□ Amethystium / "Isabliss"
♪ Elegy
♪ Treasure
Release Date; 17/06/2008
Label; Neurodisc
Cat.No.; NRO 32088
Format: 1xCD
>> http://www.amethystium.com/
>> http://www.myspace.com/amethystium
>> tracklisting.
01. A small adventure
02. La pluie
03. Treasure
04. Unbounded
05. Anthemoessa
06. Automne
07. Strangely beautiful
08. Frosty morning bliss
09. Silken twine
10. Dreamlike insomnia
11. Elegy
Composed by Øystein Ramfjord
Vocals:
Stine Mari Langstrand >> www.stinemari.no/
Irina Mikhailova >> www.irinamikhailova.com/
Lee Nisbet >> www.animusmundi.net/
Violin: Siv Lena Laugtug Sæther
Artwork: www.graydecay.com/
麗しき電子音の筆致で描かれる「ノルウェー妖精譚」。
Øystein RamfjordがAmethystiumの4th Albumとして世に送り出す作品は、これまでもそうしてきたように、あたかも北欧の森を舞台に幻想の道程をしたためた一遍の物語の体をなしていて、もはや楽曲というよりも、こしきゆかしい装丁に身を包んだ「本」と呼べるものに近い。
1曲目の"A Small Adventure"にしろ、イントロから古びたフィルムのリール音を被せ、非現実の御伽の世界にいざなう演出がなされています。"La Pluie"から"Treasure"と、冒頭から北欧独特の豊穣かつ透明感のある溢れる旋律と和声で畳み掛けます。悪く云えば、最初の3曲以降は地味で淡々とした語り口に終始してしまう印象。
"Anthemoessa"は先のベスト盤"Emblem"に収録されていたもの。この曲にも代表されるように、"Isabliss"は従来のアルバムよりもシンプルでありながら、シンセと歌声が非常に自然体なハーモニーを紡ぎ出す流れに沿っていて、4作目にしてAmethystiumは完全に自身の音楽性を確立したと言っていいかもしれません。
"Frosty Morning Bliss"や"Silken Twine"、"Dreamlike Insomnia"に見られる実験的なSEのサンプリングや、鋭いビートのダブ・エフェクトも、神秘の内側を覗かせる機械装置の如くシュールで、何より刺激を求める遊び心から真っ直ぐ届けられるような気がして、世界観を壊すこと無く溶け込んでいます。
暗澹とした森の幽玄な空気感を臭わせる、ダークで奇妙な転調が節々で見られるのも特徴。東洋風の琴の音と聖歌からの導入で始まる"Elegy"に至るまで、曲調の変化と流動性に富みながらも、実に安定した造りでそつがない。
初期の頃はDeleriumと比較されることが多かったAmethystiumも、果たしてその認識が正しかったのか、今となっては問いたださずにはいられません。不規則で意表をつくような転調や変拍子は以前にも増して顕著で、むしろChristopher FrankeやMythosの影響が強いようにも感じられるし、似たような傾向のアーティスト(Blue Stone、Ephemerid、etcetc...)が、Amethystium系のサウンドを追随して、それぞれのオリジナリティを出しながら、自分たちの作風と同系統の音楽を、一ジャンルとして堅牢に包囲してしまった感さえあります。
Vocalの一人、Stine Mari Langstrandと、ViolinのSiv Lena Laugtugは、Trondheimを中心に活動するNorwegian Folklore、Progressive Rockバンド、Lumskのメンバー。神秘的なEthnic Voiceを奏でるのはカザフスタン出身のシンガー、Irina Mikhailova。全編に漂うゴス・ロック風の息吹は、三人目のVocal、Lee Nisbetと、co-produceを手がけたStacy Evansの功労でもあります。彼らはゴシックポップ・デュオ、Animus Mundiとして活動しています。
今も深い微睡みの中、幽闇の森の誘惑に絡めとられたまま。この音楽を紐解いて幻想に身をまかせれば、夢魂漂う天樹の頂きへと辿り着けるのかもしれません。