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Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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パーキンソン病の診断にMIBG心筋シンチは切り札になるか?

2005年01月19日 | パーキンソン病
PDでは,黒質以外に青斑核・迷走神経背側核にも変性が生じる.青斑核ニューロンはノルアドレナリン含有細胞であることから,PDではノルアドレナリン系の機能障害も存在する.近年,心臓の交感神経機能を評価する目的で使用されている[123I] meta-iodobenzylguanidine (123I-MIBG)の心臓への集積が,PD初期から高率に低下するとの報告が相次いだ.123I-MIBGはグアネチジンの類似物質であり,交感神経末端においてノルアドレナリンと類似の分泌・取り込み・貯留を示す.つまりこのトレーサによりPDにおけるノルアドレナリン機能の障害を早期から検出しているわけである.しかしPDの早期診断に有用と考えられるものの,どれだけ特異性をもってPDの診断に有効か,すなわちこの所見はPDに特有の所見であるのかについては不明であった.
今回,日本医大らのグループによりMIBG心筋シンチのsensitivityならびにspecificityが報告された.対象は391例のパーキンソン様症状を呈した外来患者で,経過観察により正確な診断確定を行っている.これら患者以外に年齢をマッチした健常対照者10例にもMIBG心筋シンチを行った.心/縦隔取り込み比を計算し,健常対照の2SD以下を異常とした.
結果として,PD症例の87.7%で取り込み低下を認め,H-Y分類Ⅲ以上では全例で取り込み低下を認めた(ステージの進行に従い,異常者の割合が増加).PD患者におけるsensitivityならびにspecificityは,それぞれ87.7%と37.4%であった.驚いたことにPD以外の診断がついた患者の66.5%でも取り込み低下が認められた(PD以外の診断とは,MSA, DLB, PSP, SDAT, CVDのこと.このうち,DLBやSDATはPDと同程度に低下,MSAのみ低下なし).
以上の結果は,MIBG心筋シンチはPDの診断においてsensitivityは高いものの,その特異性はきわめて低く,取り込み低下を認めたからといってPDと診断することは非常に危険であることを示唆するものである.唯一,PDとMSAの鑑別には有用なのかもしれない(ただしMSA-PとMSA-Cで差があるかについては触れていなかった).

JNNP 76; 249-251, 2005
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