田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

車にひかれて死んでいた猫が蘇った? 麻屋与志夫

2018-08-09 10:43:49 | ブログ
8月9日 Thu.

●横断歩道をわたっているとき、うしろからついて来ていた妻が「あつ」と甲高い悲鳴をあげた。わたしは心臓がとまるような恐怖のおどろきとともにふりかえった。妻がなにか不意の事故にあったと瞬時に思った。

●彼女が指さしている先の車道に白猫が倒れていた。ピクリとも動かない。白猫にはみおぼえがあった。みおぼえがあるというより、ときどき、わが家の裏庭のデッキにきて食事をしていく、いわば外猫だ。おなじみの小さいほうの白猫だ。

●同じく外猫で大きいほうの白猫は特に妻によくなれていて、食事をする前に彼女の足元にスリスリをしたりゴロンとよこになってあまえている。「おチビちゃんは、いじめられた記憶があるのね」餌をやった彼女がナデてやろうとすると、うなりながらとびのいてしまう。しばらく警戒して餌皿のところにもどってこない。

●そのおチビちゃんが二日ほど前、青い首輪をしてきた。「ご近所に心やさしい人がいるのね。飼ってもらえたのよ。よかったわね。白」

●わたしもチビ白の首輪をまぶしいモノを見るような目でみていたにちがいない。野良ネコを飼うとしいうことかなりの勇気がいる。でも、ほんとうに猫がすきだったら野良ネコを見ていて放ってはおけない。こんなにカワイイ猫が毎日餌をもとめて街をさまよい、危険を冒し、苦労しているのを見過ごしにはできない

●チビ白に首輪をつけてくれたひとがいる。そのひとの温情にわたしはまぶしいものを感じていた。

●首輪も青。シッポは短い。すこしまがっている。まちがいなくチビ白だ。「最後の最後に、飼ってもらえてよかったな。首輪をしてもらってよかったな」わたしは声なき声で、心のなかで、ささやいていた。

●車道で死んだままにしておけば、これから何台ものくるまに轢かれてセンベイのようになってしまう。歩道のほうに引寄せてやろうとおもったが、輻輳する車に怖じ気づき、それはできなかった。

●「かわいそう。可哀そう。カワイソウ」
妻は涙をうかべていた。

●ところが、奇跡がおきた。今朝早くデッキのあたりで猫のウナリ声がしていた。あわててとんでいくと――大きいほうの白がシッポを太くしてうなっている。あいてはと見ると、チビ白ではないか!! 青い首輪をしている。

●「チビ白が生きていた。生きていたよ」
わたしは大声で妻を呼んだ。

●「生きかえる訳かない。あれは、ほかの猫だったのね」
妻は冷静な態度だ。

●わたしは、わからなくなった。

●猫には九つの命がある。
生きかえったのだ。
……でなかったらチビ白に似ている猫が他にいて、同じ青い首輪をして死んでいたことになる。



ブログに発表した小説は下記の通り角川の「カクヨム」にまとめてあります。ぜひお読みになってください。

●ムンク「浜辺の少女」は吸血鬼だよ/麻屋与志夫

● 愛猫リリに捧げる哀歌/麻屋与志夫

● 吸血鬼処刑人/麻屋与志夫
あらすじ。 伊賀忍者、百々百子率いるクノイチ48は帝都に暗躍する吸血鬼に果敢な戦いを挑んでいた。百子は帝都東京で起きる「人を殺してみたかった。だれでもよかった」という凶悪犯罪の…の背後に吸血鬼の影が。






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