日々・from an architect

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建築家 阿部勤の「私の家」を撮る

2014-03-09 21:48:57 | 建築・風景

阿部勤の自邸の写真を撮ってく欲しいと建築ジャーナル誌から電話があり、僕でいいの!と思わず問い返した。でも阿部に会え、かつて(若き日)建築誌をみて眼に焼きついている家を見ることの出来るまたとないチャンス、時間のやりくりをした。

この建築は、坂倉建築研究所に在籍時代、タイでの5年に渡る職業学校建築に共に携わった室伏次郎とアルテック建築研究所を設立した阿部の、その前年に建てた打ち放し鉄筋コンクリートと木造による昆構造による埼玉県所沢市のニュータウンに建てた自邸である。

鎌倉の近代美術館の設計を担当した坂倉(坂倉建築研究所)の室伏次郎とは、「近美100年の会」やJIAの活動でも共にしたことがあって親しいが、阿部とは面識がなかった。
その阿部は料理人としても知られていて、訪れる若い建築家達にその腕を振るい、駄洒落を連発しながら楽しんでいる様子がテレビで放映されたりしていてその風貌には男の魅力が溢れている。

駅に迎えに来てくれた阿部の車は左ハンドルのランドローバー、ジープである。アフリカで猛獣狩りをするときの車だというその阿部は、雪の残る道を慎重に丁寧に運転をする。

植田実の編纂した都市住宅では「私の家」というネーミングで発表されているが、トイレや浴室以外は間仕切りもドアもないが、各所に開けられた開口部から見え隠れする場所の姿が、庭や街路に植えられた樹木と一体となってそこ居る面白さ(喜び)を喚起することになる。

「男の家」と呼ばれることもあるこの家は、息子を育て、20年ほど前に奥様をなくした阿部を育てた家。自分の設計した家に自分が育てられる、その楽しさに満ち満ちていた。

一言添えたいのは、十字路に面した敷居の一角に樹木を植え、住宅との間の通路を町の人たちが通れるように開放したことだ。その樹木が時を経て大木となり、画一的な町並みのランドマークとなっている。
その写真を!室内の公開は遠慮して、左手にランドローバーのある一枚を!