毎日新聞の発信箱というコラムの、元村有希子という人の文章が好きで良く読むのですが、今日の記事は安楽死事件についてのものでした。この人の論は、ありがちなぼんやりさ曖昧さがなく、直截で、スパッとリアルに剔ってくれる事が多いので好きなのですが、さすがにこの話題は踏み込み難いと見え切っ先が鈍り、この問題は難しいという平凡な結論でした、残念。とまれ、他の新聞の論評を読むに、何だか先日私がここに書いたようなものが多く、ああ、私の考えも平凡なのかと、些かショックなので、また書いています。事態にも変化があったようです、朝日新聞には遺族が先に出した「医師からは説明を受けていない」との見解を否定し、呼吸器取り外しの話を医師から聞き、それに同意したという趣旨の文章を自宅前に張り出したそうです。さて、これで少なくとも家族の同意はあったということになるのでしょう。で次は、本人の意思はどうであったかという調査に法的には進むのでしょうが、元村氏も言うように、脳死法のように早く法政化することが勘所と思います。法律が必ずしも正しいのではないという大前提に則り、しかし規範は必要なのです。医者と患者との関係は信頼の濃淡だけという極めて不安定なものですが、これは多くの新聞が論評する如きチーム医療とやら監視体制の強化とやらの上っ面なぞりでは何の解決にもならないのです。リアルじゃないのです。倫理観やら使命感やらは十人十色ですから、すぐに信念などという精神論に姿を変えて、他人の介入を許さぬ鎧を着てしまいます。ですから、こういうことを振り回してもだめです。そして、凡百の論者が言う如き「難しい」では何も生まれません。ううむ、悲しいかな、多くの人間の足並みを揃えるためにはやはり規則が、マニュアルが必要となるのです。この手の強制強要は必要悪(私が最も忌み嫌うことですので、ここでは悪です、あしからず)と受容せねばなりません。それが社会の維持ということなのでしょう。さてこの事件、どうなりましょうか、なにせ対象は七人だそうですからね。中に一人くらいは「説明は受けていない」と言い張る者もおりましょうからねぇ。
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