
日本では聞きなれないがアメリカにはENERGY DRINKと呼ばれるドリンク剤がある.普通のジュースではなく,集中力を高めたり生産性を上げるのに効くと言う.今回,このENERGY DRINKを飲んで数時間後に脳幹梗塞,クモ膜下出血を来たした若年男性が報告されている.
このひとはアメリカ在住21歳男性で,1型糖尿病と気管支喘息の既往がある.友達とハイキングに出かけ,気合を入れようと思い(?)XS ENERGY DRINK (Cranberry-Grape味) 250mL缶を初めて飲んだ.その数時間後,激しい頭痛と半身の失調に襲われた.神経学的には羞明と著明な半身の失調を認め,画像上,橋梗塞とクモ膜下出血を認めた.血管造影では中・後大脳動脈の複数領域における脳血管の収縮と拡張の所見が認められた.動脈瘤はなかった.このため血管炎や凝固異常,薬物中毒の可能性を疑い,検査を進めたがこれらを示唆する所見はなかった.
そこで主治医はENERGY DRINKの脳血管障害への関与を疑ったわけである.Websiteによるとこのドリンクにはいろいろな原料が入っていて,とくに問題となったのは,「適応原(adaptogen)作用」をもつ物質であった(adaptogen blend;eleutherococcus senticosus, panax ginseng, panax quinquefolium, echinacea purpurea, schisandra, astragalus, reishi).「適応原」は聞きなれない言葉だがWebで調べると,中国医学で使われる言葉であって,なんでも有害な労動条件下で働いても能力が衰えない作用を持つ物質を指すようだ.さらに驚いたのはそれぞれの成分名で,eleutherococcus senticosus(シベリア人参),panax ginseng(高麗人参),panax quinquefolium(アメリカ産朝鮮人参),echinacea purpurea (ムラサキバレンギク),schisandra(朝鮮五味子),astragalus(レンゲ),reishi(霊芝)と,ちょっと耳にしたことがあるようなものばかりである.実はこのうち,シベリア人参と高麗人参,朝鮮五味子は交感神経刺激作用を持つ.さらにすべてが血管収縮作用を持つフェニルプロパノイド(phenylpropanoid)を含有している.事実,2000年,FDAは脳血管障害発症の危険があるとしてフェニルプロパノイドの使用を控えるよう勧告を行っている.もちろん,この1例を持って適応原と本例の脳血管障害の因果関係を断定することは困難ではあるし,本例が1型糖尿病といったリスクを有していたことがどう関与したかも分からない.しかし,適応原は簡単に購入できるものなので,原因不明のvasculopathyの鑑別診断の際には日本でもこういった原因も考慮に入れたほうが良いのかもしれない.
Neurology 65; 1137-1138, 2005
http://www.thebevnet.com/reviews/xsenergy/
このひとはアメリカ在住21歳男性で,1型糖尿病と気管支喘息の既往がある.友達とハイキングに出かけ,気合を入れようと思い(?)XS ENERGY DRINK (Cranberry-Grape味) 250mL缶を初めて飲んだ.その数時間後,激しい頭痛と半身の失調に襲われた.神経学的には羞明と著明な半身の失調を認め,画像上,橋梗塞とクモ膜下出血を認めた.血管造影では中・後大脳動脈の複数領域における脳血管の収縮と拡張の所見が認められた.動脈瘤はなかった.このため血管炎や凝固異常,薬物中毒の可能性を疑い,検査を進めたがこれらを示唆する所見はなかった.
そこで主治医はENERGY DRINKの脳血管障害への関与を疑ったわけである.Websiteによるとこのドリンクにはいろいろな原料が入っていて,とくに問題となったのは,「適応原(adaptogen)作用」をもつ物質であった(adaptogen blend;eleutherococcus senticosus, panax ginseng, panax quinquefolium, echinacea purpurea, schisandra, astragalus, reishi).「適応原」は聞きなれない言葉だがWebで調べると,中国医学で使われる言葉であって,なんでも有害な労動条件下で働いても能力が衰えない作用を持つ物質を指すようだ.さらに驚いたのはそれぞれの成分名で,eleutherococcus senticosus(シベリア人参),panax ginseng(高麗人参),panax quinquefolium(アメリカ産朝鮮人参),echinacea purpurea (ムラサキバレンギク),schisandra(朝鮮五味子),astragalus(レンゲ),reishi(霊芝)と,ちょっと耳にしたことがあるようなものばかりである.実はこのうち,シベリア人参と高麗人参,朝鮮五味子は交感神経刺激作用を持つ.さらにすべてが血管収縮作用を持つフェニルプロパノイド(phenylpropanoid)を含有している.事実,2000年,FDAは脳血管障害発症の危険があるとしてフェニルプロパノイドの使用を控えるよう勧告を行っている.もちろん,この1例を持って適応原と本例の脳血管障害の因果関係を断定することは困難ではあるし,本例が1型糖尿病といったリスクを有していたことがどう関与したかも分からない.しかし,適応原は簡単に購入できるものなので,原因不明のvasculopathyの鑑別診断の際には日本でもこういった原因も考慮に入れたほうが良いのかもしれない.
Neurology 65; 1137-1138, 2005

http://www.thebevnet.com/reviews/xsenergy/