Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

Twitter @pkcdelta
https://www.facebook.com/GifuNeurology/

非定型パーキンソニズムを呈する自己免疫性脳炎/傍腫瘍性神経症候群 ―スコーピングレビュー―

2023年08月01日 | 自己免疫性脳炎
8月号の「臨床神経」誌に当科から2つの論文が掲載されます.1つ目は専攻医,山原直紀先生とともに,大量の論文を精読して執筆した論文です.先日,開催されたMDSJ@大阪の教育講演・ポスター発表で報告し,反響を頂いた内容です.ちなみにスコーピングレビューは,比較的新しい文献レビューの手法で,既存の知見を網羅的に概観・整理し,まだ研究されていない範囲(ギャップ)を特定することを目的としています.文献検索はシステマティックに行いますが,システマティックレビューよりハードルは低いです.今後,総説を書く場合にナラティブレビューと使い分ける必要があります.

さて取り組んだ2つのclinical questionは「非定型パーキンソニズム(MSA,PSP,CBS)のなかに自己免疫性脳炎/傍腫瘍性神経症候群が含まれているか?(含まれる場合,陽性となる抗神経抗体はなにか?)」「どのようなときに自己免疫性脳炎/傍腫瘍性神経症候群を疑うべきか?」です.

前者については,非定型パーキンソニズムを呈する多数の自己免疫性脳炎/傍腫瘍性神経症候群が存在し,非定型パーキンソニズムの種類ごとに多数の抗神経抗体が報告されていることが分かりました.



後者については,亜急性・急性の経過をたどる例,脳脊髄液検査にて細胞増多,蛋白上昇,OCB 陽性,IgG index 上昇を認める例,腫瘍を認める症例の報告が多く,臨床経過の把握,脳脊髄液検査,全身の腫瘍の検索は重要と考えられました.さらに,40 歳未満の若年発症例,体重減少を認める症例,神経変性疾患ごとに特徴的な画像所見を認めない症例は注意が必要です.オープンアクセスです.詳細は下記からご覧いただけます.

山原直紀, 木村暁夫, 下畑享良.非定型パーキンソニズムを呈する自己免疫性脳炎/傍腫瘍性神経症候群―スコーピングレビュー―.臨床神経doi.org/10.5692/clinicalneurol.cn-001871


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« CANVASの鑑別診断としてSCA27... | TOP | 弓道競技者を悩ます「もたれ... »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 自己免疫性脳炎