日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

新版「日本の原発地帯」から「日本の原発危険地帯」(鎌田慧著)へ

2011-04-17 14:11:03 | 生きること

やはり書いておこうと思う。
新版「日本の原発地帯」鎌田慧著(岩波書店同時代ライブラリー)を読んだ。しかしこの文庫は1996年11月に第1刷が発行されており、15年を経ている。原本は1982年(潮出版社)だと言うからほぼ30年程前になる。僕は、原発の近辺に行ったこともなく、その後の15年間と現状も知らない。書いていいのかとちょっと悩んだ。

だが、この文庫の最終章に反原発住民闘争がレポートされた東北電力新潟の「巻」は、計画が消滅しているし、このたびの大震災で事故を起こした福島第一の一号炉は、ルポした当時、放射能を含んだ冷却水漏れが発見されて運転停止中と記載されていて、71年に稼動してから平均稼働率は30パーセントしかなく現地では「被爆者製造炉」と言われていたとある。
これは読んでわかったことなのだが、そうでなくても今回の事故報道の東電や政府、関係機関のあやふやな様を見ていて、原発の実態が気になっていた。

ルポライター鎌田慧が原発をルポしていることは知っていたが、書店になく版元にもなく、図書館も貸し出し中で何人もの予約が入っていていつ手に入るかわらない。ブックオフだと思って数件まわってみたが原発関係だけがなかった。
そこへ「この度改めて読み返してみて愕然としました」とS教授からメールがきた。新版「日本の原発地帯」を読んだという。
思い余ってメールを入れた。そして貸して頂き読んだ。想定していたもののやはり愕然とする。
僕自身の思考の記録としてもここに書いておきたいと思った。

蒲田慧は1938年青森県弘前市に生まれ、早稲田大学を卒業したフリーのルポライターである。
原発に限らず、何よりも自身で現地を歩き、ルポした相手の名前や組織、現状を率直に書き記していることが貴重な記録となっている。「反骨―鈴木東民の生涯」(講談社文庫)で新田次郎賞、「六ヶ所村の記録」(岩波書店)で毎日出版文化賞を受賞しており、その業績は社会的評価を受けているのだ。

この著作は`原発の先進地の当惑`と題した「福井」からスタートしている。若狭湾に面した敦賀、美浜、大飯、高浜、敦賀は日本原子力発電だが、他は関西電力、久美浜が次の主要候補地点となっているが設置されなかった。その他本書でルポされたのは、愛媛の伊方、福島、柏崎、島根、下北(むつ・六ヶ所村)、`核の生ゴミ捨て場`と題された岡山県と鳥取県の県境にある山岳地人形峠など、そして巻である。
今回の事故は東京電力福島第一だが、関西電力、中国電力、四国電力などなど、どの原発も安全性についての大きな問題を抱えていることがわかってくる。

でも僕自身コントロールできないのだが、心のどこから底知れない怒りがじんわりと湧き上がってきて留まってしまうのは、過疎であったとしても先祖から受け継いできた土地とコミュニティを、彼ら!が嘘を並べ立てて分断させてきたことである。
故郷を失うこと、故郷のない僕は溜息が出てくるのだ。
事故を隠蔽して(でも伝わるものなのだ)安全を表号し地域の人々を雇用し、生活の安定と活性化を図るとされる。海に高温の排水をすることになって生態系が変わるので漁業権を放置させる。政治家と産業界の裏に膨大な金が動くが、当の住民が気がついたときにはただ同然の金で土地を手放してしまったことを悔やむことになるのだ。
故郷とは言えないのかもしれないが、小学生時代を過した過疎の村(天草下田村)の、僕の家族を支えてくれた人々の顔が浮かんでくる。

こういう記述がある。柏崎刈羽の人たちが科学技術長の担当官に、東京につくったらいいだろうにというと、東京は人口が多くて危険だと答えたと言う。(140ページ、後に紹介する日本の原発危険地帯では153頁)。
原発の寿命は60年とされるが、日本と同じ原発で40年以上稼動している例はなく、現実には40年では廃炉になるとみられるという。廃炉になったときにこの地域はどうなるのでしょうか? と伊方の町長に問うと「三年、五年向こうのことでさえむずかしい。二十年、三十年先のことは、あとの町長が考えます」。是非を越えて、既に人がコントロールできないのだ。

さて4月15日本屋(僕もしつっこいなあ!)に行って検索したら、この度の事故を受けて「日本の原発危険地帯」(鎌田慧著・青志社4月17日第1刷)が緊急発刊されていた。
蒲田さんは改題刊行あと書きにこう書く。「いままで感じることのなかった、奇妙な時間である。(中略)原発が事故を起こすのは予測されていた。が、どこかに救いを求めていた。」
2006年文庫本後書きにはこうある。「この本は私にとって愛着の深い本である。一人の人生がどのように変わったか、私がお会いした、原発に立ち向かいながら、無念のうちに他界したひとたちの冥福を祈りたい」。



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3 コメント

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予言 ()
2011-04-18 12:39:16
神戸大学名誉教授、石橋克彦氏(当社社長の友人で当社構造課長とも親しい)の研究・記述は恐ろしいほど今回の原発事故を予言されています。
ご一読を・・・
http://historical.seismology.jp/ishibashi/opinion/2011touhoku.html
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難しい課題! (penkou)
2011-04-20 12:59:37
mさん
ありがとうございます。難しい課題ですね!
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Unknown (Unknown)
2014-05-27 00:12:51
本で原発事故を語るな!
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