日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

国立競技場でサッカーを楽しむ考

2013-11-17 17:18:00 | 建築・風景
「FC東京」の、というよりも大のサッカーフアン中川道夫は、僕の大!の親友・都市を撮る写真家である。その中川から長友祐都はカネさんの母校明大のOB(在学中にFC東京に所属する)だよ、といわれて即座に長友フアンになったのも、我ながら我らしい!と思ったものだ。
長友が岡田武史監督に見出されてジャパンのメンバーになったのがFC東京に所属したばかりの2008年だからまだ5年にしかなっていないのかと、不思議な感じがする。でもその衝撃は、長友の存在を知ったことと同時に、「上海記聞」というシリアスな写真を撮るあの中川が、FC東京のユニフォームを着て観戦するのだと聞いたからでもあった。

「上海紀聞」は中川が36歳のときに美術出版から出版された写文集だ。だが写真だけではなくその装丁・構成・レイアウトそして中川の書いた文章「紀聞」、その深い考察に、思わず僕の気が震えた本である。
 その中川が、僕の書いた2編のブログ(2013・10・13と2013・10・19)を読んだのでとメッセージを送ってくれた。中川の許可を得たので記載させてもらうことにした。都市を視る写真家の、サッカーを楽しむ姿が味わい深い。
電話でやり取りしたら、雨に打たれてもポンチョ着て最上段の席から暮れなずむ東京のまちの灯を見ながらの観戦、東京という都市を味わい、缶詰のような感動の思い出の集積が僕のこの国立競技場なのだという<文中敬称略>

―中川道夫からのメッセージ―
『8月からアイルランドに行き、帰国した翌日に五輪東京招致決定の熱気にふれ、ハディト案がメディアに露出しまくりました。帰途、ロンドンで五輪バブルの建築群をみていたのでなおさら現実味があります。

9月、10月はお休みしていたサッカーの観戦へ。大好きな国立競技場では2試合。
いつものオーロラビジョン脇のゴール裏の最上段席はもう十年以上。春から秋へ、涼風に吹かれ(ときにポンチョ着て雨に打たれ)、黄昏どきの新宿の摩天楼や神宮の杜がながめられ、メガロポリスの新旧が溶け合う官能の風景を味わっていたわけです。

「国立、国立、オレたちのコクリツ~!!」と、キックオフと同時に毎回歌われる、サポーターソング。
これで天皇杯やナビスコカップ優勝の歓喜を回想してます。
ただ、いまの競技場は皆に愛されているわりには、建築的にいいとは思われていないでしょう。高度成長期の記念碑としてはあるけれど、丹下さんの作品や東京タワーとは決定的にちがう。
いまの国立が好かれるのは、缶詰のような感動の思い出と、周囲の環境のなかで存在していたからだと思います。

千駄ヶ谷門、代々木門、青山門とアプローチのちがいで、微妙な「聖地国立」への巡礼経験が味わえる。期待と不安と喪失感と。皆がそれぞれの体験記のなかに、神宮の杜の風景(造られたものだけれど)が舞台のように記憶されていると思います。

新国立競技場で「オレたちの国立~!!」と歌うことができるのか?
東京の基層の文脈とその環境への配慮が蔑ろされることおそれています。』