Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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うとうとした時,ビクッとするのはなぜ?

2011年12月17日 | 睡眠に伴う疾患
新潟ローカルのテレビの視聴者からの疑問に答えるコーナーに出演させて頂きました.前回は「アイスクリームを食べるとなぜ頭が痛くなるの?」という質問でしたが,(なぜアイスクリームで頭痛が起こるか?を参照),今回は「うとうとした時,ビクッとするのはなぜ?」でした.

答えられず,勉強しました(笑).睡眠障害国際分類第2版(ISCD-2)を読むと,Ⅶ章の「孤発性の諸症状,正常範囲と思われる異型症状,未解決の諸問題」のなかの「5.睡眠時ひきつけ(睡眠時びくつき)」,英語で言うところのsleep starts(hypnic jerks)に相当するようです.診断基準があって(!)「A.睡眠開始に短い筋攣縮が突然起こり,主として足や腕であること.B.以下の少なくとも1つを伴うこと(主観的な転倒感,閃光感,入眠時の夢).C.他の睡眠障害や身体・神経・精神疾患,薬物使用の除外」だそうです.さらに調べると起こりやすい体位があって,椅子などに座って寝ているときに起こりやすく,またカフェインの過剰摂取,激しい肉体労働,情動ストレスが誘因になるそうです.

実は私もときどき経験します.新幹線でうとうとしてビクっとなり,布団のなかで起こるときは何か床下に落下する感じがします(たしかに落下感という記載もあります).頻度については,睡眠障害国際分類第2版には60~70%と書かれていますが,たまたま昨日の私の学生講義のテーマが睡眠医学であったので学生に聞いたところ,9割以上の学生さんが経験があると答えていました.

教科書的にはあらゆる年齢に認められ,性差もないそうです.病的な意義はないものの,あまりに強いと寝入るのが怖くなって慢性的な不安を生じることもあるそうです.鑑別すべき病態として,四肢の筋収縮が周期的に生じる「周期性四肢運動症」が考えられますが,これは明らかに症状が違っていて,足の筋収縮がゆっくり反復します.自分ではあまり分からず,隣に寝ているひとからよく足を動かしているとか指摘されて気が付きます(レストレスレッグス症候群やナルコレプシー,REM睡眠行動障害に合併することも多いです).

勉強になりましたが,何のためにこの現象はあるのでしょうね?


睡眠障害国際分類 第2版(睡眠障害を勉強するのに一番良い教科書の1つと思います)
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2 Comments

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ありがとうございます (下畑 享良)
2011-12-17 21:01:41
OSさん,おっしゃるとおりです.国際分類の本には「睡眠前期ミオクローヌス」とも呼ぶとかかれていました.表面筋電図では,短い(75-250 ms)高振幅電位が単独あるいは連続して認められるそうで,脳波ではawakeかNREM stage 1で,ときに陰性頭蓋頂鋭波が認められるそうです.ただ鑑別診断の項ではかなりミオクローヌスを細かく分類していて,
生理的部分睡眠時ミオクローヌス
断片的ミオクローヌス
乳幼児期の良性睡眠時ミオクローヌス
入眠時固有脊髄ミオクローヌス
との比較が記載されています.難しくてよく理解できませんが,いろいろなタイプのミオクローヌスが睡眠中には起こりうるということなのでしょうか.
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びくっ (OS)
2011-12-17 20:09:21
いつも、楽しく拝見しています。
この現象は、多くの場合、入眠時ミオクローヌスと解釈されていると思います。
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