これまでMSAにおけるparkinsonismの進行速度に関する報告はなく,その予後予測は困難であった.今回,ヨーロッパの多施設からMSA-Pの自然歴に関する研究が報告された.対象はclinically probable MSA-Pとし,初診時と一定の経過観察後の間で,Hoehn -Yahr分類,Schwab and England ADL scale(SES),UPDRS-III(運動機能の項目)を比較した.結果として,症例は38例で(年齢63.2±7.4歳,平均罹病期間4.1±3.0年),平均経過観察期間は11.8ヶ月.UPDRS-IIIの変化は10.8点(95% CI; 8.6-12.9)であり,これは年28.3%の増悪速度に相当した.また進行速度に影響を与える要因としては,初診時のmotor disabilityが軽度であること(H-Y分類やSESで評価),初診時にUPDRS-IIIの点数が低いこと(43点以下と定義),さらに罹病期間が短いこと(39か月未満と定義)であった.性別や発症年齢,初診時年齢は影響しなかった.
以上の結果はMSA-Pの進行速度が高速であること,さらにその進行速度は一定ではなく,病初期において一層急速であることを示している.いずれにしても本報告はMSA-Pの自然歴のデータとして重要であり,今後,何らかの治療介入の効果を判定するときに有用となろう.しかし,MSAに関しては本邦と欧州でその病型頻度に大きな違いがあり(本邦では圧倒的にMSA-Cが多い),その表現型には遺伝的背景の関与も示唆される.つまり,本邦でも独自にMSA-Pの自然歴を検討する必要があるだろう.
J Neurol 252; 91-96, 2005
以上の結果はMSA-Pの進行速度が高速であること,さらにその進行速度は一定ではなく,病初期において一層急速であることを示している.いずれにしても本報告はMSA-Pの自然歴のデータとして重要であり,今後,何らかの治療介入の効果を判定するときに有用となろう.しかし,MSAに関しては本邦と欧州でその病型頻度に大きな違いがあり(本邦では圧倒的にMSA-Cが多い),その表現型には遺伝的背景の関与も示唆される.つまり,本邦でも独自にMSA-Pの自然歴を検討する必要があるだろう.
J Neurol 252; 91-96, 2005
