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『後世への最大遺物・デンマルク国の話』(読書メモ)

内村鑑三『後世への最大遺物・デンマルク国の話』岩波文庫

内村鑑三が1894年(明治27年)と1911年(明治44年)に行った講演録である。やはり『後世への最大遺物』が良かった。

「ドウゾ私は死んでからただ天国に往くばかりでなく、私はここに一つ何かを遺して往きたい。それで何もかならずしも後世の人が私を褒めたってくれいというのではない。私の名誉を遺したいというのではない、ただ私がドレほどこの地球を愛し、ドレだけこの世界を愛し、ドレだけ私の同胞を思ったかという記念物をこの世に置いて往きたいのである、すなわち英語でいうMementoを残したいのである、こういう考えは美しい考えであります」(p.17)

では、何を遺すのか?

「後世へわれわれの遺すもののなかにまず第一に大切なものがある。何であるかというと金です」(p. 20)

これにはびっくりした。ちなみに、金の使い道が大事だ、と内村先生はおっしゃっている(念のため)。

「それで私が金よりもよい遺物は何であるかと考えてみますと事業です。事業とは、すなわち金を使うことです」(p. 30)

事業が起こせなかったらどうするのか?

「それでもし私に金を溜めることができず、また社会は私の事業をすることを許さなければ、私はまだ一つ遺すものを持っています。何であるかというと、私の思想です。(中略)すなわちこれを短くいいますれば、著述をするということと学生を教ゆるということであります」(p. 38)

では、金も、事業も、著述もできない人はどうなるのか?

「それでドウゾ後世の人がわれわれについてこの人らは力もなかった、富をもなかった、学問もなかった人であったけれども、己れの一生涯をめいめい持っておった主義のために送ってくれたといわれたいではありませんか。これは誰にも遺すことのできる生涯ではないかと思います」(p. 72)

この箇所を読んでホッとした。

その人らしい「こだわりの人生」を送ることが、後世への最大遺物ということだろう。






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