心なしか蝉の声に力がなくなり、時折アスファルトの小道の端にひっくり返っている姿が見られるようになった。秋はちょっぴり切ない光景からはじまる。
僕の住処にある百日紅(サルスベリ)の花房が、9月に入っても咲き誇っている。でもこの花は8月の花、俳句の季語も夏である。
ここの百日紅は、樹に勢いのある春を迎える冬になると枝をおろし、猿が滑り落ちるというつるりとした幹だけにしてしまう。丸坊主になると、これで新芽が出るのかと何時も不安になるが、自然界の冥利、ちゃんとこのように自己主張するのだ。
ロマンスカー通勤をしていてふと気が付いたが、玉川学園駅を出てしばらくすると、路線沿いに走る左手の沿道に、百日紅並木があった。
8月18日、北茨城の常磐線大甕(おおみか)駅で待ち合わせ、白井晟一の設計したサンタ・キアラ館を見るために訪れた茨城キリスト教大学へ向かう道路にも、たわわに咲き誇る並木があった。友人の運転する車中で同行したJIAの保存問題委員に向かって「百日紅だ!」と思わず声を上げると、ホーッと皆が僕の顔をみる。いままで気にもしなかった花にふと目が行くことがあったりするのだ。
この写真を撮ったのは、8月14日。娘は夏休みの四国巡回中、妻君と墓参りにと御殿場に行った15日の前日だった。(この項続く)
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