Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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椿忠雄先生の蔵書とことば

2021年04月13日 | 医学と医療
写真の本は,新潟水俣病を発見し,SMONがキノホルムによる薬害であることを明らかにした,日本の神経内科学の父のひとり,椿忠雄先生の蔵書です.同窓の保住功教授(岐阜薬科大学)が個人的に御奥様から託されたものを,ご退官を機に引き継がせていただきました.全部で79冊あり,そのなかに「死の医学」に関する書籍が12冊,看護が5冊,日野原重明先生のご著書が4冊と,椿先生が死の医学や緩和ケアに強い関心をお持ちであったことが分かります.また神経学の教科書,例えば椿先生が監訳された「メリット神経病学」を読むと,医学の進歩により疾患概念が大きく変わったことを実感する一方,神経診察に関する書籍は現在と大きく変わりはなく,むしろWartenberg先生の「神経学的診察法」の訳本などは現在よりレベルが高く感じました.

過去に何度か読んだことがある,椿先生の文章を集めた「神経学とともにあゆんだ道」も,いま読んで初めて理解できる箇所がいくつもありました.例えば「新入生諸君に」という文章は,今の私より若い年齢で書かれたものですが,格調が高く,足元に及ばないと思わされる一方,「諸君の大学生活の目的の一つは人格の涵養であろう」という文章や,「私は本学の出身者ではなく,従って諸君の先輩ではないが,本学を愛し,本学学生に期待する気持ちは誰にも劣らないつもりである」という箇所は,今の自分にとても理解できるものでした.また「私はつまらない人間である」という椿先生の座右の銘(!)をタイトルにした文章では,「このことを知っているだけにいつも謙虚であらねばならぬと思うし,努力も人一倍しなければならないと思う.また,他人のやらないような実りのない仕事もやらねばならないと自分にいいきかせてきた.その結晶が今日の私の姿である」と書かれており,まさに自分への戒めのように感じました.椿先生の蔵書を少しずつ読み進めて学び,若いドクターに伝えていきたいと思いました.

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