非国民通信

ノーモア・コイズミ

通勤時間の謎

2019-06-30 21:32:18 | 雇用・経済

 さて関西方面では偉い人々の会合で色々と規制もあったかと思われますが、来年は東京で大規模イベント開催のため、一層の混乱が予想されるわけです。この辺を見越してか、企業の中にはフレックスタイムや在宅勤務、リモートオフィスなどの制度を拡充して備えとしているところも多いのではないでしょうか。私の勤務先でも、俄に動きが出てきたりしています。

 さて勤め先で在宅勤務制度の試験的運用が始まるのですけれど、状況に応じて在宅勤務者を出社させることも認められています。それは致し方ないことである一方、勤務時間を巡って今までの運用との矛盾が生まれたように思えるフシもありました。例えば「在宅で9時から業務を開始し、会議参加のため14時から出社」みたいなこともあるのですが、そこで生じた通勤時間はどうなるのでしょう?

 在宅で9時から業務を開始し、13時に家を出て、14時に出社、18時に退社――こういうこともあるわけですが、制度上は9時から18時まで働いたことになります。まぁ、業務命令を受けて出社しているわけですから、その出社に要した時間も勤務時間に数えられるのは当然と言うべきです。これに異論などは、あろうはずがありません。

 ところが8時に家を出て9時に出社、18時に退社して19時に帰宅した場合――この場合もまた制度上は9時から18時まで働いたことになるわけです。慣例として通勤時間は勤務時間にカウントされないので、それが当たり前のこととして受け入れられているところですけれど、在宅勤務制度との整合性はどうなのでしょうか。

 「毎週一回、○○の倉庫への出社となります」という条件の求人を紹介されたことがあります。自宅から「○○の倉庫」へ移動するには3時間程度を要するのですが、ただ朝の6時に家を出て9時に倉庫に出社して、18時に退社して21時に家に帰った場合でも、当然ながら勤務時間は9時から18時までの8時間+休憩1時間の扱いとのことでした。それは普通かも知れませんが……

 あるときは7時半に家を出て9時に出社、9時半に会社を出て10時に東京駅から新幹線で仙台へ移動、13時から東北営業所の会議に参加、15時に営業所を出て17時半に東京駅着、(17時半が定時なので)そのまま帰宅しました。制度上は、普通に9時から17時半までの勤務です。こういうのはただ電車に乗るだけの仕事みたいなものですが、逆もあります。

 別の日は、6時に家を出て8時の飛行機で広島へ飛び、13時から中国営業所の会議に参加しました。この日は偉い人のお説教が盛り上がり会議は17時半で中締めとなりました。そこから飲み会の出席を固辞して帰路に就きます。とはいえアクセスの悪さに定評のある広島空港ですし、飛行機は空港に着いたら5分で乗り込めるというものでもありません、羽田に着いたのは21時過ぎ、家に着くのは23時近くとなりました。この場合の勤務時間は――9時から17時半までです。

 通勤時間を勤務時間にカウントしないのは組合なども認めているところかも知れませんが、実際のところはどうなのでしょうね。それが在宅勤務を前後に挟むと、出社に要した時間は勤務時間として扱われるのですから不思議です。もちろん、在宅勤務中に呼び出されて、そこから出社するまでの移動時間を勤務時間から差し引くとなれば、誰が見てもおかしな話です。しかし……

 先の例に戻りますと、在宅で9時から業務を開始し、13時に家を出て、14時に出社、18時に退社――この場合に13時から14時までの移動時間は勤務時間としてカウントされます。それは業務命令に応じた結果だから当然なのですが、しかし18時に退社してから家に帰るまでに要した時間は、いったい何処に消えるのでしょうか? 在宅勤務者の場合でも、矛盾は残ります。

 そして在宅勤務が絡まなければ当たり前のように、勤務時間は通勤時間を考慮しません。普通に受け入れられてきたことですけれど、ある意味では常識を疑うことも必要なのかと思えてきます。これまで勤務時間から都合良く除外されてきた通勤時間が、在宅勤務を挟むと勤務時間にカウントされたり、されなかったりする、実は結構、労働者の権利を考える上で重要なのではという気もしています。


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