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Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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軽症パーキンソン病患者を特定疾患から除外してよいのか?

2006年08月11日 | パーキンソン病

 「特定疾患」とは,原因不明,かつ治療が困難であり,病状も慢性に経過し社会復帰が困難もしくは不可能であり,医療費も高額で,経済的な問題や介護等家庭的にも精神的にも負担の大きい疾病を指す.また症例が少ないことから全国的規模での研究が必要な疾患と定義される(難病情報センター).この制度は,難病の病態把握と患者支援のため1972年度に開始され,98年に医療費を一部自己負担する制度,2003年には所得と治療状況に応じた段階的な自己負担制が導入された.現在,特定疾患は121疾患あり,うち45疾患の医療費は公費負担助成の対象となっている.

 さて現在,特定疾患のうち,患者数が多い2つの疾患,パーキンソン病と潰瘍性大腸炎において,公費負担の対象者の範囲の見直しが検討されている.以下8月10日付共同通信社ニュースのコピーを示す.

  厚生労働省の特定疾患対策懇談会は9日,患者の医療費が公費負担されている45の特定疾患のうち,パーキンソン病と潰瘍性大腸炎について公費負担の適用範囲を縮小することを決めた.

 患者数が特定疾患の指定の要件である5万人を大幅に上回っているためで,公費負担額の縮小が狙い.懇談会は軽症患者を公費負担の対象から除外する方向で検討を進める見通し.今後,患者団体の意見を聞いた上で決めるとしているが,患者団体は反発している. 

 患者数が5万人以上の特定疾患は,潰瘍性大腸炎(約8万人),パーキンソン病(約7万3000人),全身性エリテマトーデス(約5万2000人).同省によると,この3疾患で公費負担総額約770億円の約4割を占めている. この日の懇談会では,パーキンソン病と潰瘍性大腸炎は,特定疾患からは除外せず,公費負担の対象者の範囲を見直すことで一致した.全身性エリテマトーデスは,患者数がここ数年,横ばいになっていることから,今回の見直しの対象にはしないことになった.

 厚労省疾病対策課は「患者団体などの意見を聞いた上で議論を取りまとめ,できるだけ早く適用したい」としている.

 まず気がつくのは,軽症患者だからといって治療費が少ないわけではないということだ.近年のガイドラインでは,高齢者を除くパーキンソン病患者ではドパミンアゴニストから治療を開始することを推奨しているが,例えば塩酸プラミペキソール(ビ・シフロール)で治療を開始するとして,1錠(0.5mg)=204.50円,維持量(標準1日量1.5~3mg)として,204.50×(3~6錠)×30日で,18,405~36,810円もかかってしまう(薬価が高すぎる!).本当に困っている人に負担を強いて,数億円のお金を節約するという政治でよいのだろうか.「平成18年度診療報酬改訂におけるリハビリに対する処遇」の際にも思ったが,日本の政治家や官僚は財政の建て直しのために,もう少し叡智を絞ることはできないのだろうか.

 さあ,皆さんはどう考えるだろうか?

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7 Comments

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はじめまして (ぴょーろけ)
2006-08-11 16:57:14
私はクローン病です。



私もほんとそう思います。

軽度だからと言って治る訳ではないわけですから・・・ただ患者数が多いからって理由が理解できませんよね。
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またまたこんにちは。 (ぱきぱき)
2006-08-12 02:58:50
しつこくコメントをつけてすみません。早速のパーキンソン病関連ニュース。。。でもホントあんまり嬉しいニュースじゃないですね。私はドイツに住んでいるので直接関係はないのですが、日本は節約するところを間違っていると思います。あーあ。友の会に頑張ってもらうしかないですね。ところで、薬価ですが、高いです!こちらでもシフロール0.38mg100錠で186.55ユーロ(25000円弱)ラサジリン(Azilect)1mg100錠で414.68ユーロ(55000円!)最近使い始めたノイプロ(ロチゴチン)は6mg28枚で273.93ユーロです。支払いの上限が10ユーロなので10ユーロずつしか払ってないんですけど、元々の値段を見るたびに目ん玉が飛び出しそうになります。西川きよしですよ、ほんとに。。。長々失礼しました。では。
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コメントありがとうございます (pkcdelta)
2006-08-13 05:17:24
ぴょうーろけさん,コメントありがとうございました.私も患者数が多いからという理由は理解できません.



ぱきぱきさんもコメントありがとうございます.友の会のホームページには「これに対して事務局には、会員から、朝から問い合わせが相次いでいる。薬代が高くなり、生活が苦しくなることなどを訴えている。皆さん 厚生労働省へ私達の声を届けましょう。」とありますが,どう届けるのか,具体的なところは決まっていないようですね.



ちなみにラサジリンはエフピーと同様,MAO阻害剤で,ロチゴリンは経皮吸収型のドパミンアゴニストですが,やはり高額なのですね.日本ではいつになったら使えるのか(使えないのか)分かりませんね.またドイツの情報教えてください.
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どうでしょうね (mai)
2006-08-16 20:40:13
もともと「福祉事業」ではなく、「研究事業」ですから・・・  患者数が少ないから、発病の原因究明や治療の成果のデータをそろえるために、診断書を提供してもらい、その見返りとして金銭的援助をしているんです。



上にも書かれているとおり、難病は121疾患あります。ですから、もともと公費負担になっていない121-45=76疾患の人たちからすれば、「どうして45疾患だけ?」と感じているはずです。



症状が軽く(一時的に治まっている状態であったとしても)、ある程度の収入ある患者も公費負担になっている現状は、やはりおかしいと思います。(念のため断っておきますが、家族がパーキンソン病です)



治療費が多くて大変なのは、45疾患の人達だけではありません。難病だけではなく、例えばがん患者などもそうです。



それらをすべてひっくるめて、「治療費が大変な人には公的に補助する」のなら賛成ですが、今回のケースは制度上やむをえないものとして解釈してます。



医療費が大変なら、発病前に万が一に供えて医療保険を多めに入っておくという手段もあります。

「福祉予算を削る」=「何でも反対」という主張は賛同できかねます。



それから、「(生活保護を申請しなければいけないくらい)本当に困っている人」には公的な援助があるのではないかと思います。
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maiさんに賛成します (Tarashi)
2006-08-20 02:19:26
医師が書く調査書という書類の分類名からして、これが単に患者の負担の助成だけでないことを示しています。あくまでも give and take だと思っています。さらにYahr I,IIでもretropulsionがあることにして、しかも介助が必要なことにして申請している患者のいかに多いことか(これは医師が患者思いであるからだと思いますし、実は僕も・・)。maiさんの議論のように、病気に差別をつけている現状のほうがおかしいかと。白血病や腫瘍はお金をはらい、パーキンソン病なら払わなくていいという合理的説明は?つまり、病気をもつ病者そのものに対して厚く広く助成が必要だと思います(多分やってくれないでしょうけどね)。ついでにCIDPのときに、東京都民なら助成されるのって皆さんご存知ですか?
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コメントありがとうございます (pkcdelta)
2006-08-20 21:06:35
maiさん,コメントありがとうございました.tarashiさんもお久しぶりです.ご指摘の点,ごもっともだと思いました.公的負担になっていない難病患者さんとの不公平の問題は,無視することができない重要な問題であると私も思います.また,その背景に,特定疾患は「福祉事業」ではなく,あくまでも「研究事業」であるというgive and takeの考えがあるということも承知しています.

しかし,公的負担になっていない難病との不公平の問題は,本来,この制度ができるときに論じるべき問題であると思います.「特定疾患制度=研究事業」という考え方についても,そもそもあの程度の調査票を用いて,いまどき,どんな研究ができるのか不思議に思います.毎年,時間や労力を使ってせっせと調査票を記入して,それが翌年にでも臨床の場にfeed backされる情報として戻ってくるのであれば,それこそgive and takeと我慢もしますが,実際にはどうでしょう?私は実際には「特定疾患制度=福祉事業」だと思っていたから,こつこつと書類を書いていたのです.

私は海外に暮らしていたときに感じたのですが,広大な国土や資源を持たず,教育制度やモラルも怪しくなっている日本という国は,今後,ふたたび豊かになることはないのではないかと思いました.限られたパイを分配するとき,その大部分を勝ち組という強者が取ってしまい,残されたわずかなパイをいわゆる弱者で分配するのが今の日本だと思います.パーキンソン病に罹ったため昔のように働けず会社を解雇されたひと,決して多くない年金で生活していたにもかかわらずパーキンソン病を発症し不安がるひと,私が今年,特定疾患の書類を書いた人はそんな方ばかりでしたので,今回のような記事を自然と書いてしまいました.もちろん,なかには裕福な人もいたのかもしれませんね.でも私が言いたかったのは,国家が支出を節約するにしても,リハビリ期間の短縮とか,特定疾患事業の縮小という弱い立場のひとに負担を強いる政策は,本当に「最後の最後」にしてほしいということです.それともその「最後の最後」が,すでに日本に訪れたと考えるべきなのでしょうか.60歳発症のパーキンソン病の患者さんに最初からL-DOPAを処方するなんてことになってしまうのでしょうかね.

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理性では。。。 (にっきー)
2008-05-25 20:30:02
maiさんの言われること多分一般の健康な方
もみな同じ気持ちでしょうね。

でも患者の気持ちに成れば考えが変わりますよ。
たしかに何の援助もなく大変な思いをしてる
難病患者の方ご家族の方特に最近増えている
小児の珍しい難病が増えていて保険も利かない
治療に大変な思いをしている人々がいます。

私は軽度の若年性のパーキンソン病で
そういう方々に申し訳ないと思いますが、
この病気はとても複雑な病気で家族でさえ
理解しがたい所がありますので仕事をしたくても
出来ないパーキンソン病の人を雇うんだったら
他の障害者を雇ったほうがいいといわれる。

日にいくつもの症状を毎日乗り越えて
耐えて頑張っている私たちです。私は
もらうのが間違っているとは思わない
健康な人にはわからないと思います。
私たちだって肩身が狭くて辛いんです。
でも上の人たちが勝手に作った制度だけど
特定疾患が取れたらどれだけ気持ちが軽く
なるかお金だけではないのです。
病気が進行して特定疾患が取れて病気が
進行したのを悲しむより薬代が掛からなくなり
明るくなった方がたくさんいらっしゃいます。




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