自・民両党首、東北対決第2幕 重点区、奪取か死守か(河北新報)
参院選の公示から10日目の13日、安倍晋三首相(自民党総裁)と民主党の海江田万里代表がそろって東北入りした。重点選挙区に狙いを定めた両党首の東北対決は公示日以来、2度目。安倍首相は「民主党ができなかったプラス成長を成し遂げる」と攻勢をかけ、海江田代表は「被災地の復興を遅らせているのは自民党」と批判を強めた。21日の投票日に向け、与野党の攻防が過熱した。
(中略)
山形選挙区(改選数1)は環太平洋連携協定(TPP)をめぐる攻防が大きな焦点。安倍首相は「農業、農村の収入を10年間で倍増させる」と熱弁を振るった後、山形県高畠町と米沢市も訪れ、てこ入れに駆け回った。
参院選もいよいよ差し迫ってきたわけですが、各党の主張はどれほどのものでしょうか。選挙期間中の遊説で実際にどれだけ事前の予想を覆せるのか気になるところでもあります。なお安倍首相は「農業、農村の収入を10年間で倍増させる」と熱弁を振るったとのこと。まぁ公務員なり電力会社社員なりマスコミ関係者なり、世間的に恵まれているとされる層を罵倒の対象とし、「こんなに恵まれている。これを直すのが民主党だ」と豪語しては働く人の賃下げを誇りとしてきた前政権に比べれば、向いている方向はずっと正しいと言えそうです。もっとも「農業、農村の収入」と「農家の収入」は必ずしも連動しないもの、アメリカやフランスのように農業は盛んでも農業人口は少ない国へと転向を計る必要は遠からず訪れると思われますけれど、従来の「農家が細々と続けられるように」という路線との折り合いをどう付けていくのか、その辺が問われますね。
宮城入りした海江田代表は名取市と仙台市太白区の計5カ所を巡り、郡山市に転戦した。
正午前、名取市の仮設商店街「閖上さいかい市場」でマイクを握り、安倍政権の復興方針を批判。「全国に公共事業をばらまいて人手不足と建設資材の高騰を招き、被災地の復旧事業を遅らせた」と指摘した。
……で、労働者の敵・民主党の代表は上のように述べたそうです。では海江田の指摘に応えて、「人手不足にならないように」「建設資材が売れ残るように」仕向ければ被災地の復興事業は進むのでしょうか。むしろ被災地の復興を阻んでいるのは、放射線絡みで諸々のデマを撒き散らしている人々、そういうデマゴーグを相手に日和る自治体首長連中のようにも思われるところですが、労働力にも物資にも買い手が付かず売れ残りが生ずる状況と、引く手あまたで労働力が不足する、物資も次々と売れていく状態と、どっちが好ましいのやら。まぁ就職事情を巡っても一貫して超・買い手市場を放置、黙認してきた民主党からすれば、人手不足や物資の高騰こそ懸念材料、買い手が付かずに労働力も物資も安く買い叩かれるのが理想の世界なのかも知れません。
もっとも公共事業の「ばらまき」とやらは、未だ計画段階であって実行に移されているとは言いがたいように思うのですが、海江田の頭の中では違うのでしょうか。むしろ被災地で人が集まらない、局所的に資材が不足しているのは民主党時代から続く復興事業の流れであるような気がしないでもありません。ともあれ、働く側からすれば人手不足は良いことです。絶対的に足りない椅子を数多の求職者が奪い合うより、不足する求職者を何とかして誘うべく求人側が頭をひねるような状況の方が、民主党にとってはともかく労働者側にとって好ましいのは言うまでもないでしょう。物資の不足も然り、物資が有り余り、値引き競争の勝者にしか買い手が付かない現状と、そこまで安くできない事業者の製品でも売れてゆく状態、余程の買い手至上主義者もしくはデフレ愛好家でもなければ後者をそう悪いようには捉えないはずです。海江田の語ることが事実であるなら――民主よりは自民党の方がずっとマシと言えますし、民主党の政治家が口を開くほどにそう実感させられるところでもあります。
パイの全体量が変化することを無視して、ゼロ和でないものをあたかもゼロ和であるかのように錯覚させ、「あいつらから召し上げればおまえは得する」という論理を使う、これが日本の政治を悪くしている大きな原因ですよね。
結局のところ民主党は「悪者」を「罰する」ばかりで、「利で釣る」発想の対極にあると言いますか、そこが自民党との違いなのかも知れませんけれど、私にはなおさら民主のがダメに見えてしまうところなんですよね。ヨソの公共事業を減らしたって、それで東北に金が回るようになるわけではないのに、ナイーブな公共事業=悪の図式を振り回すばかりで、じゃぁ被災地に何をしてくれるのかという部分で自民党を上回るものを提示できているかと言えば大いに疑わしいですし。