非国民通信

ノーモア・コイズミ

序:日本経済の現状

2022-05-09 22:41:20 | 雇用・経済

政府も認めた「賃金上がらず結婚できず」の厳しい現実(毎日新聞)

 内閣府は、総務省「全国家計構造調査」「全国消費実態調査」の個別データをもとに1994~2019年の世帯所得の変化を分析した。政府は今年の「骨太の方針」に「人への投資」の強化策を盛り込む予定で、その基礎資料として3月3日の経済財政諮問会議に提出した。

 それによると、全世帯の年間所得の中央値は94年の550万円から19年は372万円と32%(178万円)下がった。

 中央値とは、全世帯を所得順に並べたとき真ん中にある世帯の所得の値だ。統計では、平均値を使うことが多いが、格差が大きい状況では、平均値は一部の富裕層の所得に影響されて「普通の人」の所得よりずっと高くなってしまう。中央値はそうした影響を受けにくく、実態をより示しやすい。

 

 日本国の1人当たり名目GDPは1994年も2021年も40,000ドル前後です。この期間、他のG7各国は同期間でGDPを概ね倍増させており、日本だけが異次元の低成長を継続しているわけです。加えて算術平均では横ばいに見えても、その内実はどうでしょうか。ここで発表された世帯所得の「中央値」を見るとむしろ四半世紀前よりも下がっていることが分かります。日本以外の国がいずれも豊かになっていく中で、普通の日本人は貧しくなっている、低成長で格差が広がっているという実態は益々以て否定できない状態です。

 

岸田首相、「資産所得倍増プラン」を表明 貯蓄から投資へ誘導(毎日新聞)

 その具体策の一つとして資産所得倍増プランに取り組むとした。首相は、日本の個人金融資産の半分以上が現預金で保有され、「その結果、この10年間で米国では家計金融資産が3倍、英国は2・3倍になったのに、我が国では1・4倍にしかなっていない」と説明。「ここに日本の大きなポテンシャル(潜在力)がある」とし、少額投資非課税制度(NISA)の拡充や預貯金を資産運用に誘導する仕組みの創設などを通じて「投資による資産所得倍増を実現する」とした。

 

 岸田首相の唱える「新しい資本主義」については具体的に何を考えているのか誰も分からないといった有様でしたが、漸くプランの一つが発表されました。なんと「投資による資産所得倍増」だそうです。首相曰く「この10年間で米国では家計金融資産が3倍、英国は2・3倍になったのに、我が国では1・4倍にしかなっていない」とのこと、しかし10年前と比べると英米の1人当たりGDPは大きく上昇している一方で、ドル建てで見ると日本のそれはむしろ下がっています。日本にポテンシャルがあるとは、日本を知る人であれば決して口には出来ないでしょう。

 10年前の日本の名目GDPが高くなったのは異常な円高を放置していた影響であり、為替レートの影響を考慮すれば「25年前からも10年前からも全くの無成長」というのが日本経済の妥当な評価と言えます。ただし1人当たりGDPは変わらなくとも世帯所得の中央値は着実に下がっているだけに、一部の人が平均よりも多く資産を持つ一方、資産を持てない人も増えていると推測される状況です。ここから資産所得の増加を図った場合に得をするのは投資できるだけの種銭を持った人だけであり、投資に回せるだけの可処分所得がない人とのさらなる格差拡大が予測されます。

 一時は世界各国が自国の通貨安を誘導する政策をとっており、我関せずの姿勢を貫いた民主党政権時代には1ドル70円台という異次元の円高水準へと突入しました。その後、第二次安倍政権は周回遅れで通貨安競争に参戦し円相場は妥当なところへ落ち着いたかに見えましたが、ここに来てアメリカを中心に金融政策の転換が起きつつあり、何もしないと円高になる状況から何もしないと円安になる状況へ変わっているわけです。対ドルで円安が進むどころか時には対ルーブルですら円の価値が下落するなど、円の凋落は鮮明と言えます。

 これに加えて長年のデフレから堰を切ったような値上げラッシュが各方面で起こっており、家計が苦しくなってきた人も当然ながら増えていることでしょう。普通の国の場合にインフレは景気の過熱と連動するものですが、日本は所得水準が向上しない中で物価高が進んでおり、すなわちスタグフレーションと呼ばれる状況に陥っています。「景気が回復したら、改革する意欲がなくなってしまう」とは党派を問わず幅広く支持された小泉純一郎の言葉ですが、この呪縛から一日でも早く抜け出さない限り、未来はより悪いものにしかなりません。

 そこで3本の矢ならぬ4つの輪にテーマに分けて、日本経済が四半世紀の低迷から脱出するための手段を描いていきたいと思います。

第一の輪:金融政策

第二の輪:財政出動

第三の輪:税

第四の輪:国際関係

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