非国民通信

ノーモア・コイズミ

アドルフに告ぐ

2022-05-05 23:00:27 | 政治・国際

「ヒトラーにユダヤ人の血」、ロシア外相発言に各国反発(ロイター)

ラブロフ氏は1日、イタリアのテレビ局とのインタビューで、ウクライナのゼレンスキー大統領がユダヤ系なのに、ウクライナを「非ナチ化」するという主張をどう説明するかと聞かれ、「われわれがユダヤ人ならナチ化とはどういうことかと言うが、私はヒトラーにもユダヤの血が流れていると思う」と述べ「長い間、賢明なユダヤの人々が最大の反ユダヤ主義者はユダヤ人自身だという意見を聞いている」と指摘した。

ラピド外相は「ウクライナの人々はナチスではない。ナチスはナチスで、ユダヤ人の組織的破壊に関与したのはナチスだけだ」と述べた。

ドイツ政府報道官は2日、ラブロフ氏の発言は「ばかげた」プロパガンダ(政治宣伝)だと述べた。

(中略)

イタリアのドラギ首相は、ラブロフ外相の発言は誤りだとし、イタリアはロシアとは異なり表現の自由を認めているため、イタリアのテレビ局のインタビューで虚偽であってもこうした発言を行うことが可能だったと述べた。

カナダのトルドー首相も、ラブロフ外相の発言は信じがたく、「容認できない」として非難した。

 

 ロシアの外相であるラブロフ氏がNATO陣営の各国とイスラエルから非難されていることが伝えられています。発言の内容自体は妥当なものですけれど、イスラエル及びウクライナ応援団にとっては相容れないものがあるのでしょう。とりあえず男尊女卑の女性議員だって多い、労組を支持母体とする政党でも労働者を苦境に陥れるような政策の信奉者は多い、街宣右翼の中には外国籍の人もいれば、反ユダヤ主義に与してきたユダヤ人だっているわけです。ゼレンスキーがユダヤ人であるとしても、それが「非ナチ化」とは結びつかないのは明らかで、この点でラブロフ氏の発言は何も間違っていません。

 一方で「ヒトラーにもユダヤの血が流れていると思う」との行はどうでしょうか。これはヒトラーの存命中から諸説あったところで、そもそもヒトラーは血統書の付くような家柄ではなく先祖の中にユダヤ人がいたとしても不思議ではありませんし、後のナチス党幹部もまた同様です。ヒトラーがユダヤ人と確定することは出来ない一方で、ユダヤ人でないとも言えない、少なくともヒトラーもまたユダヤ人でないかと推測すること自体は誤りではないでしょう。

 一昔前に、アメリカの白人至上主義団体の間でDNA解析が流行ったそうです。自身が純粋な白人であることを証明するためにDNA解析サービスを受ける人が相次いだわけですが、受検者の3分の2は非白人の遺伝子が見つかったと伝えられています。この結果に納得できず別の機関に検査を申し込む人もいれば、「テスト結果ではなく本人の心情が重要」と人種の壁を片足だけ乗り越える人もいたとのこと、どこもそういうものなのでしょう。

 北センチネル島のように完全に隔絶された領域であればともかく、地続きの世界では人間も入り混ざります。ましてや「ユダヤ人」ともなれば社会的な区別を付けていても結局は同じ国家の中で暮らしているのですから、先祖の中にユダヤ人が一人もいない人などヨーロッパのどこにも存在しない、ヒトラーも当然のことながら例外ではないと言えます。それをムキになって否定する人がいるとしたら、何か後ろめたいものでも抱えているのではないかと見るべきですね。

 イスラエルのラピド外相によると「ユダヤ人の組織的破壊に関与したのはナチスだけだ」そうです。ユダヤ人の迫害はナチスの登場以前から長い歴史を持っているはずですが、その辺は許されたのでしょうか。ソ連だってユダヤ人問題で脛に傷はありますけれど、「ナチスだけ」とイスラエルが言うからにはナチス打倒の功績で帳消し扱いなのかも知れません。まぁウクライナはソ連の一員としてロシアと共にナチスと戦った人と、独立を求めてソ連と戦った派に分かれていたはずですが。

 ともあれラブロフ氏の発言をドイツ政府報道官は「プロパガンダ」、イタリアのドラギ首相は「虚偽」、カナダのトルドー首相は「容認できない」等と言い切っています。しかしラブロフ発言のどこにも間違った箇所は見当たらないわけです。ヒトラーの血統を疑うことが国際的な非難に繋がるのなら、手塚治虫の漫画だって有害図書になってしまいます。まぁ、結局のところは発言そのものではなくロシアを代表する立場からの発言だから叩かれているだけ、ロシアであることを攻撃されているだけなのかも知れません。

 ナチスの収容所には、囚人の中から選ばれた「カポー」と呼ばれる監視役がいました。彼らもまたユダヤ人として収容されていた一方、他の囚人(すなわちユダヤ人)に対してドイツ兵よりも残虐に振る舞うことも多かったと伝えられています。そしてユダヤ人国家として建造されたイスラエルはロシアなど足下にも及ばない軍事侵攻の第一人者であり続けてきました。ヒトラーやナチスを単純な悪の代名詞として自分たちから切り離し潔白を装ってきた人々ほど、ユダヤ人であることが潔白を証明するわけではないとするラブロフ氏の発言を受け入れることが難しいのでしょう。

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