Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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IgLON5抗体関連疾患の最近の進歩

2024年06月07日 | 自己免疫性脳炎
Curr Opin Neurol誌にIgLON5抗体関連疾患の最新の知見に関する総説が報告されていますので以下にまとめます.

1)臨床
慢性の経過をとること(ただし25%は亜急性)に加え,MRIの信号異常(5%未満),脳脊髄液の細胞増多(20~30%),蛋白の軽度上昇(40~50%)を必ずしも伴わないないことから,さまざまな神経変性疾患やstiff-person症候群などと誤診されることがある.



◆免疫療法は一般にNMDAR脳炎,LGI1脳炎などより有効ではないが,迅速に開始できれば改善しうる.
◆診断時の血清,脳脊髄液NFL高値は予後が悪い.
IgLON5 composite score(ICS)というスケールが開発された.さまざまな症候をカバーする5つのドメイン,17症状が含まれる(総スコアは0~69).(doi.org/10.1212/WNL.0000000000209213



2)病理
◆脳幹におけるタウ沈着は罹病期間の長期化と相関する → タウ沈着は病態の後期または2次的な現象である可能性が示唆される.
◆TDP-43の沈着を神経細胞とミクログリアに認めることがある.
◆早期例で,神経細胞におけるMHCクラスIの上昇,ミクログリアの活性化,B細胞やT細胞の血管周囲や実質の炎症性浸潤,ニューロピルにおけるIgG4の沈着が認められる → 病態の早期における自己免疫機序の関与.



3)病態機序
◆IgLON5抗体の主なサブクラスはIgG4であるが,ほぼ全例でさまざまな量のIgG1も有する.
◆ラットの海馬ニューロンの培養を用いたin-vitro実験では,IgG1が不可逆的内在化の原因である.
◆IgLON5抗体は培養海馬ニューロンにおいて細胞骨格の変化を招くが,それがタウオパチーを誘導する可能性がある.

Gaig C, Sabater L. New knowledge on anti-IgLON5 disease. Curr Opin Neurol. 2024 Jun 1;37(3):316-321. (doi.org/10.1097/WCO.0000000000001271

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