そこそこの放送作家・堀田延が、そこそこ真面目に、そこそこ冗談を交えつつ、そこそこの頻度で記す、そこそこのブログ。
人生そこそこでいいじゃない





ハイさっそく見てきました。
韓国映画のゾンビもの。
「世界大喝采&大熱狂」という謳い文句に踊らされてきました。
その感想。

うん、普通。
星2つ半。★★1/2

これに大喝采出来るかというと、それはない。
高速鉄道の中でゾンビが増殖して襲ってくるという着想は良いし、映画冒頭〜前半、電車に乗るまでのセットアップはとても丁寧で好感が持てた。
ところが、主人公たちが実際にゾンビと対峙し始めると、いろいろと映画的な問題点が続出し、だんだん醒めてきて、「もう少し緻密に考えられなかったかな?」と首をひねってしまった。
つまり、惜しいところまでいっているのに、ベタなアイディアをベタなまま入れ込んでしまったため、全体的に陳腐な仕上がりになってしまったという感じか。
まぁ、ベタなものをベタと感じず純粋に楽しめる人には十分な映画なのかも知れない。
しかし、歴代のゾンビ映画を結構たくさん観てきたものにしては、あまりにもこのゾンビ映画は細部が甘い。
ゾンビにはもっと真剣に、本当にヤバイものとして向き会ってくれないと、こっちが醒めてしまうのだ。

以下ネタバレ。





問題点1。
まず主人公を始めとする登場人物たちのキャラクター設定と、彼ら彼女らが映画内で果たす役割とが、あまりにも古典。
こいつはいいヤツだけど死ぬだろうなぁとフラグが立った感じで出てきたキャラは必ず死ぬし(というかゾンビ化するし)、こいつは登場した意味が分かんないからそのうち正義のキャラになって死ぬんだろうなぁと思ったら案の定そうなるし、この憎まれキャラは死ぬんだろうなぁと思ったら案の定死ぬし、この人いい人過ぎるから死ぬんだろうなぁと思ったら案の定死ぬし、この人たちは悪く描かれてるから死ぬんだろうなぁと思ったら案の定死ぬし……的な「案の定キャラ」が多すぎる、というか全てだ。
もう少しキャラ設定とその役割をひねってくれないかなぁと、上映中ずっと思っていた。
ベタすぎるのだよ、キャラクターたちのローリングが全て、ラストに至るまで。

問題点2。
ゾンビとの対峙の仕方がいろいろあり得ない。
途中、列車内で素手でゾンビの大群相手に戦い始めるのだが、それはないだろ。
噛まれたらアウトというゾンビ映画のルールがある中、大した作戦もなく、葛藤もせず、決死感もなく、大量のゾンビたち相手に素手&バットでわりとあっさり立ち向かっていき、しかもその結果完全勝利を収めるのなんてあまりにも現実味がなくて醒めてしまう(ここで1人ぐらい噛まれればまだ分かるが)。
この一連の格闘シーンで僕は大いに引いてしまったし、この映画に没入できなくなった。
その後、ゾンビがトンネル内の暗闇では視力がなくなり、音にだけ反応するという素晴らしい設定を持ち出してきたので、再び前のめりになったのだが、これを使って主人公たちが「そう来たか」という解決策でゾンビを回避していくものと思ったら、まさかの「網棚の上を這う」作戦だ。
網棚の上だぞ、網棚の上。
あまりにアホな作戦で爆笑したわ。
もっとやりようがあるだろう。
もう少し粘って脚本を考えて欲しかったなぁ。
網棚の上、で失笑だ。
案の定失敗してるし(笑)。
そしてあのケンカの強いオッサンにせよ、主人公のお父さんにせよ、結局映画の最後の方で普通にカプッて噛まれちゃうのってなに?(笑)
「なに普通に噛まれとんねん」と突っ込んでしまったわ。
だってさ、繰り返すけど、噛まれたらダメなのがゾンビ映画の最低限のルールじゃん。
で、そこの恐怖をさんざん描いてきたのに、それなのにオッサンもパパも普通にガブッて不用意に噛まれちゃうってなに?
せめて誰かを娘を守るために身代わりで噛まれるとかなら(ベタすぎていやだが)まだ分かる。
ところが、普通に噛まれちゃってんの、ゾンビに。
なんでよ?
だせーよ。
普通に噛まれるぐらいだったら、その前にもう噛まれてるよね?
それまで結構ヤバいときも噛まれずに切り抜けてきたのに、なんで普通に噛まれるかな?
もう製作者の意図で都合のいいときに殺したいだけの話じゃん。
観客を泣かせるために。
そんなので泣けないよ。
もうちょい考えてくれよ。

ゾンビ映画というのは「ゾンビ」という大いなるフィクションを観客にいかにリアルに感じさせられるかが勝負だ。
つまりそれはどういうことかというと、ゾンビに対峙する人間たちの行動が、どれだけリアルに描かれるかによって決まってくる。
ゾンビに対して登場人物たちが、映画的に都合の良い勝利や、映画的に都合の良い敗北をすればするほど、リアルは失われるのだ。
逆に、実際ゾンビに対峙したらこうなるよなぁというリアルをどんどん積み重ねることで、ゾンビ映画は迫力をどんどん増す。
これがゾンビ映画の基本中の基本。
ゾンビ映画の構造をこの製作者は、結局のところ理解しきっていないのだ。

というわけで、まぁ、惜しい映画でしたハイ。
ひまつぶしにはいいんじゃないでしょうか。
すごく良かった、感動したという人のことは、ある意味うらやましいっす。

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