ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『 日本が軍事大国になる日 』 - 49 ( 氏の結論 )

2022-04-21 19:32:47 | 徒然の記

  『 日本が軍事大国になる日 』・・それはいつなのか ?

今回は、予想していなかった氏の答えを聞くことになります。

 「多くの日本国民は気づいていないかもしれないが、日本は世界から期待されるだけの強力な軍事力を、すでに持っている。」

 軍事力から見れば、日本は軍事大国だったのです。しかし外交面から見れば、軍事大国ではない。ではどうすれば良いのか・・氏は婉曲に、遠回しに示唆するだけで、はっきり意見を述べません。

 「ある国が、〈軍事大国にはなりません〉〈軍事を外交の手段として使いません。〉など、いくら声高に言っても、それをまともに信じる国はない。」

 「どの国も自分の利権を守る正当な権利があり、そのために〈自衛力〉を行使するのは当たり前だからである。」

 「憲法を改正すれば、今日からでも日本は軍事大国になる。」と、その一言が言えないようです。氏には、率直に言えないものが内心にあるのでしょうか。氏は、通常使われる「国益」と言う言葉を使わず、「利権」と言っています。国益は利権だけでないと思いますが、軍事評論家から見るとそうなるのでしょうか。

 「〈自衛力〉は行使される側から見れば、それが自分たちの利権に対する、軍事的侵害と映るだけの話である。」

 「ある国が軍事的脅威になるかどうかは、その国が持つ軍事力が、」「他の国に脅威を及ぼしうる能力があるかどうかで、判断される。」

 「日本国民は予想もしていないだろうが、海上自衛隊の能力は、」「そのまま東南アジアやインド洋に進出して、戦闘作戦を長期に渡り継続できることを意味する。」

 もちろん一般の国民は、こうした事実を知りません。政治家も語りませんし、マスコミも報道しません。

 「海上自衛隊の艦隊補給艦は、諸外国の保有する艦隊補給艦に比べるとまだ小型で、」「補給能力は小さいが、問題はそんなことでなく、」「米海軍の支援を得られない限り、これまでは南シナ海やインド洋に作戦のため進出することができなかったのが、」「今や独自でできるようになったという、大きな変化である。」

 「こうした能力を日本は持っているし、持ちつつある。」「世界はそれを見逃していない。」

 氏の言う世界とはどの国を指しているのか ?  ・・ここに一つの鍵がありそうです。つまりそれは、「日本が自衛権を行使すれば、軍事的侵略と映る国」・・そうなると答えが見えてきます。氏が軍事データの詳細を説明しなかった、世界の軍事大国、米国と中国とロシアです。

 3カ国のいずれにも与したくないだけでなく、日本の側にも立たず、客観的立場を守ろうとしているのでしょうか。歯切れの悪い説明が続きます。

 「だがこうした日本の能力は、日本がその生存を維持するためにも、また極めて有効である。」

 歯切れの悪さだけでなく、次は日本への批判かと思われる意見になります。

 「兵器の輸出が悪いと考えているのは、日本くらいのもので、」「他の国は、国家安全保障に必要な兵器は、輸入、開発、保持する権利があると考えている。」「問題視されるのは、それが過度に蓄積され、」「その地域の軍事バランスを崩すと、看做された時である。」

 「〈過度な蓄積〉と考えるのは他の国で、当事国は〈必要最小限〉と考えるのが普通である。」「日本は兵器輸入金額で、世界で一位ないし二位の輸入大国であることを、日本人のほとんどは知らない。」

 ここで氏は、関係各国の国防費をグラフで表示します。平成3 ( 1991 ) 年のデータです。なるほど、中国と韓国・北朝鮮に比較すると大きな数字です。

  日本 165億ドル   中国 120億ドル   韓国 64億ドル  北朝鮮 53億ドル

  米国 2,271億ドル         ロシア 916億ドル

 日本への批判は、すでに過去となっています。データは31年前のもので、急速に経済力をつけた中国が巨額の国防費を使い、他国を圧倒しているのは周知の通りです。国民が何も知らないと氏が語るのなら、事実をマスコミに発表すれば良かったのです。

 政府が国民に隠している「軍事大国日本の事実」なら、反日マスコミがこぞって飛びつき、反日野党と活動家たちとともに大騒ぎして、政府攻撃をしたに違いありません。

 「政府は、国民を騙すな。」「日本を、戦争のできる国にするな ! 」

 国民は嫌でも事実を知ったはずです。もう一つ言いますと、氏に言われるまでもなく反日野党と活動家とマスコミは事実を知っていました。なぜいつものように騒々しい報道をしなかったのか・・答えは簡単です。

 平成6年の内閣総理大臣は、社会党委員長・村山富市氏でした。

 物分かりが良いと言うのは、政治の世界では難しいことです。あちこちに気遣いをし、氏も苦労したのだと思いますが、軍事評論家は風見鶏ではいけません。今回はシリーズの最後ですから、氏の代わりに、氏の言わんとした結論を述べます。

 オイルロードの説明時に、氏が読者へ問いかけた言葉を思い出してください。

 「海洋を含めた東南アジアの平和的安定は、日本の死活問題なのに、」「日本は軍事力は派遣できませんと、言い切れるのだろうか ? 」

 「言い切れません。」「そのためには、憲法改正が必要です。」

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4 コメント

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江畑さんの遺志 (HAKASE(jnkt32))
2022-04-22 00:23:48
今晩は。ここまで拝読したざっとの雑感を述べさせて
頂きます。

今回貴記事の末尾「海洋を含めた東南アジアの平和的
安定は、日本の死活問題なのに、」「日本は軍事力を
派遣できませんと言い切れるのだろうか?」

これに対する貴見解「言い切れません」「そのため
には、憲法改正が必要です」正解はこれだと拙者も
思います。

シーレーンとも呼ばれる、中東とのオイルロードの
守りは、本当に我国が真摯に取り組むべき喫緊の課題
となりました。江畑さんの逝去から 10年超を経て
、露によるウクライナ危機が勃発した今こそ、国民
レベルの真摯な向き合いと取り組みを要すると心得ます。

村山元総理の時など、現野党政権の折に自衛隊に関
する事共が伏せられていた事も、同じ愚を繰り返さ
ない為にも把握されていて良いと思います。

自衛隊を今の現実に合った態勢に改める事と、戦争
のできる国になる事とは意味が違うと心得ます。
むしろ米欧など近しい側の 明らかな抑止力となり
得る事を誠実に示す事が、世界の平和にとり有用だ
と心得る者です。

おめでたい平時が引き続く情勢ならとに角、時が経
つにつれ緊縛の度を増す周辺情勢に少しでも適切に
対応できる様にする為にも、他国複数との集団安保
を叶える方向に舵を切る事こそ、江畑さんの遺志に
沿っていると感じる次第です。
今回連載も、誠にお疲れ様でした。
返信する
江畑氏のご意思 (onecat01)
2022-04-22 13:01:18
 HAKASEさん。

 江畑氏の著作に、沢山の事実を教えられました。戦後75年間、反日左翼の屁理屈で、多くの人が騙されました。

 自衛隊は違憲だ、自衛隊はいらないと、攻撃していた共産党が、「有事には自衛隊を使う」と言いました。平和運動を本気でやって来た活動家たちへの背信ですが、無批判の彼らは黙っています。

 江畑氏の意思が、政治に反映されていることを、4月5日の千葉日報の記事が教えてくれています。

 「岸防衛大臣インタビュー」の中から、大臣の言葉を紹介します。

 「急速に進化する技術に対し、日本は迎撃能力を高めるだけで、一方的にコストを負っている。」

 「日本を攻撃すると高くつくと思わせ、抑止力向上に繋げる必要がある。」

 「敵基地攻撃には、中枢も含めた議論をすることは大切だ。」

 防衛大臣がここまで言える状況に、国内世論と国際情勢がなっています。大臣の発言は、江畑氏が繰り返されていた提言でもあります。

 「軍事力を使えと、言っているのではありません。」「使えるカードを持つことが、抑止力になるのです。」

 コメントに感謝いたします。
返信する
四半世紀前からの警鐘 (成田あいる)
2022-04-23 20:47:43
村山富市氏が総理になるや、「自衛隊は合憲、安保も堅持」と従来の主義主張を覆し、世の人びとを驚かせました。
が、翌年の阪神大震災で自衛隊の出動が遅れ、危機管理と政権遂行能力の乏しさが露呈し、「日本社会党」崩壊とその後の社民党凋落の引き金にもなりました。

自衛隊は欧米の並み居る「軍事大国」に引けを取らず、むしろ遜色ない戦力を抱えています。
「最新の装備を持つ」「世界で4位ないし5位」「対潜作戦能力は世界のトップクラス」「どれをとっても一流」「世界最高の能力」「高性能で、高価な兵器指揮システムを保有できるのは、」「米海軍以外では、世界でも日本しかない。」などなど、氏が書き連ねているとおりです。
氏が言うように「世界から期待されるだけの強力な軍事力」なのに、自衛隊は「肩身が狭い」「日陰者」の存在に成り下がり、ともすれば「邪魔者」扱いされています。
「平和憲法」、中でも「9条」が足枷になっていることが大いにあると思います。

氏は書籍の中で、「尖閣諸島の周辺に、強力な戦闘力を持つ軍艦を常に配置すれば、」「それは海上保安庁の巡視船で排除することは、不可能である。」「日本は尖閣問題をなるべく棚上げし、先送りしたいと考えているようだが、」「いつかは必ず直面せねばならない問題である。」などと記しています。
尖閣問題は近年クローズアップされていますが、氏は四半世紀近く前から警鐘を鳴らしていたことになります。
1994年当時の細川・羽田・村山政権とも、内部崩壊・空中分解の政権にしか見えず、国防や国益を真剣に考えているようには見えませんでした。
このような年に上梓したことは、実に象徴的であるとともに慧眼であり、その後の世界情勢を暗示していたと思えます。

先日のエントリとも関わりますが、維新の会・吉村氏が「自民党の“やるやる詐欺”にはうんざり」とか「自民党の本気度を知りたい」と言うようなことを語っていたのを思い出しました。
「大阪都」構想に向けて、氏が主張するようにスケジュールを決めて「本気で」やってきたからこその言葉だと思います。
自衛隊を各国と肩を並べるまでの「堂々とした」存在に引き上げ、「使えるカード」にするには、その足枷を「外す」しかないと思います。
繰り返しになりますが今こそ、自民党諸氏の「本気度」が問われ、試されていると思います。
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自民党の本気度 (onecat01)
2022-04-24 07:10:15
 成田あいるさん

 世論の流れが変わりつつあります。国民の付託の意味を考え、自民党の議員氏は真剣に向き合うべきですね。

 いつまでも反日左翼マスコミを相手にするのでなく、国民の意見を聞き、政策として取り組む勇気が必要です。日本学術会議から、反日左翼学者を駆逐することから始めればいいのだと思います。

 自民党の中にいる、物分かりの良い左翼議員を、弾き出す勇気を見せてもらいたいですね。国民が願いを託していることを知れば、もっと早い段階で勇気を見せられたでしょうに、彼らの理解が遅れましたね。

 自民党が本気度を見せれば、日本は変わります。

 コメントに感謝します。
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