goo blog サービス終了のお知らせ 

リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

通訳ガイド規制緩和

2010年07月13日 14時00分45秒 | 日々のこと
通訳ガイドが資格なしでできるようになるそうです。有料の通訳ガイドは国家資格のある人しかできなかったんですが、規制緩和ということですね。背景にはアジア系の観光客に対応できる通訳ガイドが不足していることがあるようです。

でもこれって、資格を持って通訳ガイドをしている人にとっては、えらいことですよね。規制緩和に反対するような業界団体ってあるんでしょうか。というかないからこそ、政治的に働きかることができず、規制緩和に動いているんでしょう。

日経の記事を引用しますと:

ツアーを扱う旅行会社は「固有の文化や精神にまで踏み込んだ解説ができるのは、やはり日本に住むガイド。規制が緩和されれば競争でコストも下がるのでは」と期待している・・・

ということですから、要するに通訳ガイド側からすれば、賃金が下がるわけです。こういうことをいろんな分野でどんどん推し進めると、人々の生活が苦しくなり、不幸が増えるわけです。最小不幸社会なんて言っていた人がいましたが、逆行してますねぇ。

先日の「たかじんのそこまで言って委員会」で司会の辛坊治郎さんが、100円で5枚も買えるような安いパンツは売ってはいけない、と言っていましたが、まさしくその通り。(でも結局彼はそれを買ったそうですが(笑))

格安のものというのは、途上国の人々に安い賃金で働かせて作ったり、国内のものだと、労働者の賃金を下げるとか労働時間を増やして(給料そのままで)作るわけですから、格安を追求していくと、どんどん人々の生活水準は下がります。

安かろう悪かろうのものは別にいいと思うんですが、問題は安くていいもの、それもかなり極端に、というのがいけないと思うんですね。スイスに住んでいたときにスーパーのミグロで安い靴下を買ったら、洗うたびに縮んで最終的には半分くらいになった、ということをこのブログの「バーゼルの風」時代に書いたことがありました。お金を出して高い靴下を買いましたが、これは縮まず履き心地もよろしい。物の価値がお金に比例しているわけですが、これは当然のことですし、昔の日本でもそうでした。どこらやの牛丼みたいに、300円を切る値段でまたこれが結構おいしかったりするので喜んでいる、これって何か近い将来にやってくるとんでもない大きな不幸の序章にすぎない、って感じですね。星新一にそういうような内容の作品がありました。何でも飲み込んでくれる穴があったので、人々がそれにいらないものを何でもどんどん放り込んでいたら、そのうちそれらが空から降ってきて・・・というアレです。

さて通訳ガイドに戻りますが、既存のガイドの仕事とプライドを守るために、規制緩和ではなくて、国家試験をもっとどんどん受けさせるようにするというのが本筋ではないでしょうか。今確か通訳ガイドの国家試験は年に1回のみだったと思うのですが、これを年間数回は受験できるようにする。そして教育機関にガイド育成コースを設置すれば雇用も創出されるでしょう。

国家試験が参入規制になるなので規制緩和をする、というのはおかしな論理で、それではそもそも何のための国家試験だったのかということですね。通訳ガイドの質を高くして、日本のことをより正確に外国の人に知っていただくという理念があったはず。そういう地道なことを疎かにしてはいけません。患者が増えすぎて対応できないので、医師を増やすために、医師の国家試験を規制緩和するというのは話にもでませんよね。ということは通訳ガイドの仕事を軽く見られているということです。たちあがれ!通訳ガイド!