日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

賛歌 Hymns Spheres

2007-01-08 18:58:11 | 日々・音楽・BOOK

キース・ジャレットが1976年の9月に、西ドイツのベネディクト修道院で収録したオルガン演奏には意表を付かれた。
前年の1月、ケルンのオペラ劇場でのライブ録音を繰り返し聴き、最初のフレーズの美しさと、展開していってふと人が生きていくことを慈しむようにうなずきながらリズムに乗って導き出していくピアノの「音」に、その都度こみ上げてくるものがあるのだが、それをオルガンでどう表現していくのか、ジャズのリズムをどのように刻むのかと興味津津だった。


心を研ぎ澄ませCDプレイヤーのスイッチを押す(針を落とすと言いたい)。
どこか遠くのほうから、聴き取れないような単音が響いてくる。そして次第に様々な音(ね)が綾なすように紡ぎだされていくのだ。
キース自身が自分が生み出していく200年以上前に作られた18世紀のバロックオルガンの音に耳を澄ませ、黙しながら遥か遠くに想いを馳せる姿が僕には見えてくる。音に満ちて共鳴する会堂の姿も。
ジャズではない。
ジャズではないがキースの音楽なのだ。キースの心の、自然や人智を包括しその先を見つけ出そうとする響きだ。僕は人の生きることや永久の別れを思いながらキースの見ようとした世界に想いをよせる。
この演奏は40分21秒後ぷつっと終わる。