日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

洞窟に響くヴァイアン、チェロとピアノの音

2013-11-24 15:19:33 | 日々・音楽・BOOK
壁に突起とも言いたくなる荒々しいコンクリート打ち放しの塊をしつらえた「東京文化会館小ホール」で、ジュゼッペ・シリアーノのヴァイアンと、岩崎淑のピアノが織り成す`マリリナ・ソナタ`を聴きながら、やはりこのホールは『洞窟』なのだと瞑目したくなった。
11月15日の岩崎淑が主宰する第37回ミュージック・イン・スタイル、コンサートでの感慨である。

ヴァイアンという楽器は、アコーディオンに似ているが鍵盤がなく、右指で弾くボタンは640個もあり、左手にもボタン、上部にもボタンがあって奏者は時折顎を使って弾きこむ。
奏者を紹介する淑とチェロの岩崎洸とのやり取りで、淑はアコーディオンだと思ってたら違うんですって!と会場を笑わせたが、次々と繰広げられる音の響きを聴き、この楽器を弾くシリアーノはイタリア音楽界を代表する奏者だと言うだけでなく名人、演奏しながら淑や洸と眼を交わし、時折笑みを浮べ、のめりこむように引くその姿に、この人はホントに音楽がすきなのだと、僕ものめりこむように見入り、聴き入った。

そしてこういう喜びを与えてくれるのは、このホールとのコラボレートあってのことだと感じていた。
カザルスホールも浜離宮朝日ホールの音も素晴らしく、そのシューボックススタイルも捨てがたいが、このホールは舞台に向かって天井が競りあがっていて、その下部の舞台で奏者が身を越して弾く。目の中には横置き屛風状の音響版があって、高い天井の下での奏者の姿は小さいが、むしろその奏者の姿に目線が集中するのは不思議といえば不思議である。
入るとコンクリートの壁は狭まっていくが天井が高くなっていってむしろ奥の深い広がりを感じるのだ。

洞窟。
設計した前川國男はこのホールをどういうイメージを持ってつくったのだろうか?

<余話>終演後のロビーで、洸さんと立ち話、僕は小澤征爾が振ったサイトウキネンオーケストラのコンサートで、引退したはずの大西順子のラプソディインブルーにしびれたが、そこで弾いている洸さんに見入ったなどなど。