女優で今やエッセイストでもある壇ふみさんの『父の縁側、私の書斎』(新潮社)は、ほろほろとした想いがこみ上げてくるとてもいいエッセイ集だ。タイトルは父の縁側だが、本文の小見出しは父壇一雄へのオマージュ「心の縁側」。
僕も縁側のある家に住んだことがあり、そこで日向ぼっこをしたり、友人と話しこんだりした。森繁久弥さんが‘戦後日本人が失ったものは、縁側である‘と述べたそうだ。
いつの頃から縁側がなくなったのか!
内田青蔵さんの住宅史「間取りで楽しむ住宅読本」(光文社)を読みながら、モダンムーブメントの功罪だなあ、と思ったことを思い出した。ここでも近代化とはナンだろうと考えてしまうのだ。
ところで安藤忠雄さんは出世作「住吉の長屋」について、「雨が降ったら傘をさして移動しなければならない。けれども、太陽の恵みや、四季の移り変わりを、肌で感じ取れる。家とは自然との語らいが大切なんですよ、春が待ち遠しいでしょう」という。「ではいちど季節の悪いときに来てくださいよ!」と長屋の住人に泣きつかれているが[絶対に行かないそうだ]という一節に思わず笑ってしまった。
DOCOMOMO100選展のシンポジウムで安藤さんと語り合ったが、その安藤さんの笑顔を思い起こしニヤリとしてしまう。
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