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ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

日航機123便墜落事故 -30 ( 官僚組織の共通意思 ? )

2024-07-19 13:59:56 | 徒然の記

  〈 日航機123便墜落事故に関する「ねこ庭」の意見 〉

 前に略歴を紹介しましたが、ヴォーゲル氏は1958 ( 昭和33 ) 年から1960 ( 昭和34 ) 年に来日し、経済大国になった日本について調査・研究を行っています。

 研究の成果が認められたためか、昭和42年ハーバード大学の教授となっています。

 昭和47年には同大学「東アジア研究所長」となり、昭和50年から昭和51年にかけ再来日し、「日本の友人」の協力を得て同様の調査・研究を行っています。
 
 だからこの本には、一般の日本人が知らない政界の裏話や、官僚たちの本音が集められています。
 
 「縦割りの省庁」、「省益あって国益なし」と言われるので、各省間には横の連携がなく、互いに勢力争いをしていると思っていましたが、各省のエリートたちが、常に交流し意思の疎通を図っていた事情を、氏が説明しています。
 
  ・同期の高級官僚たちは、同じ省内であっても他の省であっても、同時に昇進を続けつつ、親交を深めていく。
 
  ・交友関係は、東大法学部在学中から始まる場合も多く、あるいはもっと早くエリート高校時代に始まることもある。
 
  ・もちろん同じ省庁の者同士の方が、知り合う機会も多く、親しくなるだろうが、他省の同期生とも交際する機会が折に触れ回ってくる。
 
  ・互いに知り合っていれば、単なる公式文書の交換、公式会議での議論以上に、うまく意思疎通が、図れる訳である。
 
  ・40才代になると要職についた官僚は、積極的に他省の同期生との、交流の機会を利用しようとする。
 
  ・さらに昇進してトップの地位に就いた際に、以前にも増してこれらの交際が物を言うからである。
 
 当時の事務次官の実権は大臣以上でしたから、彼らが手を結べば、およそ何でもやれました。大臣の更迭、総理の交代など、なんの造作もありません。
 
 マスコミは彼らの監督下にありますので、彼らがリークする政治家のゴシップ報道が、何日でも、何ヶ月でも流し続けられます。報道の自由のためと言えば、ニュースソースが秘匿され、官僚のリークが国民に知られる心配がありません。
 
  ・自分たちの仕事に、必要以上に横槍を入れてくる政治家に対して、官僚たちはためらうことなく結束する。
 
  ・仕事は課単位で行われ、課の仕事の貢献度により、課が評価される。
 
  ・上司は、協調性のない者を昇進させたりしない。各人は課内での存在価値を発揮することによって、省内での存在価値を確立するのである。
 
 自分が所属する省内で、省のトップの意向に添い、実力を発揮した者が昇進する仕組みです。「省益あって国益なし」とは、こうした事実を指した言葉ですが、すでに各省のトップたちが十分な根回しをしているので、実際にはバラバラの動きをしているのでなく、官僚組織は共通の意思で動いていることになります。
 
 官僚のリークを得て、マスコミが特定の大臣を長期間攻撃する報道を続けている場合は、大臣の担当する省内の抵抗だけでなく、官僚組織全体が協力していることになります。
 
 何ヶ月にも渡りマスコミが批判している岸田首相は、官僚組織全体が抵抗していると見ることができます。暗殺された安倍首相に対しては、もっと露骨なマスコミの攻撃が続いていました。
 
 「ねこ庭」では、自由民主党の政権を批判攻撃しているのは、反日左翼弱小政党と腐れマスコミと主張してきましたが、ヴォーゲル氏の意見を参考にすれば、もう一つ「官僚組織」を加えることになります。
 
  ・ワシントンでは新政権が誕生するたびに、新しい人間を各省庁のトップに送り込むことが、昔からの慣例となっている。
 
  ・日本人の考え方からすれば、これは官庁が大統領の権限に屈服することであり、官庁の自立性や、大胆さを失わせることになる。長い目で見れば、有能な官僚の育成を阻害することにもなる。
 
  ・官僚にとって、外部からやってきた素人にトップの座を譲ることは、耐え難いことなのである。
 
  ・日本では政治家も彼らの優秀さを理解しているから、彼らの機嫌を損ねないように、気を使う。
 
 鉄の団結を誇る官僚組織を、金の力で捻じ伏せたのが元首相の田中角栄氏で、腕力で破壊しようとしたのが、民主党政権でした。別の見方をする人がいるのでしょうが、「ねこ庭」はそのように見ています。
 
 学歴の無い田中氏は、エリートと無関係の政治家でしたが、独特の政治哲学と天才的直感を持つ人物でした。民主主義は多数決だから数が全てと割り切り、金の力で支持者を集めました。単に金をばらまくだけなら成り上がり者と軽蔑されますが、氏は人情の機微を知り、人間を虜にする魅力を備えた政治家でした。
 
 「田中君は、役人たちを堕落させてしまう。あれには困ったもんだ。」
 
 当時の佐藤総理は、官僚たちを手なずける氏を苦り切っていたそうですが、動きを止めることはできませんでした。経済の高度成長期でしたから、やり手の田中氏は、とうとう総理の座を手に入れました。
 
 誇り高く清廉な官僚たちに金の魅力を教え、堕落の道へ誘ったキッカケは、田中氏だったのでないかと、「ねこ庭」は今も考えています。
 
 吉田茂氏は、『日本を決定した百年』の著書を自分で書きましたが、田中氏のベストセラー『日本列島改造論』は、優秀な官僚が書いています。自分の考えを官僚に代筆させただけと、悪びれないところが氏の氏たる所以でした。
 
 日本の頭越しに中国と国交回復をしたのは、アメリカでしたが、田中氏が間髪を入れず日中国交回復をすると、途端に後から迫ってくる日本に危機を感じ、氏の政界からの抹殺を画策しました。
 
 世に言う「ロッキード事件」がそれで、犯罪人の汚名を着せられたまま、氏は憤死したと言われています。
 
 官僚に金権腐敗の味を教えたのは田中氏でしたが、氏はアメリカにより葬られた悲運の宰相として、「ねこ庭」の歴史に残しています。「ロッキード事件」以後、アメリカに逆らえばとんでもないことになると、自由民主党の政治家たちが、前にも増して米国の顔を伺う政治を始めました。
 
 この流れで考えますと、「日航機墜落事故」で実際に何があったのか分かりませんが、アメリカが本気で挑んできた時には逆らえないと、中曽根首相が妥協した状況が何となく推測できます。
 
 アメリカに統治されて以来、中国や韓国・北朝鮮にも政治家は腰をかがめ、卑屈な政治をしています。誰がやってもそうなってしまう風土が、敗戦後の日本の現実のようです。
 
 悲観的な話になりましたが、次回は  「政・官・財の癒着」という問題について、別の視点から見た氏の意見を紹介します。
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日航機123便墜落事故 - 29 ( 氏のターゲットは官僚組織 )

2024-07-19 07:56:58 | 徒然の記

  〈 日航機123便墜落事故に関する「ねこ庭」の意見 〉

 今回から、ヴォーゲル氏の著書の中身を紹介します。

 ハーバード大学の強力な人脈を活用し、日本の著名な教授や学者、政界のリーダー、官界のエリートたちと対話を重ねた研究結果が、集大成していることが見て取れます。

 ・日本で、政治的決断を下すグループは、2つある。1つは総理大臣を始め、各大臣を含む政治家グループで、もう1つは高級官僚のグループである。

 ここで氏が言わんとしているのは、「日本の政治を動かしているのは、政治家でなく、官僚だ」ということです。マスコミが取り上げるのは、表の顔である政治家ですが、縁の下で政治の舞台を支え、動かしているのは官僚たちです。
 
 今では多くの国民が知っていますが、45年前に、それを知っていた人は少なかったのだと思います。
 
 ・日本の政治家は、多くの重要な政策に対する決定権は持っているものの、アメリカの政治家に比べると官僚に対する支配力は弱い。
 
 ・各省庁の人事で、総理大臣が任命するのは大臣と政務次官だけで、実際に政治をうごかしているのは、官僚出身の事務次官であり、各省庁の重要な実務は、政治家でなく官僚たち自身の手によって行われると言って良い。
 
 日本には優秀な官僚たちがいるから、大臣がバカでも、政治は間違えず行われる。と、こんな陰口もありましたが、確かにそうだったと思います。誇り高く、愛国心に燃え、清廉潔白な彼らが、政治維新以来、日本を支えてきました。
 
 官僚と呼ばれたり、役人と書かれたりしますが、元々の発祥は、江戸幕府にいた実務家の武士階級だと言われています。
 
 政権が変わっても、国のためなら身を捨てて働くと言う潔さも、武士ならではのものだったのでしょう。彼らは明治の近代化に貢献し、日清日露の戦争でも、有る限りの知恵を絞りました。
 
 敗戦後の日本では、焦土と化した国が奇跡の復興を遂げた裏には、やはり彼らの献身がありました。
 
 ヴォーゲル氏は、こうした歴史は知らないとしても、沢山の聞き取りと文献の調査で、日本の官僚の優秀さや、無欲とも言える使命感の高さに感嘆しています。
 
 ・高級官僚は、皆輝かしい学歴を持つ者ばかりである。
 
 ・全国に200万人いる大学生の中でも、最も優秀な学生が集まる東京大学は、厳しい試験を突破しなくてならない。中でも法学部は独特の位置を占めており、卒業時に上級公務員試験を受け、これに合格すれば官庁に入れる。
 
 ・各省庁には、毎年20数名のエリートが入省するが、このうち15名くらいは、東大法学部出身者である。このようにして生まれたエリート官僚は、有能であるばかりでなく、世間から尊敬の目で見られるのである。
 
 ・日本以外でこうしたエリート機構を持つ国は、おそらく、フランスくらいのものであろう。日本では人材を定年まで引き留め、組織内で育てていく点が、アメリカとの大きな違いである。
 
 こうした話は聞いていますし、フランスが政府人材のため、エリート大学を作っていることも知っていました。しかし日本とフランスの仕組みが、同じレベルだということは、氏に言われるまで気づきませんでした。
 
 私の頭の中で日本とフランスはつながらず、フランスの方が進んでいるとばかり、思い込んでいました。他人を批判していましたのに、私も「西洋至上主義かぶれ」の一人だったのです。
 
 ・彼らの給料は、年功序列に基づいて上がっていくが、民間企業の同輩に比べると、額は少ない。オフィスも質素だし、特別手当の額も少ない。
 
 ・法律で定められた定年はないが、エリート官僚のほとんどは、50代半ばで退職する。
 
 ・どこの国の官僚もそうであろうが、日本のエリート官僚たちにも献身的な態度が要求される。彼らは、自分たちだけが重要な問題を扱っていることを、十分認識しているし、大きな誇りを感じているのである。
 
 官僚組織に関する氏の研究は、「ねこ庭」の知る一般論から、私の知らない詳細へと進みます。興味のない方はスルーされて構いませんが、今後の日本を考える上で、重要なことだと思います。
 
 氏の研究の上に立ってアメリカが要求してきたのが、「日本の構造改革」と「省庁の統廃合」という徹底した官僚機構の破壊でした。45年前の話ですから、官僚組織の中に今もこうした伝統が残っているのか、比較してみれば答えが出ます。
 
 座右の銘が「面従腹背」と公言し、反日左翼へ魂を売った前川喜平氏のような官僚は、氏が日本研究をした当時、おそらくいなかったのだと思います。各省庁にミニ前川氏を思わせる官僚が目につく現在は、むしろ氏の研究の成果と見るべきで無いかと思わされます。
 
 氏の書から、故安倍首相への抵抗組織として、あるいは政権への協力組織として、彼らがどのような力を発揮してきたかを知るヒントがつかめます。彼らと政治家の関係や、私たち国民との関係について、腹立たしいことですが氏が教えてくれます。
 
 「日航機墜落事故」の原因を作ったヴォーゲル氏とアメリカへの怒り、日本の長所と短所を把握できなかった私たち自身への怒り、事故の犠牲者への哀悼の気持が「ねこ庭」に満ちています。
 
 それでもこの検討は、止めてならないと思いますので、次回も続けます。
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