トヨタ、売上高23兆9千億円 GMを抜くのは確実に(朝日新聞)
トヨタ自動車が9日発表した07年3月期連結決算(米国会計基準)は、売上高が前期比13.8%増の23兆9480億円、本業のもうけを示す営業利益が19.2%増の2兆2386億円、当期利益が19.8%増の1兆6440億円となり、いずれも過去最高を更新した。営業利益が2兆円を超えたのは日本企業で初めて。
同時に発表した08年3月期の業績予想によると、売上高は4.4%増の25兆円、営業利益は0.5%増の2兆2500億円、当期利益は0.4%増の1兆6500億円。決算期は異なるものの、米ゼネラル・モーターズ(GM)の通期売上高を初めて抜くことが確実となった。
とうとう名実共にトヨタが世界のナンバーワン、大したものです。一方で、こんなニュースもあります。
新車販売 国内で不振 売れなくなったのはなぜ?(毎日新聞)
■29年ぶりの低水準■
国内の乗用車販売(軽自動車を除く)のピークは、バブル経済末期の90年度で、年間590万台が売れた。88年発売の日産自動車「シーマ」は、高級車ブームに火を付け「シーマ現象」という流行語まで生んだ。以後、減少傾向が続き、06年度は359万台(前年度比8.3%減)に。90年度比4割減で、29年前の水準にまで落ち込んだ。
06年はトヨタ自動車と日産が、それぞれの主力車であるカローラ、スカイラインを全面改良し、話題性のある新車は多かったが、カンフル剤にはならなかった。
何なんでしょうね、この差は。トヨタ自動車はバブル期を上回る莫大な売り上げ、利益を記録しているにもかかわらず、国内での販売台数は29年前の水準にまで落ち込んだとか。国外では記録的な売り上げと莫大な利益を上げる一方で、国内では減少傾向に歯止めが掛かりません。国外の売り上げと国内の売り上げ、合わせてみればプラスになっている、だからトータルで見る限りにおいて儲かっている、そんな企業がトヨタ以外にもたくさんあるものだから、日本全体で見れば戦後最長の景気回復が続いているわけです。ですが、国内に住んでいる人にはあまり嬉しい話ではありません。
だいぶ前に一度書いたことがあります。「ガーナの何が世界一か?」と。覚えていらっしゃる方はいるでしょうか。カカオの生産量ではありませんよ。もちろんガーナはカカオの一大生産国ですが、カカオの生産量世界一はコートジボワールです。ではガーナの何が世界一かと言えば・・・それは、虫歯の少なさです。虫歯の本数に関してどれだけ正確な統計があるのか、やや疑問ではあるのですが、ある歯医者さんのサイトで読んだ限りでは世界で最も虫歯が少ないのはガーナ国民なんだそうです。
カカオポリフェノールが虫歯予防に有効、なんてくだらないネタではもちろんありません。そうではなく、ガーナ国民は例えばチョコレートなどの甘いものを口にする機会がほとんどないため、虫歯が少ないのだそうです。かつてフィリピンの子供はバナナなんて食べられない、そんな話も聞きました。今は状況も変わってきているでしょうか? そしてサッカーボールを縫うパキスタンの子供はサッカーボールを自分のものにすることはありません。同様にガーナのカカオ農園で働く人々も、チョコレートなんて高級品は口に出来ないようです。
翻って日本はどうでしょうか? 自動車工場で働く期間工が、自らが生産する自動車を買うことは出来るでしょうか? まぁ、現時点ではかなり無理をすれば買えないことはないレベルですが、少なくとも余裕を持って買えるレベルではないわけで、それは期間工ならずとも同様のこと、当然の結果として自動車の販売台数は低迷するわけです。ふむ、第三世界に似てきましたか。
結局、第三世界がどうしていつまでも貧しいかというと、いくら頑張って生産活動を続けてもその利益が国民に還元されないところに一つの大きな原因があるわけです。ガーナの労働者がいくら良質なカカオを生産しても、それで儲かるのは農場主と、カカオを買い付ける側の海外資本であり、パキスタンの子供がいくら頑張ってサッカーボールを縫ったところで、それで儲かるのは海外の用具メーカーと、それと結託した現地の資本家層に過ぎません。
ですから、いくらトヨタが車を生産して、それが飛ぶように売れ続けたとしても、その利益は国民に還元されるのか、もし利益が国民に還元されないのであれば、それは第三世界の輸出産業と同じで、現地の人間が労働し、海外資本及び海外資本と手を組んだ国内の資本家が儲けるだけの、抜け出せない貧困への入り口にも見えるわけです。日本車は売れるが、日本人は日本車を買えない、日本車は売れるが、日本人は豊かになれない、歓迎されるようなことではありませんね。
トヨタに限らず大規模化したはいいけど傾いた時が怖いね。
えぇ、儲けすぎですとも。利益を働く人に分配しないで懐にため込んでいるのは、もしかしたら傾いたときに備えているのかもしれませんね。
国際資本の目には地域の発展は無い、あるのは市場だけだ。それは100年も前から分かっていたことであり、むしろ情報化が進んだ現在その流れは加速し、資本主義の歪がより鮮明に見えてきた現れではないでしょうか。
その一方で、世界各地の生産拠点を分散させているはずのトヨタやキャノンのお偉いさん、すなわち経団連を牛耳っている連中は愛国心云々を好むところがありますよね。本国という概念が曖昧なのに愛国心を口にするのか、それとも本国という概念が曖昧だから愛国心を口にするのでしょうか。いずれにせよ、愛国心で腹は満たせないわけで、ありがたみは微塵もありませんね。
既に生産拠点は中国など国外に移し、自動車メーカーの多くは販売市場を国内よりも国外に求めている有様ですからね。御用学者は法人税を引き上げると(過去の水準に戻すと)企業が国外に流出するなどと主張しますが、それなら結構、出て行ってもらうのも一つの考え方かも知れません。