳細なご解説ありがとうございます。仰るように「朝鮮籍」≠「北朝鮮国籍」ではない、「北朝鮮籍の人」など日本には存在しないわけですが、それを敢えて無視したのが橋下発言なのですよね。一方で「朝鮮籍」=「北朝鮮国籍」とみなす誤解があり、その偏見を煽ろうとした発言でもあるでしょう。有権者の誤解を解くのではなく、有権者の誤解を煽る、その手法は今まで公務員に対して実行してきたことですが、その対象は公務員に止まらず、諸々に広がるであろうことが予測されます。
>ヤスジさん
あなたのような無知と偏見を恥じない人がいるからこそ、こうした橋下発言が出てくるのですよ。「陰湿ないじめ」は存在しますが、その加害者は日本社会そのものでしょうに。
>大阪府民さん
ついこの間も、府庁の移転案が否決された際「(何でも自分の意見が通れば)北朝鮮になるところだった」という風なことを言っていましたね。北朝鮮を目指していたんじゃないのか?と。
「お前がようゆうわ」
これが大阪府民である私の意見ですわ
表向き北を批判するとあれこれ陰湿ないじめがあるんでしょ
独裁国家の下請け機関ですから
腹に思っても言えないわけで
橋下知事(早稲田出身弁護士、一応世間的にはインテリの政治家)のトンチンカンぶりにまず要注意です。
そもそも「在日」に北朝鮮籍なぞ存在しません。国交もないのに国籍があるわけないじゃないですか。在日朝鮮人の外国人登録の国籍欄にある「朝鮮」とは国名ではなく、戦前の、もっと言えば植民地時代の「地方名」です。
法的には「難民」扱いです。これは終戦後、吉田茂の排外政策(表向きは講和条約成立後の処置)で一律朝鮮半島出身の「日本人」になされた在日外国人政策が原点です。
ある日突然難民にされた大半の在日は、自分の積極的意思で65年の日韓条約以降に「韓国籍」に変えたり(正確には届け出)、煩雑な手続きを経て帰化して「日本籍」を「取りなおしたり」したわけです。
一方で今だ朝鮮半島では「冷戦」は終わっていません。当然在日社会にも「冷戦」は終わっていません。ですから、安易に外国人登録が「朝鮮」であるから北朝鮮支持という言説は「風説」としては可能です。
ですが、上記の通りの事実を踏まえれば、
「国民としての国籍論」には在日は当てはまりません。北朝鮮籍などハナから日本では存在しないし、韓国籍や日本籍は、主体的に存在するというより、歴史的には他律的な、ある意味、踏み絵的存在でもありました。韓国も長く独裁国家でしたから。
本人の意思に関係なく日本人にされ、本人の意思に関係なく「朝鮮人」に戻され、不便なら今度は本人の意思で「韓国人」か「日本人」になればいい、という権力に対する抵抗が「朝鮮」にこだわる大半の人の本音だったでしょう。
これらの事は専門家でもない私が本で勉強した浅学な事柄ですが、少なくとも在日が一番多く住んでる大阪の首長が、しかも法律の専門家がこの程度の認識もないというのは絶句です。
最後に今なお解決されない歪んだ在日の歴史を象徴する一件として「鄭大世」の例を確認しておきます。
鄭大世は、在日韓国人でJ・りーがーですが、現在北朝鮮の国家代表のストライカーです。
彼の、「自分は韓国籍だけど、学校を総連系で出ているので親しみやすさから、代表は北朝鮮で」、という希望は、すんなり韓国サッカー協会も日本サッカー協会も認めました。
少なくとも橋下知事よりは、在日に国籍を問うことの矛盾と複雑な歴史背景を日本や韓国のサッカー協会は知っているわけです。
ていいますか、管理人さんもご指摘の通り、朝鮮籍の人が北朝鮮国籍を保持しているわけではありませんので(北朝鮮の国籍法ではともかく、日本は北朝鮮と国交がなく大使館や領事館もない以上、そういう話になります)、話の前提から問題があります。
今はともかく、かつては北朝鮮を支持するわけではないにしても、韓国の軍事独裁政権を嫌って朝鮮籍にしていた人も少なくなかったはずです。そういったことも考えないとね。このくだりは、apemanさんからご教示いただきました。
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20090407/p1#c
と言うか、内政干渉と取られるような微妙な話題を公職が軽々しく口にしないで欲しいと思うんですが。
ネットウヨ等のように、本当に北朝鮮を脅威と思っているなら、こんな挑発行為は危険極まりない筈なのですが。
ちょっとでも考えれば分かりそうなものなのに、このような二重三重の不見識を、大山鳴動しての件の騒ぎに乗じて公言してしまう態度には、橋下氏の自ら恥じることがない・自省のないメンタリティ、いつぞやの敗訴から彼が何一つ学んでいない・直そうとしていないことが分かります。
記事の視点からは少しずれますが、サダム・フセイン政権打倒を目指して活動していた在米イラク人(政治難民だったかな)が、イラク戦争を経て、自分のそれまでの活動を後悔しているという話を、以前たしかNHKで放送していました。アメリカ政府を動かしたつもりが、こんなはずではなかった、と。
戦争の歯車を動かさぬための知恵と勇気の重要性を、痛感させられた番組でした。