2011年2月24日に日本料理の
「つきぢ田村」で開催したディナーのもうひとつの主役である
“ワイン” を紹介します。 (お料理については
コチラ をご覧下さい)
造り手は独モーゼルの
Egon Muller 4世 (1959年生まれ)
1980年代に日本の山梨のワイナリーで研修した経験があるエゴン氏は見事な日本語を話されます。
この日のためにドイツ語の通訳を用意しましたが、ほとんどの会話は日本語でOKなほど堪能でした。おかげで、ディナーに参加された皆さんも直接いろいろな会話ができたようです。
エゴン・ミュラー醸造所は、モーゼル川上流(オーバーモーゼル)の支流になる
ザール川の地域にあります。
ミュラー一族の歴史は1797年まで遡ることができます。
競売に出されていたScharzhofberg(シャルツホーフベルグ)の土地をコッホ家が入手しますが、この時に婿に迎えられたのがエゴン・ミュラー1世でした。
シャルツホーフベルグとは「新しく耕された山」の意味です。
ザール川周辺のブドウ畑は11世紀にベネディクト派の修道院によって開墾されましたので、非常に長い歴史を持つ生産地なのです。
シャルツホーフベルグの畑はザールのWiltingen(ヴィルティンゲン)村にあります。
ラベル上に畑名を記載する場合、通常は村名から記載しなければいけないのですが、シャルツホーフベルガーは村名の記載をしなくていい
Ortsteillage(オルツタイラーゲ)です。
オルツタイラーゲはドイツ内にいくつかある特別な畑で、モーゼルではシャルツホーフベルグ一つだけ(他にはラインガウに4つあるのみ)。
この特別な畑は
南南東向きの斜面にあり、最大傾斜は60度にもなります。
全部で約27haの広さがある畑ですが、うち7haをエゴン・ミュラーが所有しています。
シャルツホーフベルグの畑から生まれるワインは、ドイツファンなら、いえ、リースリングファンなら必ず押さえておきたいもののひとつ では?
今回はそのシャルツホーフベルグのワインと、エゴン氏が他の国で造るワインを、「つきぢ田村」の日本料理に合わせて楽しみました。
Scharzhof Riesling Q.b.A. 2009
1本目は、エゴン・ミュラーのベーシックワイン「シャルツホーフ・リースリング」。
2009年は2007や2008より量が少なかったものの、品質に恵まれました。
アルコールは10%とライトで、若々しいフレッシュな酸と軽快なミネラル感、やさしい果実味が心地良いワインです。これを前菜の盛り合わせとともに楽しみました。
ほんのり甘さがあり、アペリティフや軽い前菜にピッタリなテイスト。
ちなみに、
カビネットクラス以上でないと「シャルツホーフベルガー」と呼ばれません。
よって、Q.b.A.のこのワインは「シャルツホフ」(新耕地)となっています。
Kanta Riesling 2008
エゴン・ミュラーが豪州のアデレードヒルズで造るリースリング。
Show & Smith ワイナリーの Balhannah畑のブドウを使い、土着酵母で発酵させています。
Kanta(カンタ)は
サンスクリット語で、「好ましい」「最愛の」「美しい」という意味。
口にしてみると、非常に骨格のしっかりしたボディで、ミネラル感も硬質。
アルコール13.6%とさすがに高いですが、酸がシャープでしかも厚みがあり、メリハリがある辛口です。シュールリーを6カ月行っているため、じんわりした旨味も感じます。
これは刺身との相性が最高!
前菜の「からすみ大根」にもよく合い、
かなり幅広いマリアージュが可能な“使えるワイン”だと思いました。
同じ品種で同じ人が造っているのに、土地が違うとこんなに個性が違ってくるなんて面白いですね
Scharzhofberger Riesling Kabinett 2007
次はいよいよ「シャルツホーフベルガー」が登場します。
これもアルコール度数は10%。
1本めよりもミネラルが強く現れ、味わいの輪郭もクッキリ。
果実味はエレガントで、ほっとするやさしさがあり、これはスルスル飲めてしまいます。
飲んで、食べて、また飲んで・・・と、そんな感じで皆さん召し上がっていらっしゃいました(超贅沢ですが)(笑)個人的には、風呂吹き大根の上の白味噌とのマリアージュが気に入りました
Château Belá Riesling 2008
これは珍しい
スロバキアのリースリング
もちろん、エゴン・ミュラーが造っています。
というのも、この
シャトー・ベラをエゴン氏の奥様の実家が所有しているからです。
奥様はポーランドの旧貴族ウルマン男爵家の出身で、実家がスロバキア(以前はチェコスロバキアでした)に所有していたシャトー・ベラは第二次大戦で没収されましたが、現在はウルマン家に返還されています。
スロバキアのワイン、というと想像が付きにくいのですが、シャトーのあるベラ村は
ドナウ川を挟んだハンガリーとの国境に近いところにあるとのこと。
スロバキアの
ベラ村は、気候も地形もワイン造りに適した土地のようですし、ハンガリーはワインづくりでは有名ですので、ハンガリーに近い場所と聞けば納得ですよね。
初リリースは2001年。
辛口タイプですが、豪州のカンタとはまた違った個性を感じました。
アルコールは13%、骨格がしっかりとし、ミネラル感もありますが、
タッチがエレガントで、ノーブルな印象を強く感じます。いかにもヨーロッパ的な、ちょっと繊細さもある白ワインです。
ブリの照焼きにも合いましたし、風呂吹き大根にも面白かったです。
(実は風呂吹き大根の調理にこのシャトー・ベラを使っていただきました)
Scharzhofberger Riesling Auslese Goldkapsel 2004
シャルツホーフベルガーの真骨頂(つまりはモーゼルの真骨頂!)ともいえるのが、このアウスレーゼ、しかも
ゴルトカプセル です
ドイツワインはエクスレ度のレベルで格付けされますが、アウスレーゼは果実味の甘みと酸味のバランスが非常によいため、ディープなファンが多いクラスですよね。
「ゴルトカプセル」(金キャップ) の選定基準は生産者によって違いますが、
アウスレーゼの中で非常に優れたワインに金色のキャップシールが付けられます。
つまり、
ゴルトカプセルが付いているということは、生産者の大自信作!
特に名高いシャルツホーフベルガーのアウスレーゼのゴルトカプセルになると、オークションでかなりの高額が付くといわれています(日本円で100万円を超えたワインもあったとか?!)
普通に手に入れようとしても入手困難な、しかも超高価なワインですが、今回は
エゴン氏の蔵からこの会のために直接出していただきました
なんという贅沢!こんなこと、もう二度とないでしょう
味わいは・・・
甘露
甘いですが、心が打ち震えるほどのピュアでデリケートな甘さで、ミネラル感、こっくりした複雑味、そのひと雫が本当に愛しく思えるほど。
誰もが笑顔になっていました。
私は、デザートの大納言小豆とのマリアージュにノックダウンです(笑)
(2004年のアルコール度数は7.5%)
エゴンさん、素晴らしいワインをごちそうさまでした!