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理念で再建

小樽で有名な洋菓子店「ルタオ」を経営する寿スピリッツは、傾いた菓子メーカーをいくつも再建してきた実績を持つ。不況真っただ中の2009年3月期、同社の業績は、売上高175億円、経常利益13億円。

再建の鍵は何か?

社長の河越氏いわく「理念ですよ。そこからやるしかないんです」。実績があるだけ、次の言葉は説得力がある。

「理念を大事にすれば、長期的に見れば『得』なんです。事業を見る時間軸を長く取れば、必ず理念と損得は一致します。」

しかし、理念を浸透させることは難しい。どのような方法をとっているのか?

同社における理念浸透の方法は「朝礼」である。ポイントは二つ。まず、理念を唱和したあと、社員が自分の体験に置き換えて語ること。次に、それを他者がほめること。

似たような試みは、顧客志向の高い企業で実施されている。その代表例はリッツカールトンホテルだ。寿スピリッツの良いところは、さらに、その場にいる他者が「ほめる」ということ。

他人をほめるということは、その人の体験をよく聞き、感情移入しなければならない。自分の体験を語るだけでなく、他人の体験にコミットすることは、理念を浸透させる上で効果的だ。

もちろん、理念だけで会社が再建できるわけではない。組織構造や業務プロセスもしっかりとデザインする必要がある。しかし、その中心に理念がなければ、制度に魂が入らず、なかなか機能しないのも事実である。

理念を浸透させ、「何のために仕事をするのか」を明確にすることは、社員のモチベーションや能力を引き出す力を持っているのだろう。

出所:日経ビジネス2009年4月20日号35-36p.
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