「ではオイルロードで軍事紛争が起きた場合、日本は何ができ、」「何をすることを、世界から要求されるのだろうか。」
本日は、読者への問いかけから始めます。言うまでもなくオイルロードは、日本経済の生命線です。
「憲法が武力による解決の放棄を謳っている以上、日本は商船隊の安全航行を確保するため、海上戦闘力を派遣することは難しい。」「だが、〈火の粉が降りかかってきた〉場合にはどうするのか。」
説明が抽象論でなく具体的である分だけ、氏が本気で読者に説明しようとする姿勢が感じられます。
「南シナ海でロシアの商船が不審船に脅かされた時、ロシア海軍が出動したように、」「船団護衛とまで行かなくても、日本も海域のパトロールを海上自衛隊に行わせるのか ?」
「或いは日本から出ていく外国の商船が、大きな軍事的脅威を受けた場合、」「それでも日本は一切の軍事力を派遣しないで、座視するのだろうか ? 」
マスコミが報道しないものは、事実があっても無いことになりますから、私たち国民はこう言う事態を知りません。差し迫って考えるとこもありません。だから氏は、説明しようと努力しています。
「もう少し具体的な例を考えてみる。」
イランと欧米や他の湾岸諸国との関係が悪化して、イランが軍事力を行使し、ペルシャ湾とアラビア海の海上交通に脅しをかけてきた場合について述べます。
「湾岸危機の時のように、国連の決議で、多くの国が協力して、」「海域を通過する商船の護衛作戦がとられ、国連が日本に海上自衛隊の派遣を要求してきた時、」「日本はそれを、断り切れるのだろうか ? 」
この問いかけに読者は反論できませんが、次の説明では言葉を失います。と言うより、国民の多くが知らない軍事情報です。
「海上自衛隊は現在、世界で最も若い艦齢、つまり最新の装備を持つ艦艇を保有し、」「その量も、世界で4位ないし5位にまで成長している。」
「主要戦闘艦艇の保有量は、英海軍が2年後に35隻になるのに、日本は現在60隻を保有している。」「対潜作戦能力は世界のトップクラスで、大型対潜ヘリコプター、対潜ミサイル、遠距離探知ソナーなど、」「どれをとっても一流であり、陸上発進の対潜哨戒機は世界最高の能力を持つ。」「それを104機と、米国に次いで世界第2位の数を保有している。」
「イージス・システムを搭載する護衛艦は、4隻の建造が進められている。」「このように高性能で、高価な兵器指揮システムを保有できるのは、」「米海軍以外では、世界でも日本しかない。」
驚くべき海上自衛隊の軍備と、世界での位置づけです。装備のことは知りませんでしたが、隊員については知っています。平和憲法のある日本に、人殺しの自衛隊はいらないと、横断幕を掲げた反日左翼活動家たちがデモをし、マスコミが大きく報道する日本で、隊員たちは過酷な訓練に励んでいます。
反日野党の誹謗を背に受けても、国防のための訓練に励むのですから、使命感と士気の高さを国民が知っています。大災害時の救助活動を通じても、彼らの献身に感謝しています。武器だけ最新鋭でも、使いこなせる兵士がいない国があるのですから、自衛隊の頼もしさが実感できます。
「南シナ海での軍事衝突や緊張が高まった時、間に入って兵力引き離しを行う軍事力の主体は、」「当然海軍力となる。」「現在、そして将来この地域に有力な艦隊を派遣できる国は、米国と日本しかないだろう。」
なぜなら中国や台湾、或いはベトナム、フィリピンなどのアセアン諸国は紛争当事国ですから、仲裁役になれません。
「ロシアも二、三隻を派遣するのがおそらく限度で、それはオーストラリアやニュージィランドも同じである。」「となると、中心となる海軍力を提供できるのは、米国と日本しかない。」
「海洋を含めた東南アジアの平和的安定は、日本の死活問題なのに、」「日本は軍事力は派遣できませんと、言い切れるのだろうか ? 」
次の説明は勇気のある言葉です。肝に銘じて読む価値があります。
「ペルシャ湾やアラビア海の場合と違って、中国は南シナ海紛争への外部勢力の介入に、確実に反対する。」「国連安全保障理事会の理事国も反対する。」
「それでも世界の多くの国が日本に、平和執行あるいは維持の主体的役割を要求するとき、」「日本はいかなる対応をするつもりなのか。」
「日本がその軍事力を、積極的に使うべきと言うものではない。」「有効な軍事力を持つ日本に、世界が期待する可能性もあると言うことである。」「そのような場合、日本はどうするのかと言うことを、考えておく必要があろう。」
氏の著書が出版された同じ年の平成6年に、マレーシアのマハティール首相が、訪問してきた村山首相と土井たか子衆議院議長に語った言葉を思い出しました。