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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

Berio / "Sinfonia / Eindrucke"

2007-01-17 13:22:28 | art music
Sinfonia



:: Berio / "Sinfonia・Eindrucke" 1986-2001  

III

Label; apex
Cat.No.: 8573 89226 2
Format: 1xCD

1.I
2.II
3.III
4.IV
5.V
6.Eindrücke


現代音楽最大のコラージュ作品と謡われるルチアーノ・ベリオのシンフォニア。ブーレーズ指揮、IRCAMでの録音。ニューヨーク・フィルの創設125周年記念にレナード・バーンスタインに献呈されたもので、楽器やセリフに至るまで、各々の声部の音や意味的な構造が相互作用し、互いに響き合うように、ある種の結晶体を形成しています。

音による印象の伝達、ではなくて、音による考証の構築。人類学者レヴィ=ストロースのテクストや、マーラーの楽曲の断片等を、楽部毎に異なる複雑難解な手続きの元にリ・コンストラクションしたもの。

ベリオ自身による注釈が寄せられていますが、それが全てで他の解釈を挟む余地がないことが逆に興味深いです。シェーンベルク(言うまでもなくマーラーの弟子)にはじまり、ストラヴィンスキー、ベルク、ウェーベルン、ブーレーズといった現代音楽の源泉をマーラーの交響曲第2番第3楽章だとする考証も面白いですね。(この系譜を辿ると、ワーグナーが『トリスタンとイゾルデ』で調性の崩壊を試みたのが起源だと思えるけど)シンフォニアの最終楽章では全楽部の共時性が楽曲自身によって明かされます。


第I部では、Claude Gustave Lévi-Straussの『神話論理 (Mythologiques Le Cru Et Le Cuit)』から、ブラジル神話における水の起源と同系統の神話の象徴について触れた一節を引用。実は『神話論理』において、レヴィ・ストロースもまた「Symphony」や「カンタータ」、「レチタティーヴォ」、「平均律天文学」といった用語を用いて、音楽的な構造をテクストの構成に取り入れ、構造主義という自らの立場と主張を総括しています。(未開部族に対して彼の行った取材が、アンドレ・ヴェイユによって数学的に整理され、現代の量子力学などといった分野でなくてはならない『群論』として確立されたのは有名。)

第II部はマーティン・ルーサー・キングの追悼に捧げられたもので、この章だけが、第V部を除く他の3パートから独立しています。

そして、シンフォニアの核を成す第三部こそが、ベリオ自ら「最も実験的な」と語るパートであり、バロック音楽~現代音楽に至るまでの様々な音形の系譜を辿りながら、グスタフ・マーラーの交響曲第二番『復活』へと集約されるように書かれています。ここで引用されている歌詞は、サミュエル・ベケットの「L'INNOMABLE (名付けえぬもの)」。セリフや楽器音がアメーバのように融着、分裂、明滅を繰り返します。

余談ですが、ベケットについて個人的に明るいことと言えば、私が尊崇するジェイムズ・ジョイスの『Finnegans Wake (フィネガンズ・ウェイク)』の筆記を助けたことくらいなのですが。。調べてみると、同書への擁護論文集が、印刷物として刊行されたベケットの最初の活字となったそうです。

<参考>
http://ja.wikipedia.org/wiki/フィネガンズ・ウェイク

フィネガンズ・ウェイクは是非一度、原文・日本語訳文を両方読んで頂きたい作品。柳瀬尚紀氏による神懸かり的な訳文が伝説となっています。そしてフィネガンズ・ウェイクもまた、素粒子物理学における重要な概念である「quark クォーク」の名付け元となっています。(鳥が「クォーク」と三度鳴いたことから)
ちなみに私の好きな著作物には、なぜか柳瀬氏による翻訳が多いです(ーー;(,Douglas R. Hofstadterの『Gödel, Escher, Bach: an Eternal Golden Braid (ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環)』や、ルイス・キャロルの一連の作品などなど)

この第三部についてのベリオの注釈はこうです。

馴染み深いテーマや外観も、視点や文脈、光の当て方を新しくすることで予期せぬほど新しい意味を帯びる。互いに馴染みのない音楽成分を一つに纏め上げることが、マーラー風の「オブジェ・トルヴェ」を黙想した<シンフォニア>第III部の裏で大きな推進力となっていることだろう。


最も短いセンテンスである第IV部では、冒頭でマーラーの第二番がそのままの形で引用され、第I~III部の各断片を不明瞭な形式でトレースしています。

第V部ではレヴィ・ストロースのテクストが音形を伴って再帰し、円環を成しています。

終楽章第V部の役目はこれらの相違をなくし、先行する4つの楽章に潜在する統一性に光をあて、発展させることにある。実際に第I部で始まった展開はここで終結に至り、断片的なものも(第III部、第IV部)まとまった形のものも(第II部)、全ての楽章がここで合流する。つまり第V部では、作品自体の言葉と手法によって『シンフォニア』が分析されていると考えてよい。


音楽の統語論的用法において、その意味が聴き手に理解されるかどうかは実は重要ではなく、それ自身が「音楽というプロセス自体本来の特徴なのだ。」と語るベリオにとって、思念や芸術に含まれる様々な情報の存在意義と価値は、聴き手や環境に相互作用を引き起こす負荷であり、構造的なパスウェイたる一面があるように思われます。




Cytoscape 2.4.0

2007-01-17 12:54:27 | Science
2_4_ss1



□ Cytoscape 2.4.0.

>> http://www.cytoscape.org/
>> http://cytoscape.seesaa.net/
>> http://www.cytoscape.org/cgi-bin/moin.cgi/Welcome

bio-informaticsのMLにて告知されていました。
Cytoscapeは生物学的ネットワークの可視化プラットフォーム。
昨年のVer2.3から更に機能強化を計ったVer 2.4.0がリリース。

テキストファイル、Microsoft Excel(.xls)ファイルからのネットワーク、アトリビュートインポート
SBML、PSI-MI、BioPAXファイルのサポ-ト
リモ-トファイルのURL指定によるインポ-ト
標準的なオントロジー記述フォーマットであるOBOファイルのネイティブサポ-ト
オントロジーの可視化
論文に使う図の制作に便利なラベルの位置調整、レジェンドの自動生成
Quick Find (Googleのサジェスト機能を模したノード、エッジ検索のためのプラグイン)
Java SE 5, 6のサポート


とにかく拡張性のあるプラットフォームなので、様々な環境でも工夫次第で活用できるのがポイント。(チュートリアルで紹介されている、Table Importを用いたMac、UnixでのPajekの応用など)Excelで保存しているネットワークやアレイから直接インポートできるため、システムの移行も容易に行えます。「オントロジーの可視化」については、新しいオントロジーサーバに移して、あらゆるOBO(Open Biological Ontologies)のサポートを可能にしています。特にビジュアライズ周りに関して

Node label position adjustment.
Automatic Visual Legend generator.
Node position fine-tuning by arrow keys.
The ability to override selected VizMap settings.


とあり、マッピングの際のアトリビュートの表示制御など、インターフェイスの躍進にも細心の注意を払われているようです。また、Ver.2.5への持ち越しと思われていた幾つかの機能も既に実装されているようですね。

この分野では類似した局所構造について、多岐なパースペクティブ(タンパク質シーケンス、トポロジー、遺伝子オントロジー)でデータマイニング(機能予測・比較)をするために、システムの切り替えや使い分けに、即時性と機動力が求められます。将来的には、よりユニバーサルなシステムで相互換のデータ集約演算、(メタデータや類似構造のデータベースから評価された)機能性サブネットワーク、パスウェイの創出といったステージへと向かうのかもしれません。