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lens, align.

Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

画像で振り返るハッブル20年史 - The Hubble Space Telescope 20th Anniversary

2010-04-30 13:58:20 | Science
Hubble Captures View of
Source: Hubblesite.org


□ The Hubble Space Telescope 20th Anniversary

>> http://hubblesite.org/
>> http://www.nature.com/news/specials/hubble/index.html


□ The Hubble Slideshow

>> http://www.nature.com/news/specials/hubble/slideshow.html


□ Recommend Picture

>> "Pismis 24" (National Geographic)


地球の軌道上空600kmを周回する『宇宙の目』、ハッブル宇宙望遠鏡が打ち上げられてから20周年。この節目を記念して、NASAはこれまで秘蔵していたハッブルの画像資料の多くを改めて公開。これを用いた様々な特集が各種科学ジャーナルで企画されています。


トップの画像は、丁度20年目にあたる今月26日に撮影された記念すべき一枚。「りゅうこつ座 ηカリーナ星雲の一部」を最新の画像処理技術で捉えたもので、山状の先端部分からの高さは3光年に及びます。

永きに渡り相次ぐ故障トラブルを伴侶としてきたハッブルですが、補修と改良を繰り返しながら20年目にして辿り着いたのは、まさに驚異と奇蹟に溢れた神威の領域と言えるでしょう。



Natureで特集されているスライドショーでは、そんなハッブルの捉えた光景の経過と変遷から、宇宙史的事件や為し遂げた功績を振り返ろうというもので、とても簡便にわかりやすくまとめられています。


National Geographicが取り挙げている『ピスミス24』は、2006年の撮影ながら、私が最も気に入っている写真の一つで、宇宙論の矛盾を光学的な「観測結果」で紐解いた象徴的な例としても挙げられるでしょう。

2013年には後継機であるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST)が打ち上げられる予定ですが、今現在のハッブルの寿命とされている2014年の最期の瞬間まで、きっと未知の感動を送り続けてくれるに違いありません。


Clip: Massively parallel computing on an organic molecular layer.

2010-04-26 16:34:53 | Science
Nimsec
「ブレインライクな(脳のような)分子回路の概念 (Credit: Nims)」


□ Massively parallel computing on an organic molecular layer
 世界初、有機分子層における脳のようなコンピューティング

>> http://www.nims.go.jp/news/press/.../p201004260.html (Press Release)
>> http://www.nature.com /.../nphys1636.html
Modern computers operate at enormous speeds?capable of executing in excess of 10^13 instructions per second?but their sequential approach to processing, by which logical operations are performed one after another, has remained unchanged since the 1950s.

In contrast, although individual neurons of the human brain fire at around just 10^3 times per second, the simultaneous collective action of millions of neurons enables them to complete certain tasks more efficiently than even the fastest supercomputer.

Here we demonstrate an assembly of molecular switches that simultaneously interact to perform a variety of computational tasks including conventional digital logic, calculating Voronoi diagrams, and simulating natural phenomena such as heat diffusion and cancer growth.

As well as representing a conceptual shift from serial-processing with static architectures, our parallel, dynamically reconfigurable approach could provide a means to solve otherwise intractable computational problems.
特徴:
1) 大規模並列処理が可能。世界最速のスーパーコンピュータが、各々、それらの経路 で順番にビットを処理するのに対して、今回の回路は一度に 300 ビットまでのパラ レルで瞬間的な処理ができる。


2) 欠陥がある場合、それを自ら修復することができる。有機分子層の自己組織力によ り、既存のコンピュータにはない自己修復性を有している。また、ある神経回路(ニ ューロン)が失われた場合、別の回路がその機能を引き継ぐ。

3) この分子層には知性が認められる。この研究は、アルベルト クレディ(Alberto Credi) の「IQ を持つ単分子層」の予測(2008 年)を実現した。

このユニークな特徴を証明するために、グループは熱の拡散とガン細胞の進展という 2 つの自然現象をシミュレーションした。 このような自然災害及び病気の発生の予測など、現在のコンピュータアルゴリズムが 及ばない問題に、解決をもたらすことが考えられる。




物材機構・米ミシガン工科大など、人間の脳に似たプロセス持つ進化回路を作製

>> http://www.nikkan.co.jp/...100426eaad.html (日刊工業新聞)
物質・材料研究機構ナノ計測センターは米ミシガン工科大学、情報通信研究機構と共同で、有機分子を使い、人間の脳に似たプロセスを持つ進化回路を作製した。大規模な並列計算をする脳型コンピューターを作り、自然災害やがん細胞の進化など複雑な現象のシミュレーションなどに応用する。26日発行の英科学誌ネイチャー・フィジィクス電子版に発表する。
 開発回路で構成した分子プロセッサーは一度に300ビットの並列計算が可能。有機分子層が持つ自己組織化の性質を利用、脳の神経回路(ニューロン)のように欠陥を自ら修復する機能を持つ。従来の相補型金属酸化膜半導体(CMOS)を使う進化論的な回路は6、7個の回路数だが、開発回路は10の24乗の回路から選択できるという。
 自ら進化を遂げる進化的な回路は、1955年にフォン・ノイマンが提案した「セルオートマトン」モデルに基づく。




Evaluation (上記記事のNanowerkによる評論)

Will brain-like evolutionary circuit lead to intelligent computers?

>> http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=15971.php
excerpt: With such remarkable processors that can replicate natural phenomena at the atomic scale researchers will be able to solve problems that are beyond the power of current computers.

Especially ill-defined problems, like the prediction of natural calamities, prediction of diseases, and Artificial Intelligence, will benefit from the huge instantaneous parallelism of these molecular templates.

According to Bandyopadhyay, robots will become much more intelligent and creative than today if his team's molecular computing paradigm is adopted.



CBRC/BiWO 2010.

2010-04-22 19:21:29 | Science
□ CBRC2010 

2010年度生命情報工学研究センターワークショップ
>> http://www.cbrc.jp/biwo2010/index_en.html

国内外の優秀なバイオインフォマティクスの研究者が集うCBRC2010 では参加者のポスター発表を募集しています。 参加登録費などは無料です。内容はバイオインフォマティクスに関連することであれば特に問いません。

今年のBiWO2010では、招待講演者を始め、共催予定のCBI学会、SIG-BIO研究会、創薬インフォマティクス研究会など、 代謝、システムバイオロジー、情報科学、シークエンス解析、タンパク質構造、糖鎖、創薬、統合データベースなど 様々な分野での口頭発表を予定しています。



[Schedule]

July 28
The 309th Meeting of The Chem‐Bio lnformatics Society
July 28-29
22nd IPSJ Special Interest Group on Bioinformatics (IPSJ SIGBIO)
July 29
JSBi-SIG on Pharma-Informatics
July 28-30
Computational Biology Research Center Workshop 2010


今年のCBRC及びBiWOは夏に開催。今回からポスターセッションをオープンにして賞金を用意するとのこと。いつかのBioHackathonみたくustream配信してくれれば熱いんじゃないかと。ライフサイエンスバーのような若手研究にも期待。生命情報工学領域にもっと数理モデルを。


rubbish talk_2.

2010-04-22 17:28:12 | Science
□ 生物種についての『知性の高度』は、適応度地形を実相させている相互作用種の振る舞いの、環境への繰り込みの「程度」とリンクしているのかもしれない。


この議論には多くの条件やパラメータを規定する必要がある。

1) 如何なる体系(プロトコル)を共有するか
2) 思考経過のタイムスケールは
3) 発生の手順
4) 周環境への依存度
5) 周環境への干渉性 etcetc...


思考ゲームとして、人間の脳の処理能力を遥かに超えた知能のような存在を定義する時に、(4、5)の項目はもっと重大な意味を持つようになる。

仮に人間にとって一万年分の思考活動を数秒で実行できる生命体を想定した場合に、彼(彼ら)が寿命や身体的限界といった、ライフゲームのアポトーシスとも言うべき、自己に課せられた種々の制約を如何にクリアするか(或はしてきたか)というモデルを整理してみることは、人間社会というコミュニティの有する可能性との比較の上で、意外と有益な経路となるかもしれない。


究極的な命題は「思考の果て」である。
無知性は、物理的必然性に準ずるあらゆる局所的適応のパラメータ極限値にある。対して高知性は特定の記号体系に接地して物理的干渉性を伴う何らかの変動パラメータを生成する存在であり、周囲を良く映す『磨かれた鏡』とでも称すべきものだ。

もしくは知性の高度が増すごとに無知性のパラメータ領域に帰還する、ある種の共振作用を生成している可能性も考えられる。



かつて述べたように、あらゆる思考活動は「二重のコード」化された信号処理、謂わば「もつれた環」の自律帰還的挙動に置き換えられる。あるいは億万劫の時間をかけても、そのような知的生命体は存在しえないよう宇宙的制約に縛られているのかもしれないし、意識活動が高度な程、それが実効する為の複雑性とdifficultyが乗数的に増して行くモデルも考えられる。「認知と行動」の不一致も一つの大きな障害だ。

神といえども、詰んだ状態のチェスゲームを翻すことは不可能だ。せいぜいルールを把握するだけである。


Clip: Random numbers certified by Bell’s theorem.

2010-04-17 13:09:30 | Science
Freefractal3d
(Free Fractal Wallpaper by Serdar_Camlica)


Highlights:
物理: 42のビットで実証された真のランダム性
Here it is shown, both theoretically and experimentally, that non-local correlations between entangled quantum particles can be used for a new cryptographic application ― the generation of certified private random numbers ― that is impossible to achieve classically.

The results have implications for future device-independent quantum information experiments and for addressing fundamental issues regarding the randomness of quantum theory.
S. Pironio et al.
doi:10.1038/nature09008
Abstract: http://forcast.emailalert.jp/c/ac4badehrLoWoxbk
Article: http://forcast.emailalert.jp/c/ac4badehrLoWoxbl




情報科学: 保証されたランダム性
Information science: Guaranteed randomness
You have received a device that is claimed to produce random numbers, but you don't trust it. Can you check it without opening it? In some cases, you can, thanks to the bizarre nature of quantum physics.
Valerio Scarani
doi:10.1038/464988a
Standfirst: http://forcast.emailalert.jp/c/ac4badehrLoWoxaQ
Article: http://forcast.emailalert.jp/c/ac4badehrLoWoxaR



概要:
古典物理学では、ランダム現象は未知であっても実在する力の結果であり、そこには真のランダム性は存在しない。しかし、量子の世界は、本質的に真にランダムである。このことは、ノイズなどの制御できない要因によって隠されるために証明が困難である。


今回Pironioたちは、量子力学の2つの基本的概念、すなわちランダム性ともつれ合った粒子の非局所性の間の定量的関係の証明について報告している。彼らはまず、細部の実行状況とは無関係に、ベル不等式の破れによって新しいランダム性の発生が保証されることを、理論的に示した。


次に、この方法を説明するための実験を行い、彼らが開発した理論的手法を用いて、42の新しいランダムなビットが発生していることが確認された。この研究は、概念的な意義があるだけでなく、暗号や、物理系や生物系の数値シミュレーションについて実用的なかかわりもある。




比較的新しい分野である『量子カオス系』の分野では、そのランダム性の証明が困難であるが故に、従来は半古典領域の概念におけるカオス系が写像されていましたが、今回の実験を受けて、今後は量子論そのものからランダム性を定義することが可能になったという意義があります。

とりわけ古典的カオス化と量子化法の間に生じていた「大きな壁」を取り除く可能性を示唆したことで、いつかは非線形力学分野での飛躍的な応用が期待出来るかもしれませんね。(※ 時間依存型シュレーディンガー方程式ではカオスは生成されない)


直近の用途として注目されているのは、やはり量子暗号の生成に関してのもので、古典系では不可能なランダム・ビットの照会方に実現の目処を齎したことが大きいでしょう。


生物系分野ではセル・オートマトン研究の様々なアトラクタ、特にカオスとトーラスとの共存状態の解析(ex. ポアンカレ写像から得られる一次元写像で証明される構造に見られる振る舞い)にも影響を与えるでしょうし、オートマトン・モデルに基づいた検出機器をはじめとする、実用的かつ多用な回路の構成にも役立つ時が来るとも考えられます。今、数理物理は大きな一歩を踏み出したと言えるでしょう。




□ clip:

工学:
相互依存ネットワークにおける破局的な故障のカスケード的広がり
Catastrophic cascade of failures in interdependent networks
Modern networks are rarely independent, instead being coupled together with many others. Thus the failure of a small fraction of nodes in one network may lead to the complete fragmentation of a system of several interdependent networks.

Here, a framework is developed for understanding the robustness of interacting networks subject to such 'cascading' failures. Surprisingly, a broader degree distribution increases the vulnerability of interdependent networks to random failure.
Sergey V. Buldyrev et al.
doi:10.1038/nature08932
Abstract: http://forcast.emailalert.jp/c/ac4badehrLoWoxbm
Article: http://forcast.emailalert.jp/c/ac4badehrLoWoxbn




計測:
古典的精度限界を超える非線形原子干渉計
Nonlinear atom interferometer surpasses classical precision limit
The precision of interferometers ― used in metrology and in the state-of-the-art
time standard ― is generally limited by classical statistics. Here it is shown
that the classical precision limit can be beaten by using nonlinear atom
interferometry with Bose--Einstein condensates.
C. Gross et al.
doi:10.1038/nature08919
Abstract: http://forcast.emailalert.jp/c/ac5saddKcimJ43bh
Article: http://forcast.emailalert.jp/c/ac5saddKcimJ43bi




rubbish talk.

2010-04-08 13:26:41 | Science
(自身のTwitter Logから記録)

□ 蟻のコミュニティ形成は個体間に媒介される化学物質の濃度「のみに」依存される。個それぞれの役割としての行動は内在していて、信号によって自動的に発現する。中央管制のない統治システムは攻撃耐性に優れるが、ハブとインフラに無自覚の間隙を孕み続ける。例えば系外からの「不正操作」など (3:18 AM Jan 18th Twitterrificから)


□ 意識活動(と見なされるもの)が「終端」を織り込んで時間を刻んでいるならば、人間原理などを弄さずとも、砕けざる石の如き「揺らぎ」の中に決定論と偶然性の折衷点を見出すことが出来るかもしれない。(5:58 PM Jan 18th Twitterrificから)

高度な知的活動に要する計算時間の投影である。十分な試行にe-folding timeが収束しない環境では意識を持つ生態系が発現しない。逆に意識が起こるのは、群?個体間において安定的に計算時間を確保出来る環境があるからで、時間の準位(刻み方)に物理依存的に終端を織り込んでいるのだ。(6:31 PM Jan 18th Twitterrificから)


Climate science: No solar Fix. -太陽活動が低下しても気候は温暖化する。

2010-04-04 11:18:11 | Science
Solarfix_2


□ Climate science: No solar Fix.

>> http://dx.doi.org/10.1038/464652a
>> http://www.agu.org/pubs/crossref/2010/2010GL042710.shtml

Georg Feulner and Stefan Rahmstorf of the Potsdam Institute for Climate Impact Research used a global climate model to examine the effect of a Maunder-type minimum on global mean temperature by 2100. The model reproduced the cooling of past solar minima, but when simulating the future the authors found that the solar effect was overwhelmed by the much larger temperature increase due to greenhouse-gas emissions.


ドイツの気候変動ポツダム研究所のシミュレートしたモデルによると、21世紀末までに訪れる太陽活動極小期の及ぼす寒冷化効果は、気温の上昇を0.3℃程低下させるに圧し留まり、地表全体の気候変動のフレームの中では、人為的温室効果ガスの影響に圧倒されてノイズと消える。

17世紀に訪れたマウンダー極小期の記録と、将来の太陽活動の予測値を比較したモデルから算出した予想。一方で、直接関連は無いのですが、太古の太陽活動に関する温暖化ガスとの興味深い研究報告も↓



□ 気候:「暗い初期太陽の気候パラドックス」は存在しない
No climate paradox under the faint early Sun pp744 - 747
It has been inferred that, during the Archaean eon, there must have been a high concentration of atmospheric CO2 and/or CH4, causing a greenhouse effect that would have compensated for the lower solar luminosity at the time and allowed liquid water to be stable in the hydrosphere.

Here it is shown, however, that the mineralogy of Archaean sediments is inconsistent with such high concentrations of greenhouse gases. Instead it is proposed hat a lower albedo on the Earth helped to moderate surface temperature.
Minik T. Rosing, Dennis K. Bird, Norman H. Sleep and Christian J. Bjerrum
doi:10.1038/nature08955
Abstract: http://forcast.emailalert.jp/c/ac1Hac5Ss17Msoby
Article: http://forcast.emailalert.jp/c/ac1Hac5Ss17Msobz


地球における始生代を照らしていた「若い」太陽は、現在の70%の太陽光度しか持っておらず、液体状の水は存在しえなかったはずなのに、紛れもなく「水」はあった。従来、このパラドックスについては、二酸化炭素やメタンといった温室効果ガスを用いた説明が一般的でした。しかし、

彼らは、堆積鉱物の特性が、高い温室効果ガス濃度やその時代のメタン細菌の代謝の制限要因と一致しないことを立証している。大陸面積が小さく、熱を吸収する黒い海面が多いために初期地球のアルベドが低かったことは、生物学的に生じる雲凝結核がないことと相まって氷点以上の温度を保つのに十分であったという仮説を提唱している。



こちらは逆に、大気中の温室効果ガスを考慮しなくとも、太陽活動の影響が地表環境によって大きくフィルタリングされるという現象を示唆するもの。いずれにしても、太陽活動がダイレクトに、その時代周期の地表温度を上げ下げするものではないというプロセスでは共通しています。


古生物学上、気候変動のわずかなブレですら、長周期的には生態系に深刻なリスクを齎すことが実証されつつあるだけに、人間が自身の「持続可能な生産」に立脚していたいならば、自ずとその立ち振る舞いも決定するというもの。人為性か外因性か。気候変動リスクの因果性を何処に認めるにせよ、今一度足下を確かめてみる必要性が問われているのでしょう。


iPhone (iPad) as a mobile medicine. - 医療機器としてのiPhone。

2010-04-02 14:08:52 | Science
</object>


□ The stethoscope in your iPhone

>> http://ff.im/-ivHCP


このところのReserchers Tool系統のアプリの充実も目覚ましいですが、医療分野での活用もiPadのリリースにより大きく進展する可能性もありそう。(リファレンスツールとしては...)

"iCut DNA"という、REBASE(制限酵素データベース)を利用したシークエンス検索も提供されてるんですね。いちいちファイル形式を選択して、制限酵素ごとに対応する認識サイトデータを参照させる手間が省けるのは便利かも。



□ nature.com app for iPhone

>> http://www.nature.com/mobileapps/

上のニュースソースも含め、近ごろ重宝しているのがnature.comのiPhoneアプリ。ワンタッチでドキュメント全文をダウンロード出来る手軽さがあるので、PCブラウザでの参照は殆どしなくなってしまいました。


The False of "IPCC Climategate" - 『温暖化懐疑論』という言説への懐疑。

2009-12-05 09:12:07 | Science
□ Climatologists under pressure p545
英国の電子メール流出事件は科学的な陰謀ではなかったが、国民の厳しい監視の
目にさらされる中で、気候変動研究をいかに支えるべきかを示している。

doi:10.1038/462545a
http://forcast.emailalert.jp/c/aciVac7D5OxC49at



□ 温暖化科学の虚実 研究の現場から「斬る」!(江守正多)

>> 過去1000年の気温変動の虚実(09/11/27)



□ 『懐疑派』による「温暖化データ捏造」という疑惑の捏造。

>> http://transact.seesaa.net/article/134031815.html
>> http://transact.seesaa.net/article/134001715.html



重大な犯罪行為が露にした重大な科学スキャンダルとして一時的に議論が紛糾した"IPCC Climategate(地球温暖化データ捏造疑惑)"。事件の詳細はリンク先を参照頂きたいが、私の立場における見解はその何れかに属するというわけではないと断っておく。ただ様々なソース(慎重な見解、偏向的な見解)に目を通すと、これが決して「主流派」vs.「懐疑論者」というレベルの「科学的論争」とは言うに耐えない代物であろうことを理解するのに時間はかからない。



顛末としては、ハッカーが盗難した文書から切り貼りされた「懐疑派の主張を裏付けるデータ」そのものが、剽窃と歪曲を重ねたものであること。そして、今回指摘されたデータの「異常」は、2007年のIPCC第4次評価報告書においてとっくに修正され、周知されていたものであったということ。(それを織込み済みで、人為的温暖化ガス要因説は高い確度を保って検証されている。)


紛糾点となった温暖化グラフの「ホッケースティック・メソッド」のトリックについては、主流派と懐疑派双方がもっと冷静になって真偽を見定める努力が必要だろう。

ちなみに、今件を受けて「アル・ゴアがCO2温暖化要因説を破棄した」と吹聴する向きもあるが、それは全くのデタラメである。

>> http://worldbbnews.com/2009/11/gores-spiritual-argument-on-climate/

彼は二酸化炭素も「含めた」(実際に大きな要因を占めるとしている)包括的な要因究明を求める姿勢を言明しただけであり、どうしてあのような嘘の要約が偏向的に(主にネット中心に)出回るのか不可思議にすら感じられるものである。




人為的気候変動の研究と、環境に対する人為的干渉と制御、更に「温暖化防止」という地球規模を挙げた運動傾向の意義についての私自身の見解は、これまでに当ブログの「環境」カテゴリにてしつこいほど述べ、今なおその視点が揺らぐものではないので、割愛させて頂きたい。



※...特徴として、主流派のデータは気候・地質・海洋という、あらゆる現場の生のデータに依拠する、汎地球的・極微から長時間スケールのシミュレーションに基づくのに対し、懐疑論者の用いる論拠は、画一的なソースからの「局所的な推移」あるいは「極値的なデータ」から孫引きした単調な「否定論」である場合が殆どであり、その支持者の大半がデータを評価するリテラシーを持たない層であることが挙げられる。

「寒冷化」説にいたっては予測や介入の及ばない「太陽黒点説」に依拠しており、その正否は別として「温暖化説」とは乖離したキークエスチョンにあって、「気候変動予測の人為性の検証」というテーマにおいては、そもそも議論の的にすらならない。



equivalent causality - abstract.

2009-11-24 19:07:25 | Science
Equivalence


量子論における観測問題は、宇宙における存在を解き明かす根本原理に関わりながら、未だ議論の紛糾が絶えない命題の一つである。


「波束の収斂」が確率的にもたらす決定論的世界の選択(分岐)。最新科学ではEPR問題の情報因果性による合理性や、「シュレーディンガーの猫」の微小時間的な可逆性が実証され、相対論と量子論の矛盾を埋めながらスタンダードを構築しつつある。

しかし量子や場といった概念の根源的な実在性については、広大不可侵な領域が残ったままであると言わざるをえない。コペンハーゲン解釈最大の「間隙」である、「観測者も系に含めた記述」を完成させようと、現在でも多様な理論化の試みが為されている。


それらの普遍な分岐点として、「観測」に対して「いつ収斂が起こるのか」というポイントが挙げられる。如何なる解釈に置いても、その「因果」の有無が観測問題の要点なのだ。現代物理学においては、この因果を生成するシステムを記述する術が無い。



私は、量子系において「因果」を証明できないものは「因果同値」であると仮定する。(そのダイナミクスは不完全性定理の系外にあたり、カオス系における有限なLyapunov timeをとる。)そこが記述の為のフレームであると考えるのだ。線形力学などにおいて因果の方向性を同値モデルとする概念自体は知られているが、これを量子観測の分野にあてはめる。


「観測行為」から「収斂」は「因→果」であり、「収斂」から「観測行為」は「因→果」であるという、4対1組のユニットを骨子として構造をモデリングする。量子の運動状態は観測結果によって決まる(主観者と関係性を持った時点で顕在化する)とはつまり、『鏡に付き当たったように』量子の運動状態が観測者の行為を決定すると同義となる。そしてこれは物理原理に照らしてより最もらしく聞こえるだろう。



実際に記述されるシステムは、このような同時発生的「因果ユニット」が複数の離散する次元を跨いだ格子連結的で複雑なモデルを形成するだろうと予想する。そして量子の非局所性は、これらのユニットの連結によるフレームとの空間的な関係に依存して決定すると思われる。

離在する要素間に非構造な関係性が生成されるのも、質量が偏在化するのも、上記のシステムに準位した励起エネルギー間の非共変的な連絡が素になっていると捉えることが可能ではないだろうか。


第三回行政刷新会議~科学事業評決の過ちとリスク ※11/26 加筆

2009-11-15 08:05:21 | Science
※ 11/22、民主党は行政刷新会議の事業仕分けで大幅削減とされた科学技術関連の概算要求維持を表明。特に事実上の凍結とされたスパコン分野の評決を全面撤回。当初の要求を通す考えを示した。当然ながら、あまりにも批判が多かったのだろうが、説明を遮るくせに、事業主側に一方的に説明責任を被せる態度は未だにナンセンス極まりない。仕分け側の「有識度」「事前調査」が皆無だと暴露しているに等しいだろう。それならなぜ事業主の説明を聞こうともしなかったのかと、「事業仕分け」そのものの手法に根本的な問題が浮き彫りとなった形と言える。



□ 行政刷新会議 「事業仕分け」 評決結果

>> http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/h-kekka/pdf/nov13kekka/3.pdf


□『科学』傷だらけ iPS細胞生んだ事業や科学未来館

>> http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009111402000066.html


「国が掲げる科学技術立国が揺らぎかねない」。十三日の行政刷新会議の事業仕分けで、科学技術関連の事業が続々とカットの判定を受けた。「不要不急の事業」を削ることが仕分けの目的とはいえ、将来、日本の科学技術研究を担う若手にも余波が及ぶ。「頭脳流出に拍車がかかる」。関係者に危機感が広がった。(中略)先端研究に助成する競争的資金事業は同機構や文部科学省などが行っているが、仕分け人は「重複しており、総予算が膨らんでいる」と判断。一元化も含めて縮小することを求めた。(中略)

◆『優秀な若手流出する』 奨励金『削減』若手研究者育成のための「特別研究員事業」。十三日の行政刷新会議の事業仕分けで「削減」の評決を受け、傍聴に訪れた東京都内の国立大大学院二年の男性は悔しそうに話した。男性は「ポストドクターが多すぎる問題ばかりが議論されていたが、その問題と研究者支援は別次元の話。制度が削減されたら、学者になれるのは金持ちだけ。国を恨んで海外に行く優秀な人材が続出するだろう」と事業仕分けの議論を批判した。



技術立国が技術投資を渋ったら、おしまいである。

連日行われている「事業仕分け」の意義と成果(?)について、天下り財団の縮小や不採算事業の見直しに限っては、個人的には少なからず評価できる部分はあったのだけれど、こればかりは看過できない。


あまりにも無知・拙速な評決に現場も戦々恐々としている。これについては至る所で反対コミュニティが結成されつつあるが、とりあえず私の身近でも科学者有志によって議論の為のサイトが設立されたので紹介したい。

http://mercury.dbcls.jp/w/


言いたいことは山ほどあるが、事業仕分けに倣って要点をシンプルに押さえよう。蓮舫氏の「スパコン、世界一になる必要あるのか。世界一になれなかった時のリスクヘッジは?」「納税者がトップレベル研究者にお金を払った分、納税者個人にもリターンをもらえないと納得できません」という発言に、仕分けチームの愚かしさが集約されている。



まず、スパコンについての言い分を喩えるなら、家計が逼迫しているからといって、東大に受かるかもしれない我が子に「数学は食って行くのに必要ない」などと言ってノートと鉛筆を取り上げる『だけ』のことをする(目的を失った教育支出だけが続く)、というぐらいナンセンスなことであり、これは単純化というよりも正にそういうことなのである。


その一端を担うのが競争的資金(若手研究者育成)の予算縮減である。もともと先進国の中でも少なすぎと言われていた研究者育成費を最大限に活かそうと、奨励金やインターン制の導入など、躍起になって人材育成の為の仕組みを開発して来た現場にとっても悪影響は免れない。ポスドク余りが叫ばれる現状は、決して育成費の無駄と計上されるべきではなく、寧ろ技術投資が「及ばなかった」ために受け皿が用意出来ないと捉えるのが相応しい。ベクトルが全く逆なのだ。


仕分け側は目先の台所勘定で国民の生活費、教育費における支援を謳ってはいるが、同時に技術振興の為の投資・雇用を潰すことで、肝心のはずの子供と国の将来性の芽を摘み取ろうとしているとしか言えない。

中でも、国際的に権威ある賞を受けるなど、早くも方々で成果が目に見える形になり、世界中の関心を集め始めている世界トップレベル研究拠点 (WPI)プログラムの予算縮減が特に痛い。ここまで批判的な材料を内包していて、今回の事業評決が通るとは信じたくは無い。おそらく内部の評価者すら仕分け人を説得できなかったであろう様子は、あの独善的な質疑応答を見れば容易に想像できることだ。

(※11/17追記…本日、「民間の有識者」の意見に財務省マニュアルによる「意図の介入」があることが明らかにされた。仕分け側が専門分野に「有識」であるという前提すら保障はなくなったのだ。)


(※ 11/17 先行きに対して対費用が著しいGXロケット開発の廃止など、仕分けの妥当性が認められる内容も確かにある。しかし、LNGエンジン開発については相当の技術力蓄積が認められ、一緒に潰すのはあまりにも尚早との声も。代替として挙げられるM-V系統のエンジンはコスト面で大きく問題がある。何よりロケット産業をMHI一社寡占状態にしてしまうことのデメリットも。仕分けでは他分野事業でも『勝ち馬』以外への投資は「ムダ」と切り捨てる傾向にあるが、これは発展競争互助の観点からもナンセンスで、非常に危うい結果を招きかねない。)


(※ 11/26 GXロケット廃止については、財務省が倍以上の税金投入額を記載した事実誤認の資料を提出していたことが明らかになった。更に、宇宙開発における本格実用に向けたアメリカ側の打診があった事実も伏せて『需要がない』と断じていたことが判明。仕分け人は意図的な虚偽情報を鵜呑みにして評決を行ったことになる。なにが「有識者」なものか。)
    ↓
今年11月上旬に、GX打ち上げを担当する米ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)社から、少なくとも2、3機のGX使用の意向が政府の宇宙開発戦略本部などへ伝えられていた。




そもそも日本のスパコンが国内外の生産に利用され、年間維持費の30倍のリターンがあるとされている事実さえ知らないのではないか?という疑問も挙っているが、そういう指摘すら遮って「事実誤認に基づく通達を言い渡すだけ」の仕分け内容なのだから救いようが無い。あちらは「合理的な必要性」を訴えるが、あのような検察が裁判官を兼ねるようなやり方では「合理的な議論の場にはなりえない」ことが問題なのだ。


更に科学事業評決には技術論が重要である。これを仕分け人は拒絶したが、これは収支や稼働率の数値だけを追う他の社会事業とは別次元の問題だ。特定の技術にどのような位置づけと可能性があるのか、それを抜きにしろと言われたら先端科学開発は行えないし、それをしない国家はあっというまに技術先進国から退行し莫大な将来損益を被るのは火を見るより明らかだ。

だいたい、専門知識のない政治家の為に、技術論において審理をする為の有識者がいるのだろうが、その政治家が事業主側の技術論からの異論を受け付けないというのは、全く持って理の通らない話だろう。仕分け側に専門知識を有する有識者がいるという「ポーズ」をとっても、それを行使する代表が全く理解してないのだから、上のような無恥な発言が零れるのである。


ランク一位が目的なのではなく、競争の齎す効果こそが重要だということも、投資部門の赤字は健全な企業である条件なのも、説明するにはあまりにも当たり前すぎて稚拙とも言える内容でもある。



事実、資源に乏しい日本が技術によって食べてきたことは今更説明するまでもないことだが、納税者の一人として私が言いたいことは、「国民の為を思うなら、そこは削らないでやってくれ」ということに尽きる。納税者はいわば「国際貢献する技術立国の国民」という、数値的なリターン以上のアイデンティティすら技術開発の恩恵によって享受しているのだ。

家電から軍事、医療やバイオといった先端科学まで、日本が開発に至った基幹技術は世界中で利用され、必要不可欠な生産性の軸を担っている。こうした貢献度を視覚化しようと、日本発の基幹技術の関わった文化の系統樹をアウトリーチとして提供するという発案も為されている。ここはやはり国民の理解が必要なのだ。そのための拠点として、まさに『科学未来館』の名も挙がっている。



対して、世界不況の発信源であるアメリカはどうかというと、科学政策の指針見直しによって伸びこそ抑えられたものの、予算は削られているどころか過去最高をマークしている。

□ アメリカの機能別非防衛研究開発の動向

>> http://www.aaas.org/spp/rd/histda09.pdf


これに倣って、日本でも今、"AAAS (American Association for the Advancement of Science)"に代表されるアメリカの理系支援団体のような機構の必要性が叫ばれているし、私も過去の記事でその有義性を訴えたことがある。スパコンに関しては、アメリカでは更にASCI(Accelerated Strategic Computing Initiative)などの政策的評価プロジェクトを財源として一気に日本を突き放しにかかっている。(これは核シミュレーションに急務性が認められるためという意見も)

ここで生じるリスクとは何かというと、ユーザとベンダーの結びつきが特に強固なスパコン事業においては、一度攫われた需要を呼び戻すことは数年がかりに渡って容易なことではないし、それによる特許の取り逃しや人材の流出といった、直接生産に関わる機会損失が長くに及んで計り知れないことだ。


そもそも将来にわたって安定的・精密な利用が保障できない分散コンピューティングを、スパコン領域の基礎研究の代替にするなど愚の骨頂である。仕分け人の有識者による「民間の視線」のつもりが、単なる「わかってるつもりの視線」で物言う弊害に及んだ最たる例と言えよう。

彼らは事情「通」でしかなく現場とは無関係の人々であるゆえに、自身の審理に客観的になれないのかもしれない。科学評決全般に及んでは、彼らの主張こそ曖昧な恣意と憶測に満ちていて、残念ながら事業主側以上の妥当性は見当たらないというのが私なりの客観的な評価だ。


近年日本の産学官連携プロジェクトが発展しづらい要因の一つに、やはり資金運用の多重構造化と投資不足がある。名目上のプロジェクトを計上して箱だけは用意するもの、そもそも雇う人員や設備が空っぽだったという問題が以前から取り沙汰されていたようで、民主党はそこを不正な資金流用と見て突いたつもりなのだろう。これは旧政府や当事業者側も大いに反省すべき点で、不透明な収支構造と非効率な予算配分は徹底的に見直し、一元的な資金運用を目指すべきだ。しかしあくまでも、正当な事業を行うには「予算が足りない」という現実の壁があればこそ、そこを更に絞るとなると話は別だ。


SPring-8の開発や設置に関しても、数千億クラスの事業である。そこには様々なしがらみや軋轢が生じても不自然では無いだろうが、それが齎すリターンは生産的な価値においてだけでなく、人間の行く末にすら関わる大変な意義がある。


スパコン投資についても、問題は予算配分と開発区分を国内ベンダーに「パイを切り分けた」という姿勢に効果が疑問視されていることであって、(※ 仕分け側の決定的な事実誤認はここに多い。日本は『ベクトル型』から世界のスタンダードに変わりつつある『スカラ型』の強力版に着手して、『ベクトル型』の分野も勝ち取ろうとしていたのである。主要ベンダー撤退の結果などではない。)発展的な競争を互助する為に、更に潤沢な投資を行うべきだった。あまつさえ、その対効果を一時的なマーケットのトレンドで量るなどは論外である。だからこその国の責務なのだ。

そして今回、民主党がしているのは、まさに基礎研究の齎すリターンを無視して「パイを切り分けるだけ」という行為そのものなのである。


clip: Information causality as a physical principle.

2009-10-23 00:37:45 | Science
□ 物理: 物理原理としての情報因果律

>> First Paragraph | Full Text | PDF

(Nature Physics Portal Alert)


Information causality as a physical principle
pp1101 - 1104
A broad class of theories exist which share the distinguishing characteristics of quantum mechanics but allow even stronger correlations. Here, the principle of 'information causality' is introduced and shown to be respected by both classical and quantum physics; however, it is violated by other models that resemble quantum mechanics but with stronger correlations. It is suggested that information causality may help to distinguish physical theories from non-physical ones. We suggest that information causality?a generalization of the no-signalling condition?might be one of the foundational properties of nature.
Marcin Pawlowski et al.
doi:10.1038/nature08400



非シグナル伝達原理における「ボブ」と「アリス」二者間コミュニケーションの情報量と量子相関についての説明。古典通信間において情報伝達が光速度を超えない様態を、確率予測や複製不可能定理といった特殊な量子論を用いず、定量的な情報理論で示しています。シグナル状態に拠らない情報因果律という概念を、非物理境界から物理境界への普遍的な過渡現象とする指摘が面白いです。


超光速な“通信装置”という表現は妥当か? "Device Makes Radio Waves Tra

2009-07-03 17:02:48 | Science
Polarization_2
(Polarization Synchrotron. Credit: Singleton, et al., via Current.com)



Device Makes Radio Waves Travel Faster Than Light (Universe Today)

>> http://www.universetoday.com/2009/06/30/device-makes-radio-waves-travel-faster-than-light/
>> http://arxiv.org/abs/physics/0405062 (abstract)

2009/7/1 20:12 - ロスアラモス国立研究所によって光速の壁を超えて電波を送信することを可能とする装置の開発に成功していたことが6月30日、同研究所が発表した研究論文により明らかとなった。

この装置はパルサーで生じているシンクロトロン偏光(Polarization Synchrotron)の原理を応用したもので、全長は約2メートル。安定的に光速の壁を超えて電波の送受信を行うことは困難なものの、装置間の同期を調節することによって光速の壁を超えて電波を送ることが可能だとしている。

研究グループでは、光速を超える速度で通信を行った場合、衛星経由で携帯電話を使用した場合でも遅延が生じなくなるとした上で、このシンクロトロン偏光の原理を次世代型携帯電話などに応用することを考慮している。
(訳文引用元:ロスアラモス研究所、光速を超える電波の送信装置の開発に成功 (technobahn))


"Einstein's Wrong?"

ここ数日、ネットコミュニティを中心に国際的に物議を醸している話題。結論から言うと、Technobahnもとい、ソースであるUniverse Todayのひどい飛ばし記事に思えるのですが、ここで重要なのが、記事で扱われている『光速』が、『群速度』であるという点。

その部分を敢えて説明してないのでは、天然のミスでなければ意図的な煽りと受け止められても仕方ないのですが...。



どういうことかというと、光(電磁波)の「パルス」の群速度が、一定の条件下でセシウムやフォトニック結晶といった特殊な媒質中を「真空中の光速度」を超えて伝播するということは、現代物理学では今や常識的な観測事実となっています。アインシュタインの相対性理論が「光速度」を壁としているのは、質量及び運動量を持つ物体に限り、電磁波の伝搬速度を制限するものではありません。


多くの人の関心事なのが、光速度を超えることによる因果律の矛盾、つまりタイム・パラドクスの発生の有無ですが、シンクロトロン偏光を介した「群速度」というのはデバイス間の偏極を瞬時に伝えるようなものであり(単子が移動してるわけではなく、空間のエネルギー状態が相対的に変位する)、「因」がなければ「果」が生じないメカニズムなので、心配のタネにはならないのです。



以上を踏まえて、この装置を使って「光速を超える情報伝達」が可能なわけでないということを断る必要があるでしょう。

まず第一に、光速を超える群速度が生じるパルスを「安定的に実現」する為の制御系や、伝達される量子情報の決定そのものが、あくまで古典的情報伝達系を介している(通常通り「光速」の制約によってスポイルされる)ため、情報を担う信号そのものが光速を超えることはないということ。

この記事で言うと、「装置間の同期を調節することによって」少なくとも、ここで光速の支配下に戻ってしまうわけですね。

(※パルスの有無自体を「何かの合図」のような一次的な情報として捉えようとしても、固有のパルスの立ち上がりである前面速度は、光速度の二乗を群速度で割ったものであり、検知装置と発信元の関係性の壁は光速のままである。実際に観測されている群速度の値である光速の300倍だとしても、前面速度はc^2/300cに留まる。)


第二に、これは電磁気学の基礎レベルですが、電磁波を利用した情報伝達のための群速度はエネルギー伝搬速度と等しくなり、電磁場における分散関係によって光速を超えることが原理上不可能となってしまいます。



結局どう転んでも、従来の電波を利用した通信よりも「高速な」レスポンスを計ることが可能な通信装置への足がかりというのが肝のレポートでしかないのですが、衛星等を用いた長距離間通信において、超光速のパルスを具体的にどう処理して高速なシステムに反映するのかというとブラックボックスのままなんですよね。論文では空気中におけるチェレンコフ放射について言及されていますが...。


例えば、応用例として挙げられてる次世代携帯電話通信では、衛星を介しても減衰が少なく広帯域な通信が可能になるとはありますが、これは「電波が光速度より速く放射される」というよりも、シンクロトロン・デバイスの同期特性によって超光速のパルスが生じているものだと表現すべきと思われます。

ハッカーに対して強い秘匿性を持つという話は、デバイスそのものの制御系をハックされてしまえば、傍受される危険性は変わらないとさえ感じます。


もっとも現実的なレベルなのは、半導体間の伝送と、化学療法における腫瘍の同定くらいでしょうか。いずれも超光速パルスによる単位時間あたりの情報伝達率(レスポンス)の高効率化によりもたらされるもので、いずれにしろ「光速を超えた通信装置」とは形容し難いものがあります。



なんにしろ、仮に実現するとすれば最重要な次世代インフラとして高い期待を委ねられる技術構想には違いなく、今後も注視したいですね。


AIMResearch site opening today.

2009-06-29 18:41:40 | Science
Wpiaimr_3
(Laboratories of the Advanced Institute for Materials Research, Tohoku University)



□ AIMResearch.

>> http://research.wpi-aimr.tohoku.ac.jp/

今も昔も、文明社会にとって最も基礎的・重要なマテリアル分野において、世界最先端を走ると謳われている、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)。本日、その研究レポートや活動報告を、プレスリリース等と共に国際的に逐一発信する為のサイト、及び出版物が"AIMResearch"として立ち上げられました。


WPI-AIMRといえば、今年始め、『超伝導クーパー対の対称性』の観測による直接決定を世界で初めて成し遂げたことも記憶に新しく(具体的には、鉄系高温超伝導体における『電子-ホール対称性』及び鉄原子の電子軌道の差異によって発現するマルチバンド超伝導の観測)、その研究動向へ世界的な関心の高まりに応えるものとして開設されたのでしょう。



2007年、文部科学省の『世界トップレベル国際研究拠点形成促進プログラム』構想の第一陣として設立されたAIMRですが、今のところ、他の4拠点から頭一つ抜けた業績を誇っていると言って良いかもしれませんね。

AIMResearchでは、同機構が年間発表する数百報もの論文の中から、更に選り抜かれたレポートのハイライトをタイムリーに掲載していくということで、ウェブリソースとしての今後のコンテンツ展開も楽しみです。



□ Latest Reserch Highlights.

Titanium coming out on top - Published in Science
High-resolution electron microscopy settles the problem of the atomic structure at the surface of titania, an important catalyst material
http://research.wpi-aimr.tohoku.ac.jp/eng/research/522


In the zone - Published in Proceedings of the National Academy of Sciences
Nanoscopic shear zones have been identified as responsible for plastic flow in bulk metallic glass
http://research.wpi-aimr.tohoku.ac.jp/eng/research/523


Poacher turned gamekeeper: From insulator to superconductor - Published in Nature Materials
An insulating material has been converted into a superconductor using only an electrical field ? without the need for chemical doping
http://research.wpi-aimr.tohoku.ac.jp/eng/research/524




砂漏の生命 - ghost in a sandgrass.

2009-06-26 06:05:24 | Science
人間が「自我」や「意識」と呼ぶ処のもの、即ち「心」の実存を捉えるにあたって、「死」あるいは「忘却」は避けては通れない要素である。

心によって演繹的に情報という形態を付与される心という存在の循環性は、その本質をパラレルな構造に転写することによって俯瞰可能になる。「心が存在するかどうか」ではなく、「心を定義する」座標次元へのジンバル転回だ。



夥しい量の砂粒が敷き詰められたガラスケースを想像してみてほしい。その砂の一粒一粒が、宇宙の森羅万象を発現するn次元要素(n>0)と置いてみると、単位的環としての総体に対して標数となる個々の砂粒の挙動は、準同型の素環を為す。


このような空間において、人間という要素にとって心は内側に秘された概念的な存在ではなく、万物の振る舞いを決定する一要素として外側に並列される。自明なことに、自我と意識、精神とされるものは絶えず外界と相互作用して発現するものであり、物質に一元的に準位し共変するものである。



では「自我」とは誰のものであろうか。

これらの砂を敷き詰めたケースの底を破断すると、砂の摩擦運動による粉体流が発生する。媒質としての砂の流れには固有の構造が発生するが、ここで重要なことは、サンドケースというdomainの外側に流れ落ちる砂の運動が、系の内部の粉体流の構造を決定するという様態にある。


最初に砂のケースを単位的環と置いたのは、物質現象と精神活動の間にある可換性を明白にする為であるが、サンドグラスは宇宙の総体の例えであると同時に、その粉体流のクラスターにhomomorphic(準同型写像)を持つものとして表現するものである。

ドメインの外側へと落ちる砂は内部の相を時間依存的に破断し、また形成している。さながらサンドグラスの内側に魂を宿すかの如く、「失われることによって発現している」のである。砂を落とす現象は重力に拠るものであるが、ここではエントロピーによって引き起こされるあらゆる相転移への定向性と置き換えて頂きたい。



「死と忘却」・・・意識が忘却の賜物であるように、サンドグラスの中の死は、位相的かつ時間的に生者の振る舞いに写像される。このグラスケースはあるいは、宇宙の中にある個への回帰的な逆写像、自己同型と捉えられる。ここで命題が循環する。

「心」の座す所とは何か。


「他者(自己)の忘却」が「自己(他者)の意識」を構築するとは理解出来ても、日常の感覚においては、その関係性が"n次元連結的"であるとまでは及ばないかもしれない。これはユングによるところの集合的無意識は全く別の概念である。それでは、「自己の死」は、系の内部に散逸する自己にとってどのように反映されるのか。自ら至ることによって持ち出せない場所、答えはそこにしかない。


因って人間がそれぞれ主観する自己意識は共有のものであり、同時に固有の存在でしか有り得ない。ただ、他者の死は我々と共にあり、忘れられることによって思い出されている。「心」とは、そうして普く熾されるところのものなのだ。




□ clip.

工学:自由落下粉体流の破断とクラスター形成の高速追跡
High-speed tracking of rupture and clustering in freely falling granular streams
pp1110 - 1113

Freely falling granular streams break up into characteristic droplet patterns similar to liquid flows, but the clustering mechanism remains unresolved. Here, imaging and microscopy data reveal that tiny cohesive forces are responsible, corresponding to a granular surface tension some 100,000 times weaker than in ordinary liquids.

John R. Royer et al.
doi:10.1038/nature08115
Abstract: http://forcast.emailalert.jp/c/abrvadczjpfO6Lbb
Article: http://forcast.emailalert.jp/c/abrvadczjpfO6Lbc




粉粒体媒質:砂の流れの中の構造
Granular media: Structures in sand streams pp1064 - 1065

An ingenious experiment that involves dropping a costly, high-speed video camera from a height of several metres reveals how free-falling streams of granular matter, such as sand, break up into grain clusters.

Detlef Lohse and Devaraj van der Meer
doi:10.1038/4591064a
Standfirst: http://forcast.emailalert.jp/c/abrvadczjpfO6LaB
Article: http://forcast.emailalert.jp/c/abrvadczjpfO6LaC